毎年春が来ると「あぁ、あそこに走りにいかなきゃ…」と焦燥感に駆られる場所がふたつある。そのひとつが福島県三春町だ。三春町そのものも味わい深いが、宮城県南から伊達市などを経由して三春に至る県道だらけの道のりがすばらしい。今時分は田植え直前の田園の水面と青葉の芽吹き著しい山の色が眼福だ。頭は寝不足気味だったが、春の緑を目に焼き付けるために出発だ。
自分としては早めの時間、朝7時半に出発したにもかかわらず、ゴールデンウィーク中の平日の朝の仙台市内は大渋滞だった。最初の分岐ポイント村田町まで予想以上に時間がかかってしまいトホホ。しかし村田町から先のコースを脳内検討する時間はたっぷり取れた。
仙台市太白区・坪沼
この時間のこの方向の景色が
筆者の大好物
とにかくR4を南下する距離は短ければ短いほど良い。だから村田町から大河原へすぐ抜ける案はなし。希代の良道コスモスラインも先日走ったばかりなのであまり食指が動かず。逆にK12で白石に抜けるコースが最近ご無沙汰である(帰り道では走ったけど)。村田町から白石市に抜けるK12は、筆者にとって南下時の超正統派コースである。逆に正統派コースだからこそ盲点になりえる。ということで、村田町からK12で蔵王町へ入り、ファミリーマート蔵王宮店の交差点からR4に乗る。ゴールデンウィーク中の平日のR4は微妙な混み方(笑)。のんびりと伊達市国見町へ南下する。途中左折して東北新幹線・白石蔵王駅をくぐった山中のコースでR349に抜け、阿武隈川を堪能するコースだとか、越河一歩手前で左折して山中のコースで(以下同文)とか、越河で左折して山中のコースで(以下同文)とか、脇道に逸れる誘惑に何度も駆られたが、道中長い。前半であまり飛ばす必要もなかろうと自重。大人しく福島県国見町までR4を南下する。宮城県の最南端、越河付近の景色が大好きなので、この区間だけはR4も悪くない。
村田町内。
画面奥の雪をかぶった山は蔵王。
この時期は超混雑する
ようやく梁川へ。大贔屓の「菓子舗藤川屋(福島県伊達市梁川町田町21)」へ寄ろうと思ったらお休み。残念。仕方ない。ここから先は毎度おなじみというやつだ。K122、K45を経由してR349へ。K45とR349の交差点にあった休店中のトンカツ屋さん、とうとう看板を外されていた。復活の暁には絶対食べようと秘かに機会を窺っていたのだが、残念至極である。
梁川・阿武隈急行本社脇
気になる看板1。
霊山町内にて。
昭和も40年代くらいまでは
時計も眼鏡も宝石もレコードも
全部高級品だったんだよな
伊達市小国町・小国小学校の脇を走るK51に乗ると、まさに今回のツーリングで見たかった景色が展開する。進行方向視界180度が緑・緑・緑である。気温は24度前後まで上がり、左右ドアの窓は全開。しかも前後にクルマはいない。敢えてぶっ飛ばさない。低い速度域で丁寧に走る。春のツーリングの醍醐味である。
K51からK40に乗り換える。少し交通量が増えるが、頭を抑えられるようなペースではなく快適。このK40に乗ってからいつも思い出すのだが、三春町、遠い。記憶よりも遠い。道中あちこちに記憶にあるポイントが現れるのだが、「あれ??まだここ?」である。でもやはり景色は緑一色で気持ち良い。まぁいいか、という気になってくる。K62を西進する区間を経てさらにK40に戻って南下。前回の反省を忘れK118へ進んでしまう。結局は三春町に到達するのだが、こちらはやや遠回りなのだ。国交省の青看板に騙されてはいけない。そんなこんなで三春町へは11:30頃に無事到着。
気になる看板2。
芸能あっせん、ショー企画は当然。
舞台音響のあたりはちょっとあやしい。
最後のニシキゴイ販売で大混乱
ゴールデンウィークと言えば
大田植え大会だと思っていたが、
昨今もう少し遅いのかな?
