祝・国道6号線全線開通!!東京電力の原発事故の影響で部分閉鎖されていたR6が全線開通した。高校時代からの親友あにまるとトシユキとのツーリング活動であるEDO(欄外用語説明参照)は、これまで様々に福島県への云われ無き風評被害に反対する態度を示してきたが、ロッコク全線開通の報を聞いた以上何もしないではいられない。現地に行くことなく測定点の放射線数値だけを俎上に上げて「まだ危険だ/もう安全だ」という不毛な議論はもうたくさんだ。震災・津波被災地に市井の人間に何ができるか。現地が今どうなっているのか知ることがまず必要だと思うのだ。そしてその先のいわき市で何か旨いものを喰いたい!ということで、記念すべきEDO MT Session#10は「Iwaki & Route6」と題して、いわき市に乗り込んだ。
我々としては珍しくプランを練りに練った結果、往路は宮城県と福島県のローカルな国道・県道を駆使して南下し、復路としてR6北上とした。しかし我々3人の中にいわき市に詳しい人間がまったくいない。悩んだ我々はいわき在住のアルファロメオ ジュリエッタ乗り
てるてるコヤジさんにおすがりした。いわき市内の旨い店をどこか教えてください、と。コヤジさんからは速攻であるお店についての返信をいただき、「オレも混ざっていい?」ときた。もちろん大歓迎である。EDO初のゲストがこうして決まった。
朝5:45に自宅を出発。
ローソン仙台坪沼店で待ち合わせと朝食。6:30に出発。最初に先陣をとった筆者が勘違いしてしまい、大河原からR4に乗ってしまう。当初想定のコースを行くよりは時間短縮できたと思うが、大河原〜白石へのR4は相変わらず面白みは無い(笑)。しかしJR白石駅をくぐって南下するK12は素晴らしかった。最終的に丸森でR349へぶつかるのだが、朝日を浴びて晩秋の木々が輝く様を見ると、何度もクルマを停めて写真を撮りたくなってしまうがチーム走行なのでそういうわけにもいかない。「心の目に焼き付けて!」と内心叫びつつ、阿武隈川と並走するR349のワインディングロードを無事走り抜ける。福島県伊達市梁川のコンビニで飲食物を補給しつつ、さらにR349を南下し三春へ。
ここ最近BSで放送中のNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」を見ているというトシユキが、政宗の正室愛姫(めごひめ)の生家である
三春城に立ち寄りたいというので、三春町の三春城跡へ。城自体は明治維新で廃城とされたが、江戸時代の大名の生活を偲べる趣深い場所である。三春城は典型的な山城だったらしく、本丸跡からは城下を360度見渡せる。「まさに国見よのぉ」と殿様気分を味わった。
整備されているが、けっこうな段数の石段をあがる
本丸跡〜奥の院跡付近から
同じく
ここからいわき市北端のR49との合流点までさらに南下する。この福島県内のR349も美麗カントリーロード。心配した天気も何とか持っており、晴れ時々曇りくらいで収まっている。驚いたことにこのあたりのR349周辺の景色は山形県内のそれと似ている。山と山の間隔が狭く、「縫うように」という表現がぴったり。雄大な風景こそ福島ビューの醍醐味!と認識していた筆者の目からウロコがゴソッ。改めて福島県の奥深さを思い知った。
朝一で洗車したというコヤジさんの愛車「まさみちゃん」は
ピカピカ!我々の3台はヨレヨレ…
いわき市に入ってすぐの三和町上三坂にてコヤジさんと約束通り11:00に無事合流。今後の目的地やルートについて軽くブリーフィング。コヤジさんの後について小名浜マリンタワーへ一旦向かったものの途中変更、昼飯を考慮してまずは小名浜の少し北、
四倉漁港を目指す。コヤジさんお薦めの「メガ海鮮丼」を滞りなくかっ喰らうためだが、コヤジさん、わざわざワインディングを選んで走ってくださる。どうも事前に下見までしてくださっていたようだ。おかげで運転しながら「はははっ」と本当に声を上げて笑ってしまうようなファンキーな道のり。ぃやっほー!という感じで走っていたら、四倉へは「さっきまで山道を走っていたのに…」という感じですっと着いてしまった。海と山がこんなに近いのもいわきの魅力のひとつである。
