MiToでどこか遠くへ走りに行くのは実に楽しい。GoogleMapで経路を調べたりしているうちから楽しい。そしてついでに行った先での食事も吟味してしまう。筆者にとって「ツーリング」と「地場の旨い食事」は分かちがたい楽しみなのである。だがそこに執着すると足をすくわれることもある。「○○に行こう。となると食事はいつものあのお店だな」となりがち。目的地への経路は様々に工夫することはできるが、勇気を持って新規開拓をしなければ何度か訪れたことのある目的地なら食事メニューの選択肢は限られるし、おいしく、かつ筆者の好みに合う店が何軒もある場所など稀(まれ)である。
宮城、秋田、岩手の三県にまたがる栗駒山を迂回して、つまりK282を経由してR342で秋田県の東成瀬村を縦断、横手市へ抜けて稲庭うどんを食べる。
2014年10月、
2015年6月と2度もチャレンジしたが、2回ともK282がまさかの積雪による通行止めで見送ったプランを今度こそ成就させたい。しかし2015年6月の失敗時に代替案としてR398などで横手市入り、とりあえず稲庭うどんだけは食べることができた。いや、できてしまった。中途半端に目的を達成してしまったことが、今回枷になっている。仮に満願成就でK282〜R342を走り横手市に辿り着いたとして、ふたたび稲庭うどんを食べるのか?それとも6月の訪問時になぜか店が開かなかったとんかつかつ卉横手店に再チャレンジか?稲庭うどんはまだ6月の時の感動も新しいし、とんかつは先日仙台市内で逸品を食べたばかりである。どちらもどうもピンとこない。走る道路にはわくわくなのに到着してから盛り上がるものがないなんて!冒頭に書いた「
走る楽しみと食べる楽しみは不可分」ということに気付いてしまった瞬間である。
とある休日の前の晩。家人が「明日の休みはどこに行くの?」と聞いてきた(もう走りに行くこと前提)。そこで筆者は走りたい道はあるのに行った先で食べたいものがない、と愚痴った。すると家人はこう言った。「おにぎりでも握って行って、向こうで適当におかずを買えばいいじゃない」。「!!」その発想はなかった!なるほどそれはおもしろそうだ。まぁ現地で買えるおかずと言っても、今回のコースを鑑みればコンビニでコロッケくらいが関の山だが、それはそれで意味がある。行こう!秋田県東成瀬村(から横手市)!!
夏休みだが仕事だ部活だという家族を見送ってから自宅を8:40に出発。2ヶ月前に訪れたばかりの宮城県花山湖や湯浜街道は新鮮味が薄い。また天気予報を見て覚悟はしていたが、栗駒山に近づくにつれて天気はどんどん崩れてきた。湯浜峠では完全な雨だった。本当は晩夏の晴れ間を堪能する道行きを期待していたのだが、こればかりはどうしようもない。ともあれ無事にK282との分岐点へ到達。いよいよである。
前日の雨がウソのようにあがった朝
R457で北上中、ちょっと寄り道
栗原市花山湖
R398、湯浜街道。栗駒山が雨に煙る
とうとう来た!
行くぜ!K282!!
栗駒山周辺の天気はコロコロと変わり、それなりの雨がザッと降ったかと思うと時折晴れ間が見え隠れしたりする。総走行距離はけっこうな数字になるはずなので、あまりペースをあげずにヒラヒラと走る。
K282の途中で秋田県側を望む
栗駒山神社ってのがあった
最初の目的地須川湖に到着するとやたら風が強く、だがおかげで雨雲は宮城県側に流れているようだ。空気は湿っているが雨は降っていない。徐々に空が明るくなってくる。よしよし。K282をもう少しだけ岩手県の方に進むと
栗駒山荘のまさに一歩手前にR342との交差点がある。さぁ本日のメインイベント東成瀬村縦断の道行きである。
須川湖。
キャンプに来た親子連れやバス仕立ての団体旅行などでにぎやかだった
東成瀬村の村内を駆け抜けると、思ったとおりの光景が次々と現れては背後に流れていく。無理やり知っている景色になぞらえるなら、宮城県白石市からR113で七ケ宿町へ抜けていく時の景色に近い。冬季は過酷な環境であろうことは容易に想像できるが、夏の今は米どころらしい山間の田園風景と緑の濃い山々が実に美しい。また集落ごとの家々が軒並み立派で、そのことも印象的だ。幸い前にも後ろにもクルマの姿はなく、マイペースで気持ち良く走れる。
だからなのか、思ったよりも早くR397との分岐点に到達してしまった。右へ曲がれば岩手県、左へ曲がれば横手市である。気が付くと猛烈に腹が減っている。それもそのはず11時30分を回ろうかというタイミングである。そろそろコンビニの一軒も現れてくれるんじゃなかろうか。本当は村に一軒のお肉屋さんを見つけて、コロッケとメンチカツとどっちにするか死ぬほど迷う!みたいな展開を期待していたのだが、残念ながらそんな魅力的なお店はなく、筆者の目に飛び込んできたのはデイリーヤマザキ東成瀬店(秋田県雄勝郡東成瀬村田子内字大橋場13−1)だった。マイデイリーチキンというフライドチキンなのか鳥の唐揚げなのか微妙なチキンの油揚げとまんじゅうを一個ずつ購入。雲の流れが速く基本的には青空。外気温計は29℃などと言っているが、駐車場でMiToの窓を開けると涼しい風が通り過ぎる。MiToの車内で自分で握ったおにぎりとチキンを頬張り、おまんじゅうのデザートで仕上げ。うーん、大満足!なんだ、こんなことでこんなに楽しいのか!!