三春町役場脇の駐車場へプン太郎を停めて休憩。ここはトイレもあるしいつでも空いてていいなぁ…。ん??
役場すぐ後ろの
歴史民俗資料館で開催されている特別展ののぼりがあちこちに立っていて、それによると今年は伊達政宗正室愛姫(めごひめ)の生誕450周年だという。筆者の想像が正しければ、この痛車はそんな機運に便乗した町役場の公用車であろう。実は昨2017年は仙台藩初代藩主伊達政宗の生誕450年であった。そんなわけで仙台市では大々的に観光キャンペーンを実施し、様々な歴史イベントが開催された。そんな記憶があって愛姫痛車に反応してしまったが、筆者の歴史観など「政宗と愛姫ってイッコしか違わなかったのか…」程度でしかない。むしろ目の前の三春小学校校庭で繰り広げられる、春の運動会に向けた練習の方が気になる。元気があってよろしい。
実はこの日の午前中、胃に鈍痛があった。なに深刻な話ではない。前夜家族で飲茶を楽しんだのだが、自重したつもりでもハッスルしてしまったらしい。朝飯もほとんど食べられないほどのもたれっぷり。そんなわけで三春町での昼食をあきらめ、帰路の検討を開始。今回必須経由地点として定めていたのは三春と岳温泉・土湯温泉である。つまり三春町からは北西方向に上がっていくことになる。本当は二本松駅前の「やなぎや(福島県二本松市本町2-76」で蕎麦でもたぐるか…と思わないわけではなかったが、
来た道を戻る区間が若干でも発生することはご法度である。旺文社のドライブマップでルートを探すと、本宮市内を経由するK28が目に入った。さらに西進すればR4をまたいで大玉村の中を爆走してK30に乗ることができる。K30と言えば
以前じゃるさんと岳温泉でソースカツ丼を食べた後に走った美麗県道である。あの時は南下だったが、北上すれば安達太良山が常に眼前に広がるはずだ。よっしゃ、K28とK30で岳温泉を目指そう。胃袋が復調すれば『成駒』でソースカツ丼が食えるかも!
と走り出した初踏破路線、三春町から本宮市街地までのK28がまた良かった。適当なワインディングが小さな集落の間を縫って延びている。往路のK40もそうだったが、まったく福島県とプン太郎はどこまで筆者を喜ばそうというのか。などと喜んでいたのも束の間、交通量の多い市街地に入っていく。R4をまたぐ直前に一瞬K118へ乗るのだが、ふと気がつくと
先日ETC動作確認のためにわざわざ高速道路で来た「柏屋食堂(福島県本宮市本宮仲町33)」を通り過ぎた。時計は12時を少し廻っていて、もうこの時間じゃ柏屋食堂は大混雑だろう。胃袋の鈍痛もあり華麗にスルー。
気になる看板3。
『悪いことは竹刀』。
ずこー
R4をまたぐとすぐにはK30に乗れず、県道をいくつか経由する必要がある。曲がるべき交差点を直進してしまったらしく、道に迷ってしまった。おかげで代かき中の水田や小さな祠をいくつか堪能できた。誰と約束があるわけでもなく、こういう意図しない道路を走るのもひとりツーリングの醍醐味だ。しかもK30へ軌道修正するために走ったK368が楽しい道で、けっこう本気のワインディングロード部分を抜けると、突然「安達太良カントリークラブ(福島県二本松市雄平台15)」なるゴルフ場を横切ったりする。見ればクラブハウス前には錚々たるE-Lセグメント車が所狭しと並ぶ。ゴルフ場の善し悪しはわからないが、初代NSXの「ゴルフバッグが積めるスポーツカー」というコンセプトにはやっぱり需要があるのだなぁと思ったりして。グリーンとグリーンの間を縫って走るK368のこの区間は美しい。
おやおや?
道に迷ったぞ?
稜線の向こう側に
安達太良山
かなりちゃんとした
ワインディング!