和食・酒処「和(かず)」で無事にメガ海鮮丼1,500円にありつく。こいつが常識外れの逸品で、まさに小山の風情である。値段が同じだから…というさもしい理由で大盛りを頼んだことを後悔するレベルである。それだけじゃなくネタの種類も豊富。残念ながらご当地ものでは無いそうだが、そのネタも新鮮で調理も上手。宮城県の某観光地なら3,500円くらい取られるんじゃねえか?などと喋りつつ完食。この頃には初対面だったコヤジさんとあにまる、トシユキもすっかり打ち解けて、大盛り上がりである。
一瞬目を疑うレベル盛り
食えるかな…と途方に暮れる筆者だったが、
まんまと完食
文字通り満腹となった腹を抱えて小名浜の
三崎公園・マリンタワーへ走り出す。海沿いの道は津波の被害を免れなかったが、MiToでも走ることができるようにはなっていた。無事にマリンタワーへ到着し、4人で記念撮影。
上掲画像の撮影風景(笑)
有料のマリンタワーは華麗にスルーし(笑)、
いわき・ら・ら・ミュウへ。いわき市観光物産センターのこちらでおみやげを購入。移動の途中にちゃんとお土産屋さんまで折り込んでくださるコヤジさんのサービス精神にメンバー全員心打たれる。
お土産を購入したあとは、コヤジさんお薦めのカフェ
「珈琲と音楽のお店ソリスト」へ。そしてそのソリストへ向かうK14がこれまた素晴らしい。交通量の少ないワインディングとなれば、我々にお誂え向きの道路である。ここでもコヤジさんのジュリエッタの燃費が6km/Lを割る運転の一端を垣間見てしまった思いだ。マランゴーニミトスがスキール音を出すのを久しぶりに聞いてしまった(笑)。楽しい楽しい道行きである。途中やはりコヤジさんご贔屓の
「菓子処柴崎若宮店」に立ち寄り。かぼちゃまんじゅうを試食したら(本当は代金を支払おうとしたのだが、お店からご試食でけっこうですよと言われてしまった。もしかして、コヤジさんの威力??)滅法旨くて10個ほど買い込み、コヤジさんからは焼きドーナツをごちそうになってしまう。どんだけいい人なんだ、コヤジさん。ほどなく着いたソリストは木とコーヒーの香り漂う、品の良い雰囲気の喫茶店(喫茶店って少なくなりましたよね)。またこのお店も居心地が良いだけでなく、飲み物もケーキも美味しい上になんだかハンパ無く安い。「安い」という表現はあまり正確ではないかもしれない。こんな居心地の良いお店の、こんなに美味しい飲み物と食べ物が、なぜこの値段??と言うのが正しい。残念ながらオヤジ4名であまり品の良くない話をしていたので、お店では浮いていたかも…。すみません。でも紅茶もケーキも素晴らしく美味しかった。近所の人がうらやましい。
さてそろそろ帰ろうか。この時点でちょうど日没、16:50頃。それでもソリストの駐車場で夕陽の中もう一回記念撮影。コヤジさんから「この時間だといわき湯本ICからいわき中央ICまでの1区間だけでも高速道路を利用した方が絶対良い」という帰路のアドバイスをいただく。本来EDOは有料道路を使用しない掟なのだが、ここは拳々服膺するものなり。心優しきヘンタイ、コヤジさんに別れの挨拶。再会を誓う。夕暮れを背にしてK14をいわき市内へ向かい、アドバイスどおり常磐道に乗る。コヤジさんに見送られつついわき中央ICでR49に乗り、無事R6へ。メガ海鮮丼をやっつけた四倉漁港を通過し、いよいよR6攻略である。
大動脈国道の例に漏れず、いわき市内のR6は渋滞していた。道々の電光掲示板では「●●km先、歩行者・二輪車通行禁止」の表示が流れる。それでも広野町にある