食べかけですみません
デイリーヤマザキの駐車場でのしばしの昼寝から目覚めると、13:00にならんとするところである。ひとまず予定通り横手市方面に抜けるとして、仙台への帰路はどうするか考える。R13を南下し、どうやって宮城県入りするか。大きく分けて4つの選択肢がある。
1.R398で栗駒山〜花山へ抜ける
2.R108で鬼首〜鳴子へ抜ける
3.R47で鳴子へ抜ける
4.R347で鍋越峠〜大崎市へ抜ける
いずれも最終的にはR457に乗って帰ることになる。番号順はすなわち現在位置から近い順であり、所要時間もおそらく番号順に短いだろう。要はR13(もちろん旧道の方)を南下する距離が長ければ長い程、帰宅時間が遅くなる寸法である。来た道を戻る1のプランはあり得ない。さらにあんまり早く帰宅してもつまらないし、R13を走りつつ東の空の山際(つまり宮城県、岩手県側)を見ると絵に描いたような雨雲が山脈を覆っている。R108もR47も県境では恐らく雨が降っているだろう。栗駒山の雨を思い出し、せめて雨雲がもう少し薄くなるところまで南下してみることにする。すなわち4のR347鍋越峠である。
昼食後、R342をR13めがけてひた走る
道の駅おがち駐車場から見る南の空。
明らかに雨降ってるでしょ、という感じの山際
道の駅おがちを出ると早速現れるR108への交差点もスルーだ。秋田から山形へR13で下るのはほんの数回だがこれまでにも経験がある。かつては人気の少ない山間の細い道をひたすら走るだけでタイクツだな〜と思ったものだが、オイルもタイヤもブレーキパッドも新調したばかりのMiToで走ると実に味わい深い。適当なアップダウンもあるし古いトンネルが時々現れるのも趣深い。時々西の空を見ると夏の終わりの青空が広がり、雲の形はすでに秋のそれである。基本的には窓を開けて走っているのだが、時々雨がさーっと降るのでエアコンも併用しつつ。
相変わらず東の空は山に覆われているが…
道中はこんなに良い天気だったりする
R347への交差点は山形県尾花沢市にあるので、秋田県の横手、湯沢からだとまず目指すのは山形県新庄市ということになる。新庄と言えば真っ赤なポルシェ 911とビアンコなアルファロメオ 156SWを駆るmarutaさんのお膝元である。そしてボリューミーなカツカレーで有名な
エンジェルズが思い出深い。もっとも満腹だからエンジェルズには寄れないし、思いっきり平日だからmarutaさんも仕事中に決まっている。新庄市の市街地を走り抜け、念のためこの先の経路をGoogleMapで確認しようかなと道の駅尾花沢に立ち寄った。駐車場でクルッとターンしていたら道の駅の入り口から見覚えあるビアンコの156SWが入ってくるではないか!!な、なんとmarutaさんである。新庄市街地で筆者とすれ違い追っかけて来てくださったのである。
先日の山形呑みOFF以来である。
奇跡の再会!!
「お!赤MiTo!まさかと思ったけど顔をみたらacatsuki-studioさんだったから追っかけてきました」。いや、まったく気が付かなかった…。「ストーカーみたいって思ったけど(笑)」とmarutaさんは笑うが、仮にもしこのブログエントリーのコメント欄に「実は新庄市内ですれ違いましたよ〜」みたいなコメントを下さったとしたら、やっぱり「えー!なんでクラクション鳴らすとか追っかけてくんなかったの〜??」と思うだろう。新庄から尾花沢と一口で言ってもけっこうな距離である。追いかけてくださってホントに嬉しい。156SWは最近911よりも金がかかるようになってきただのなんだの、駐車場でしばしヘンタイトークを繰り広げる。15時過ぎの道の駅の駐車場で立ち話ができるくらいに涼しくなってしまった…とふたりでしみじみ。秋ですねぇ。
帰宅途中だったmarutaさんと別れ、ようやく尾花沢市内でR347へ乗る。銀山温泉をかすめつつ一路鍋越峠へ。
一路銀山温泉へ!じゃなくて鍋越峠へ!!
R347は工事ばかりでちっともペースが上がらない。この工事は当分続きそうなのでR347鍋越峠を超える方はお気をつけいただきたい。
こんな狭い箇所に信号なんか設置するもんだから、
4トン程度のトラックが対向してくるとすれ違うのも一苦労
すすき!!秋じゃん!!
宮城県に入り加美郡加美町でK156に乗り換え。西の空を臨む
無事に自宅まで戻ってみればちょうど17時。雨の峠道を走ったせいでドロドロになったMiToをざっと水洗い。東成瀬村、おにぎりランチ、marutaさんとの不意のランデブー、実に濃い1日になった。そしてあんなに暑かった2015年の夏も、いつの間にか秋に変わっていたのだった。11月くらいまでがツーリングシーズンだとすれば、今年のシーズンはあと3ヶ月と少し。もっともっと走りに行かねば!行かねばの娘!しつこいですか?そうですか。
8時間20分/319km