いきなりゴルフ場。
写真撮ってても
いつボールが飛んでくるんじゃないかと
ひやひや
K368は美しかったが、K30に合流した直後にR459、岳温泉の入り口に到達してしまった。楽しみにしていた安達太良山を堪能する区間をスルーしてしまった。無念。で、岳温泉。ゴールデンウィーク中の温泉街なんてクルマ混み混みなのでは…と秘かに怯んでいたのだが、思ったほどではなく、いや、それどころか「成駒(福島県二本松市岳温泉1-115)」は普通に定休日の看板を出しているではないか!おいおい、マジかよ!気持ちを切り替えてR459をさらに北上。ここまで来たら定点観測写真を撮るしかない。
今回初めてわかったが、画像左上に写っているのは「
あだたら高原スキー場(福島県二本松市永田字長坂国有林)」のいずれかの建物らしい。春や夏にああいうところに泊ってみたい。浮世の些事を忘れる時間が欲しい。
この定点観測地点から道の駅つちゆまではすぐだ。R115に合流して今度は土湯温泉方面へ下る。吾妻総合運動場を横切りK5フルーツラインへ。いくつか蕎麦屋を見つけたが、駐車場は満車。こりゃダメだ。開き直って昼食をとらないことにして、ひたすらK5を飯坂温泉へ向かって進む。今回一番混み合ったのがこの飯坂温泉付近。時期と場所を考えれば当然なのだが、それでもしかし、飯坂温泉は閉店する宿が増えたという。温泉街がシャッター街とは…。
さて飯坂温泉まで来ればここから先のコースはもはや選択の余地がない。すなわち桑折町とK46経由で宮城県七ケ宿町へ。K51とR457で遠刈田温泉まで戻る。先日の往路を逆行だ。
福島県国見町から
宮城県七ヶ宿町へぬける
K46
毎回似たような画像ばかりで
すみません
K51・不忘山
途中蔵王チーズ村に立ち寄ってお土産を購入。チェダーチーズの塊とクリームチーズ2種(「
トマト&バジル」と「ブラックペッパー」)。帰宅後長男に「チーズ買ってきたぜぇ!」と報告したら「(クリームチーズの)
ガーリック味は?オレはガーリックが好きなんだ。トマト&バジルぅ?トマトいらねー」などとディスられた。バカめ。トマト&バジル味は最高だ。
我が家の味覚嗜好はさておき、遠刈田温泉を経由してK47で川崎町へ抜ける。秋保温泉へ抜けるので当然釜房ダムの定点観測地点で撮影。あとは仙台市天文台を横目で見つつ帰宅。
ようやくプン太郎の
前シチサンの定番角度を見つけたかも!
このカタマリ感、いいわー
6時間/306km。
三春町役場以外では
ほぼ休憩なし!
こうやってテキストにまとめてみたら、温泉地を5つもスルーしているではないか。「岳温泉」「土湯温泉」「飯坂温泉」「遠刈田温泉」「秋保温泉」。他にも小さな宿屋が1軒だけ…レベルならもうふたつみっつスルーしている。まぁ日本列島を縦断する山脈付近を走っているのだから当然ではある。飯坂温泉を走り抜ける時に考えたのだが、「三大名湯」などと呼ばれるような超有名温泉街以外は、今後も集客・経営が厳しいだろうと想像する。思い切りリゾート化、あるいは逆に鄙びの極致に行くか。温泉経営コンサルなどできる筆者ではないが、何か貢献する方法があるのでは?と思う。残念ながら筆者は入浴すると眠くなる人なので、ツーリングの目的地として温泉街を設定することはあっても、実際に入浴はしない。という生き方をしてきたが、昼寝までをパッケージとして日帰り入浴ツーリングを試してみたい気持ちになっている。今年中に実現できるかどうかは微妙だが、近年の課題として設定しておこう。さすればあちこちの温泉街へのささやかな投資もできようと言うものだ。
三春へ行って温泉業界の行く末を考えるとは思わなかった。三春も腹の調子が良い時に再訪問したいのだが、毎度毎度300とか400km走っていては疲れてしまう。
←バカ この春は忙殺されて、日々我慢に我慢を重ねてようやく得られた休日に出かけるルーティンになっている。だからついつい長距離走って疲れてしまうのだ。もっと距離を刻む近距離ツーリングも楽しいはずだ。次はそれだな!