ファミリーマート Jヴィレッジ前店まで来ると、通行量も減ってくる。このJヴィレッジ前店だけでなく、かつて通行規制がかかっていた境界線付近のコンビニは18:00過ぎと言うこともあり大賑わいであったが、店内のお客さんすべてが作業服を着ており、やはり特殊な環境なのだと思わずにいられなかった。
さらに北上する。車両はどんどん減る。閉鎖区間の境界はわからなかった。そういう意味ではR6全線開通は早くも日常になっているのではないか。もちろんとっぷり暮れて道は暗い。しかし暗いのは日没だけが理由ではない。人口の灯が無いのだ。道々の建物は事業所、個人宅を問わず入り口全てにゲートが仮設されている。路地もバリケードで封鎖されている。街灯は所々点いている。バリケードの向こう、山へ向かう道路にも街灯だけがぽつりぽつりと点いている。むしろそれが「ここは帰宅困難地域だ」と強調しているように思えた。時折小雨がぱらつく天気で星も月も無い。
途中福島第一原子力発電所も見えた。スクリーニング場が道路脇に何ヶ所も設けられていた。我々の前をバスが走っていたが、思ったとおり福島第一原発への道路を曲がっていった。何台も警察車両とすれ違った。それでも対向車両はそれなりにあって、自家用車もいるが多くは物流のトラックである。我々の前後を走るクルマもそれなりにいて、車列になっている。R6閉鎖中は周辺の国道・県道が大いに渋滞したとコヤジさんから聞いた。我々の往路を考えると(三春城などへ立ち寄ったことを差し引いても)仙台市内から4時間弱くらいかかっているわけで、時間的にも燃料的にも物流関係者にはロスだったろう。今R6が全線開通する意味をよく考える必要はあると思う。起こってしまったことへの怒りをぶつける対象を探しても、今は空しいだけだ。だが今後の放射能対策は速やかに、万全を期して、完全にやり遂げねばならない。「完全にコントロールされている」??では国道6号線を走ってみればいい。それが嘘だということが一目瞭然だ。双葉町や楢葉町、浪江町の様子を見て、これを何とかしようと思わない政治家は直ちに職を辞していただきたい。
などと憤っていると14.1km区間はあっという間に通り過ぎる。無事に南相馬の道の駅まで走り、一休み。メガ海鮮丼とケーキセットと試食のおまんじゅうで膨れた腹が、なぜか平穏を取り戻しているではないか。恐ろしい。R6を仙台まで近づくと、あまり目ぼしいお店は無いことは経験でわかっている。ここであにまるが南相馬在住の友人Sさんを思い出す。地元の旨いもの屋を教えてもらおうぜ、と言うことで電話をしたらSさんは丁度今職場から帰宅するところだと言う。5分くらいでSさんが登場。
「らーめん翔屋」を教えていただく。
翔屋では見事に塩、しょうゆ、味噌味と三人三様の発注。中々に旨かった。ラーメン屋のライスが麦飯なのは珍しいのではないか。ニンニクは下ろしたものが容器に入っているのではなく、ニンニク片を都度ニンニク潰し機で潰すのである。アトラクションとしてはなかなか楽しい(笑)。
ここまで来るとあとは睡魔との戦いなのだが、不思議と眠気は来なかった。身体はそれなりに疲れているものの、いろいろ濃厚だったのでアドレナリンがどばどば出ていたのかもしれない。岩沼市でR6からR4へ乗り換え。無事に帰着点仙台市若林区沖野のコンビニに到着。解散した。濃厚だったのにはふたつ理由がある。ひとつはコヤジさんのご案内でいわき市の一端、しかしクルマで走ると楽しい部分をたっぷり味わえたこと。同時にEDOの設立趣旨どおり、旨いものをたらふく食べられたこと。いわき市のディープな魅力の一端をぐわっと味わえたのはひとえにコヤジさんのおかげである。そしてもうひとつはR6周辺の現実である。福島を語る時、私たちは魅力と現実の両方を語らねばならない。どちらかだけでは現実と未来を見誤る。そのことを体感できたことは今回のツーリングの最重要成果である。我々はまた、福島に行くだろう。あにまる君、トシユキ君お疲れさまでした。コヤジさん、Sさん、本当にありがとうございました。また会う日まで。
17時間/484km。
EDO史上最長時間