2016.06.26 Sunday
【試乗記】シトロエン C3(2005)・この快楽は知っている人だけが知っていればいい
2016年初夏、3度目の車検に旅立ったMiToの代車はシトロエン C3だった。と言うとある意味白々しい。(株)イデアルさんのフロントSさんに「なんかおもろいクルマにしてくださいよー」と泣きついたのだった。C3なら役者に不足はないぜ!
ちなみに家人はこの頃の尖ったダブルヘリカルロゴの方が好きそうです
シトロエン C3(個体の車検証による) 総走行距離約4万3千km
C3、乗るごとに、走る距離を重ねるごとに評価がうなぎ上りである。今回代車としてあてがわれたC3は、2016年現在「先代」にして「初代」ということになるが、筆者の経験上の比較対象は家人の愛車である同門シトロエン DS3(2010)と、やはり代車で経験したプジョー 206Styleということになり、偶然にもトランスミッションは全車同じく4速AT(AL4)、そのうち今回のC3と206は足周りの構造も同じと思われる。
これまで経験してきた206の主な試乗記はこちら
「代車・再び206がやってきた!」
しっかし、どんだけ楽しかったんだ、206…。
毎日運転して200km以上走った現在の感想で言うと、C3、とにかく軽い。正確には軽く感じる。ひらりひらりである。もっともこれは「体感的な車重」で、車検証上の重量はC3=1,355、DS3=1,455、206=1,315kgだからC3と206はほぼ同じで、DS3(1.6l/NA)のもっさり感はある意味当然だった…。ほぼ同じ重量のC3と206ではなぜC3の方に軽快感を覚えるかと言うと、上記リンク記事の206個体が13万kmも走った個体なのが大きく影響しているのだろう。要は足廻りのヘタり故の感想。もっとも足廻りの印象をこの個体で測られてはプジョーから公式抗議が来そうだ。まぁそれはともかく、今回の初代C3、体感上だろうが実測値だろうが、軽くて助かっている。
なぜならC3、はっきり言って加速がしょーもない。MiToを預けて(株)イデアルさんからC3で走り出した時、「こりゃパッソか??」と思ったほどだ※。エアコンなどONにしようものなら印象はさらに悪化。青信号スタートなど、車間距離が異常に開いてしまうし、交通量の多い大きな交差点での右折などかなりスリリングである。帰り道、さっそくAL4のスポーツモードを使ってしまったではないか!←結局この時の1回きりだが
ブレーキも褒められたフィールではない。プジョー・シトロエンの右ハンドルモデルの難点については色々言われるが、ブレーキのフィールもよく言われるダメポイントだ。マスターを左側に残したままペダルだけ右に移動させている(踏力伝達のためのバーを増やしている)らしく、当然フィールが曖昧にならざるを得ない。ある程度以上の踏み込み速度・踏み込む力があれば、ブレーキの素性自体は悪いものではないことがわかるのだが、それってつまり急ブレーキであって、そんな場面は滅多に無い(というかそういう場面がなるべく無いように運転するべきだ)。
電子制御と思われるパワーステアリングもやたら軽くて少々物足りない。「曲がらない」わけではないが、体感上のクルマの重さに対して、ステアリングの抵抗が軽すぎる印象である。
しかし。これらはあくまで走り出しから40km/hくらいまでの、ごく低速域での話。シトロエンの下から2番目の安グルマC3の本領はむしろ速度を上げたところにあるのである。具体的には60km/hから100km/hの間である。その盤石具合はまるで別人格。速度が上がれば上がるほどステアリングの反応もアクセルペダルの反応もダイレクトになっていき、「思った通りにクルマが動いてくれる快感」には驚かされる。大げさでもなんでもなく、レーンチェンジですら笑みがこぼれるくらい。
加えて車内の目に見える部分にデザイン上の工夫や遊びが目に楽しい。
ダッシュからドア内張まで続くドット状のシボ。 日光の当たり具合によって表情が変わる
C2でもお馴染だったくるりと一回転するエアベント。 まるでハニースプーンみたいでかわいい。 部品点数も節約できるスグレモノ
サイドウィンドウのデフロスター暖気の出口。 ネコの肉球か、はたまたボーリングの指穴か。 とにかくクスッとしてしまうキュートさ
単なるAL4のくせにシフトノブの握り心地はかなり良い
左右どちらのパワーウィンドウスイッチにもAUTOを示す "A"が刻印されているが、助手席側(左)は落ちる時だけオート。 上げる時は引き続けなければならない(笑)
というわけで、100点満点ではないものの、筆者は束の間のC3ライフを大満喫している。先日の代車はこのC3よりも遥かに距離数の少ない程度の良いスズキ スイフトだった。あれはあれで良かったが、最初の印象がどこまでいっても平面状に広がるだけで、C3の80km/h付近で見違えるほど増えるステアリング情報や、ダイレクト感などと比べると、面白みに欠ける。
「試乗記・スズキ スイフト、これが国産Bセグの標準評価軸…であってほしい」
そうなのだ。C3はオールラウンダーではなく狭い範囲だが得意技がちゃんとある「ギャップに惚れる」系。一度美点を知り、そこに惚れてしまえばアバタもエクボ。もはや筆者は青信号加速のもっさり感など気にならなくなってしまっているのだ。試みに中古車価格検索をしてみたら、1.4lモデルで4万km走った個体で25万円なんて値段で出ている。50万円でお釣り??こいつが??世間の無知なみなさん、C3の中古価格を低くしてくれてありがとう。この快楽は、知っている人だけが知っていれば良い、のだ。
中古車代車ならではのテキトーなアンテナ
前オーナーはこの個体をけっこう愛したんだろうなぁと思わせる ミラフィオーリ(イベントらしい)のステッカー
運転席側には堂々とトリコロールのシトロエンステッカー
運転中、めっちゃ邪魔です…、前オーナー…。
※老母の愛車トヨタ パッソは「高齢者や運転に不慣れな人の誤操作で事故を起こさないよう、敢えて加速を悪くする方向でチューニングされた」といい、自動車ジャーナリスト清水草一氏によれば「振り込め詐欺防止装置付き」という「走らない」クルマなのだ。
参考記事「先代パッソが、アクセル全開でも加速するまで5秒近くもかかったのは「老人や主婦のため」だった」
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