ジュリエッタの売れ行きがちょっとアレらしい。いや、売れてるんだろうけど思ったほどじゃないということか。
これは筆者の個人的な考えなのだが、ジュリエッタは優等生過ぎるんじゃなかろうか。販売戦略としては一にも二にもVW Golfの牙城を少しでも崩さなければならないのだから、全方位的に優秀なのは当然だし、ちょい乗り試乗をしてみた限りではそれがかなり高いレベルで実現されていることは体感している。
しかし売れる売れないの話となると、多面的に考える必要があるのだろう。筆者個人としてはアルファロメオのクルマが魅力的に映るのは、プロダクトが持つ二面性が大いに関係していると思うのだ。つまり「カッコいい!だけどサビに弱い」「とってもスポーティーでシビレル走り!だけど壊れやすい」「とってもレーシーなインテリア!だけどクオリティが低い」などなど、(実際にそうなのかどうかはともかく)言わば「光あるところに影がある」を地で行く工業製品の代表格だったと言える。
そんなイメージを抱いたまま接すると、ジュリエッタは「光」だけのクルマだと言える。これまでの「光あるところに影がある」アルファを愛してきたオーナーは、壊れるのは困る、お金がかかると嘆きながらも、そんな困ったクルマを乗りこなす自分が大好きなのだ、きっと。そしてアルファロメオかっこいいなぁ、と思っているオーナー予備軍もそんなマゾヒスティックな自動車ライフに少し憧れているんじゃないだろうか。筆者もそのひとりだった。しかし今やMiToの年間メンテナンス費用は3万円程度と胸を張り(これだってちゃんちゃらおかしいけどさ)、ジュリエッタはゴルフと真っ向勝負できるクオリティを手に入れた(と思う)。さらにブランドイメージを掛け合わせれば、これで売れないわけがない!
デイヴ・ウェックルというドラマーがいる。若い頃にチック・コリア・エレクトリックバンドで超絶多手数ドラミングでアマチュアフュージョンドラマーの度肝を抜いた男なのだが、年齢を重ねて、手数よりも間とダイナミクスで聴かせる味のあるドラムスタイルに変容してきた。まるで彼の大先輩であるピーター・アースキンのようなプレイに。そしたらみんな言うのだ。「そんならアースキンでいいじゃん」。
RUMBLE/Chick Corea Elektric Band
最初の2分だけでゲップが出る音数の多さ(笑)。
今見ても超絶かっこいい
こちらはPeter Erskine。もう少しゆるいテンポの曲の方が
彼のプレイに満ちるAirがわかりやすいかもしれないけど、
この演奏でも充分わかる
ジュリエッタの売り上げがアレなのもこの話に似ているように思う。つまり「ゴルフみたいに良いクルマでしょ?」とドヤ顔を決めたら、「そんならゴルフ買うからいいよ」と言われているように思えてならない。そうなのだ。そりゃそうなのだ。
でもゴルフとジュリエッタは違うクルマなのだ。そりゃもう激しく違う。ジュリエッタのTVCMでは如何にその走りが官能的かを訴えていたが、それをもっと具体的にアピールする工夫をした方が良いと思う。あとエロさ。
田中敦子万歳!
実際ジュリエッタに乗ってもエロさは感じなかった筆者だが、ここはひとつ「イタ車と言えばエロ!」という一般的な概念を逆手に取るくらいの英断が求められる。豪華なホテルの駐車場から愛人を乗せて出てきたら、奥さんが雇った興信所員が後を付けてくる(もちろんゴルフに乗っている)!しかしジュリエッタ、峠道に逃げ込んでまんまと捲いてやったぜ!みたいなCMが良いと思うんだけど、どうでしょうか。