先日のクルマで行きますOFF#6の解散間際、
Ryouさんが導入したABARTH 500のちょい乗り試乗が叶った。棚から牡丹餅的な展開にかなり興奮しつつ、グルッと(株)イデアルの周辺を一周させてもらった。試乗記などと言う大げさなものではないが、印象を書いてみようと思う。
ソロで写っている画像がなかった…!
ピュイ・ダ・ムールにて、一番右端がRyouさんの
ABARTH 500
その前にRyouさんの個体だが、先代のオーナーさんが相当手を入れたらしく、タワーバーや足周りはもちろん、強化アンダーカバーやエンジンダンパー(!)まで、かっちかちとご本人が表現するタイトな個体である。しかし実際に運転してみるとそれはあまり気にならないのが不思議だった。
さそり!さそり!
エンジン脇のオレンジのシリンダーが
エンジンダンパー
まずは静的環境の印象から。ABARTHとは言え元ネタの500から大きく乖離はしておらず、筆者にとって一番印象的だったのはきちんと5MTのシフトレバーが備わっていたことだ。その他にはステアリングハンドルが思った以上に径が太かった印象があるが、500ってみんなあれくらい太かったかな…。シートはベリー良かった。タイトでホールド感に溢れ、このシートだけでもうらやましい。ペダル類の配置も違和感は感じなかった。目を皿にしてオフセットなど確認したわけではないが、日常使いに問題が出るとは思えない。
OFF会の解散間際だったので慌てて出発してしまい、ドライビングポジションをきちんとアジャストすること無しに走りだしてしまった。痛恨。ペダルとの距離にシートが合うとハンドルが近い。ABARTH 500にはテレスコピック機能は付いていたのだろうか。だとしてもシートバックの倒し方など調整要素は多いと思う。
さて走り出すとどうか。申し訳ないが思ったように書く自信が無い。とにかくものすごい体験をした、というのが正直なところ。何と言うか、走るにしても曲がるにしても止まるにしても、いちいち挙動がダイレクト過ぎて笑ってしまう。いや、ほんとに。ぎゅわわ〜っと加速する。そりゃもう過剰に加速する。いや、「過剰」という表現は正確では無いな…。運転手が勝手に期待する「これくらい加速してくれたら最高なんだけどな〜」というラインを絶妙に突いてくる加速なのだ。なにせABARTHである。こっちの期待値もそれなりに(かつ無意識に)上がっているわけだ。それを裏切らない。「ぎゅわわ〜っと加速して欲しいけど、まさかねぇ、多分ちょっとはもっさり感が…無いよ!!なんじゃこりゃ!!」と言うのが正しいのかもしれない。
そんな加速に嬉しくなって無茶なステアリング操作をしてみても(すみません)、これまた平然と曲がってしまう。もちろん同乗したRyouさんとじゃるさんたちは助手席や後部座席でぐらんぐらんに振り回されているし(笑)、運転していた筆者も身体は揺さぶられる。基本的には小さいクルマだからそれは当然である。が、少なくとも運転手に関しては例のシートの好サポートもあって、あっと思った時には曲がり終わっている。もちろん曲がり終わっても余計な揺り戻しなどなく、ステアリングの切れは「鋭い」とか「反応が早い」と言う前に、実に正確無比である。
もうあれこれ書く必要も無いかと思うが、ブレーキの動作もお見事の一言で、加速同様「これくらい効いてくれると気持ち良いんだけど…」という期待をそのまま実現してくれる。運転したのは10分程度だと思うが、あまりの思ったとおり具合に始終笑いっぱなしの試乗だった。
これに近い挙動のクルマと言うと、直近ではプジョー 208GTiを思い出す。208や208GTiに関して筆者は「上等の白米とみそ汁」とか「日本酒で言う大吟醸」みたいな比喩を使ったが、ABARTH 500はまたちょっと違う。乗り込む前の印象と走り出しの感触は、「激辛サルサで食べるシェラスコの厚切り牛肉」のようだと感じたが、加速→減速→カーブ→加速という一連の挙動を体験すると、まるで健康に育った身がたっぷり詰まったフルーツのような印象で、どこを突いてもプチンとパワーが弾ける感じが始終実感できるのである。クルマそのものが身体の延長上にあるように思えると同時に、「思ったとおり」以上のポテンシャルがあることを身体中で感じることもできる。
唯一残念だったのはシフトノブの動き。奇数ギアが上段にセットされた5MTは、1→2へノブを下げる際、若干セカンドギアのゲートが助手席側にオフセットしており、シフトミスを誘発するのだ。末広がりの「H」の字みたいなゲートの切り方なのである。オーナーたるRyouさんもシフトミスはやるらしい。LHDだと案外しっくりくる切り方なのかもしれないが、こればかりはややストレスかもしれない。
とは言うものの。これだけダイレクトな挙動のクルマを運転するのは、ヘンタイにとっては笑いが止まらない。Ryouさんがおいくら万円で購入したのかは知らないが、このABARTH 500を運転する生活は一生の思い出になり得ると思う。つまり良い買い物をされましたね、と言うことである。Ryouさん、運転させてくださってありがとうございました。 乱暴な運転をしてすみませんでした。ABARTH 500と末長くお幸せに。