2014年11月5日より日本で販売され始めたプジョー 308(以下New308と記す)に試乗した。プジョー仙台にて…なのだが、まずは同じ敷地内のクライスラー・ジープ仙台K店長にご挨拶。New308に試乗したい旨伝えると、同乗してくださった。これが今回の試乗を一層楽しいものにしてくれた。アルファロメオ MiTo1.4TSport乗りが運転してみた結論から言うと、「MiToが不動車になった場合に乗り換えるべきなのは、同門のジュリエッタではなく、このNew308なのではないかっ…??」とまで思わせる素晴しい出来だった。走りの楽しみと快適性のバランスが、自分に丁度良いと感じられた。
今回の試乗車はハッチバックでサイズは全長4,253mm、全幅1,804mm、全高1,457mm。グレードはシエロなので17インチホイールに225/45 R17のタイヤを履く。試乗車のタイヤはGoodyear EfficientGr/pを履いていて、例に漏れず低転がり抵抗のエコタイヤの類いと思われる。
もちろんこれまでイデアルさんを訪れるたびにNew308は横目で見てきたのだが、しげしげと見るのは初めてだ。見れば見るほどドイツ系同車格帯の者どもに似ているように思う。また307〜先代308からの進化がこれぇ?と思わないでもない。が、K店長曰く「そもそも106や306は別に吊り目ではないし、どちらかと言えばカチッとスクエアなイメージではあった。206、207や307あたりと比較すると激変かもしれないが、106や306からの進化と思えば、これはこれでアリじゃないか(要約)」。なるほど。素人考えではあるが、206以降の吊り目デザインを踏襲した先代308までは販売も苦戦したように思う。筆者はこのNew308のデザインは好きだ。どちらかと言うとSWの方がより好きである。いずれにしてもどこかでデザインのテコ入れは必要だったはずだ。買うとなったらGOLFやメルセデスベンツ A-Classなんかと競合するわけだから(まさかジュリエッタと天秤にかけるヤツはいないだろうな)、その辺のモデルとの近似性に後ろめたい気持ちを抱く人もいるかもしれない。なんと言っても輸入車に乗る以上、外観を気にしない人は皆無だろうから。
パークアシスト機能に頼らず、ドアミラーだけで車庫入れしてみた。
この流麗なのにスクエア感を両立させたボディ形状は
バック時も車体位置を把握しやすいというメリットを持つ
だがしかし!1度でも本気で運転したら「ゴルフもどき」とか「あれ?A-Class…じゃないか(笑)」的な悪口は耳に届かなくなる可能性が高い。それくらい走りの質感が良かったのである。
i-CockipitってINTUITIVE COCKPITの略だったのか!
残念ながらフランスらしい色遊びの類いは無い
DENONのオーディオシステムはサブウーファーまで付いている!
乗りこんでみて感じるのは3点。1.イス、いいなぁ〜(惚れ惚れ)。2.i-Cockpit、慣れないなぁ。3.室内の質感、上がったなぁ。である。イスのホールドが気持ち良いのはプジョーの伝統であろう。絶妙に腰を支えてくれる。それでいてNew308はシートバックが肉厚な感じで、車格以上に良いモノ感がある。最上級グレードのシエロでも電動シートではないが、筆者としてはこれは別にマイナスポイントではない。208から取り入れられたi-Cockpitなるメーター周りの設えは3分で慣れるが、New308はタコメーターが逆回転、反時計回り仕様。こればかりは2〜30分の試乗では慣れなかった。もっとも「アストンマーティンを乗りこなすために!その1」と思えば苦にならないと思う(笑)。そもそもメーター類の質感は高いし、ハンドル内部に見るかハンドルより上に見るかはさて置いて、視認性も上々。針のデザインまでオサレである。室内の質感はもはや508に近づいたと言える。508が上級車として「本当に大丈夫か?これで」な意見があることは承知しているが、アラウンド300万円のフランス車としては大合格である。国産車と比べれてもそもそもロジック(と言うか哲学)が違うのだから、プジョー車の内装が国産車テイストを目指す必要は無いと考える(ただしクオリティは競争した方が良い。その点でも及第点ではある)。
以前
