2012.03.31 Saturday
試乗記・アルファロメオ ジュリエッタ その2
その1はこちら。 ジュリエッタ、一晩明けたらより印象が鮮明になってきた。長くなって恐縮だがもう少し書く。 ジュリエッタが対MiTo比スポーティーではないと感じられるもうひとつの理由があるのを書き忘れていた。それはシフトノブとステアリングの距離である。遠いのだ。これはコクピット全体のデザインの問題も含んでいる。繰り返しになるが、ジュリエッタの内外装の品質はMiToを遥かに凌駕しているし、159やBrera、GTなどともベクトルの違う丁寧さがある(あくまで着座しただけでは、だが)。だからこのシフトとステアリングとの距離は「ちゃんと考えられて誂えられた距離」だと思うのだ。クラッチの踏み込み量と併せて、これらの条件はジュリエッタの操縦印象に少なからぬ影響を与えている。 スポーティーかどうかということよりも、自分にとってMiToとジュリエッタでは明らかに違う要素がある。それは「買ったら生活が変わるんじゃないか」という期待、もしくはクルマが持つオーラである。プジョー 307SWから少しコンパクトでスポーティーなクルマに乗り換えたいと思っていた筆者は、発売を今か今かと待ち続けていたVW Sciroccoがあまりに高額過ぎてMiToに照準を当て直したクチだが、2度目の試乗時に「アルファロメオがある生活」が俄然リアルになったように思う。買ってしばらくは家の窓からMiToを眺めてニヤニヤしていた。意味も無くあちこち走りに行くようになった。音楽もかけずただひたすらひとりで走るのが大好きになった。 子どもがふたりいて乗ってるクルマは307SWという生活のクルマの部分を、3ドアのMiToを置き換えるのは多分に「生活を変える」という意味合いが強い。事実筆者のクルマとの付き合い方は前記の如く一変した。このことは本当に幸運だった。良いタイミングでMiToと出会えたと思っている。だからこそすでにMiToオーナーになってしまった筆者に、ジュリエッタは「おおぉ〜、こいつを運転しているオレを想像するだけでアドレナリンがっ!」的な意味を持たない。むしろ「うん、キミももう少しオトナになってもいいんじゃないかな?」と次なるステージへのステップアップを誘われているようにすら思う。その1に書いたように、すでにある程度蛇毒への耐性を持ってしまった筆者にはそれが薄めなのだ。見方を変えれば、(自らの考える)自動車ヒエラルキーの上の階層に上がりたいと思っている人には非常に有効な選択肢になると思う。例えば「わ〜い、新しいアルファだ〜!」と喜んでMiTo1.4T Sportを買ったものの「なんか、煮詰め不足じゃね?特に足周り」などと秘かに(あるいは公に)思っていた人にとってのジュリエッタは、「うん、良い買い物をしたな」と心底思える優良物件だろう。 自動車ライフの次のステップの最右翼としての外車、それもドイツ車群と同じ言語で語るべき品質をアルファが手に入れたということなのかもしれない。そこには「走りの一点豪華主義」と言った言い訳は必要無い。しかしマシンの調子に色々と気を配りつつ、ひとつひとつのコーナリングやちょっとした加減速がたまらなく楽しくて中毒になる!と言った趣味嗜好性は薄味になった。チーズで言えば156、147くらいまでのアルファはブルーチーズであり、ジュリエッタはカマンベールチーズくらいのクセなのだ。そのことの是非は論じても仕方ない。品質が上がることは大歓迎だ。ジュリエッタはイタフラ車フリークだけをターゲットにしているわけじゃない、というのが今のところの冷静な判断だろう。 アドレナリン噴出カーライフを送るのに最適なクルマが最新のアルファでは無いという事実に、少々戸惑っているだけなのだと思う。 |