208GTiの試乗記に書いた気がするが、New308でもオーディオ、エアコン類のコントロールは全てセンターコンソールの液晶ディスプレイタッチパッドに集約されている。これがディーラーの営業さんですら説明に苦労するほど全部まとめてしまったもので(笑)、残念ながら直感的操作は難しそうだ。ただし今回の試乗ではこの辺はノータッチ。運転が楽しくて楽しくて。タッチパッドの反応そのものは大変良かったのだが、i-Cockpitの一部を成すらしいこのタッチパッド、操作ロジックがおフランス独特のものらしい(笑)。
このブログでは何度も繰り返し書いているが、輸入車に乗ると言う事は、運転時、常に「異文化に触れる」ことと同義なのである。「国産車と比べて○○が…」みたいな観点は持つべきではない。もちろんそこまで言い訳が必要なチープさではもちろん無い、New308は。
さて静的環境の観察はこれくらいにして、走り出してみよう。すると乗り込んだ瞬間の3点セット感想中の2.と3.は胡散霧消してしまう。6ATが良い仕事をしている印象が強い。これは508の時にも感じた美点だ。ゼロスタートの場合ペダルレスポンスとトルクの立ち上がりに半拍ほどのズレを感じないわけではないが、1,320kg(諸元表による)の車体を3気筒1.2リットル+ターボで走らせているとは思えないするするっぷりである。と言うか峠マシンだったりシグナルグランプリで王者を狙うとか、そもそもそういうクルマじゃないはずなのだ、New308は。そういう楽しみを知っているけど、日常生活ではジェントルに振る舞う所作を知っている人が乗るべきだ。当然のごとく付いているアイドリングストップ&スタートもさりげなく、ほとんど意識させないものになっている。
仙台市若林区卸町の非常に荒れた路面も涼しい顔でそのまま走破してしまう。17インチタイヤでこれなら16インチはもっと良いんじゃ…。エコタイヤじゃなければ17インチでも極楽なんじゃ…。法定速度域プラスアルファの速度でレーンチェンジを意図的に忙しく行ってみたが、四隅のタイヤが路面をがっちり掴んでいる感がハンパ無い。これは素敵だ。
だがもっと素敵になるのだった。ドライバースポーツパックなる運転環境切替え機能。アルファロメオで言うところのd.n.a.システムなのだが、こいつが笑ってしまうくらい演出過多なのである(ま、d.n.a.もそうなのだが)。アクセルのレスポンスはクイックに、ステアリングの反応はよりダイレクトに、なによりメータークラスターが突如真っ赤になるのだ!!おまけにエンジン音をオーディオシステムにプラスしてくれる(笑)。スピーカーからエンジン音が出るのである!実際のところスピーカーからの付け足しは別にいらないが、この状態こそデフォルトにして欲しい。ちなみにこのスポーツパック、エンジンを落とすとリセットされるらしい(乗るたびにONにする操作が必要になる)。やっぱり環境性能をある程度犠牲にはしているのだろう。わはは。自動車メーカーも大変だ。環境性能と言えば、燃費も実燃費で15km/lくらい行くらしい(多分それはドライバースポーツパックOFFの状態でだろうけど)。リッターあたり7km前後だった307SWとはまさに隔世の感がある。実際隔世しまくっているが(笑)。
わっ!クルマが怒った!的なスポーツパックON時のメーター周り
ディスプレイの表示もこんなわざとらしいものに…(笑)!
冒頭の繰り返しになるが、New308はMiToが不動車になった場合の乗り換え候補の最右翼になってしまった(我が家の駐車スペースには全幅1,804mmはきついが)。ともあれ、世間的にはゴルフやジュリエッタとの良い競合相手としてもっと注目されて欲しい。ここまでこのクラスのクルマが洗練されて来ると、もはや自動車の性能による差別化ではなく、如何に企業哲学を感じることができるか?の勝負である。その意味でもNew308はゴルフ7と良い勝負ができている。両方試乗した今、筆者はNew308に軍配を上げる。と言う事で、ジュリエッタのQV/TCT版、早く試乗してみたいものだ(笑)。←アルファロメオ仙台店には試乗車が無いのである!!
シエロにはキセノンランプフルLEDヘッドライトが標準
そのキセノンランプフルLEDライト、実は小さい灯体の集合らしく、
こうやってみるとちょっと気持ち悪い(笑)。
照射しているのはK店長の脚(笑)