定期購読雑誌AUTOCAR JAPANであるが、仙台は東日本大震災の影響で本の流通が長いあいだストップしたままだった。ここ最近はようやく復活しつつあるようだが、3月26日発売のVol.96は発売日には入手できず、また雑誌を読むという事自体がエラく贅沢な感じでしばらく忘れていたのだが、生活が落ち着いてくると逆に「日常」への渇望というのが出てきて、結局宅配便事情が復活してきた頃、出版社ネコパブリッシングのオンラインショップで購入。定価980円の雑誌の郵送料がなんと500円である。それでも読みたかった。
ところが実際届いてみるとメインの特集が「ドイツ製ハイブリッドの実力」という、筆者的にはビタ一文興味の無い内容で(笑)。「いつもより500円も多く払ってこんな特集かよ」と、正直なところがっかりした事は事実なのだが、それでもジュネーヴ・ショーの目立ったクルマの大きな写真は、ネットをさまよってMacBook Proの13インチの画面で見るよりも実に迫力があってほれぼれする。やはり紙媒体の魅力は今でもあると思う。そんなこんなで今号で面白かった記事は3つであった。
ひとつめ。ルノースポールの3モデルレンジテスト。すなわちトゥインゴ、ルーテシア、メガーヌのRSモデルでベストはどれかという記事。メガーヌRSに一目ぼれだった筆者としてはテストするまでもなくメガーヌだべ、と思っていたが、沢村慎太郎氏によるジャッジではルーテシアRSだった。要約抜粋すれば「トゥインゴRSは古典的な意味で最もホットハッチらしい乗り味」だが「小柄なのに粗っぽく、峠道ではリスキーなところが見られた」と。メガーヌはシャシーに関してはトゥインゴ、ルーテシアに大きく水をあける素晴しい仕上がりながら「エンジンの洗練不足が目立ってしまった」。130万円高価なVW シロッコRの実例を知ってしまうと「シャシー面ではメガーヌが圧倒する」出来だけに、(エンジンの洗練不足を)「無かった事にはできない」という。安くてシャシーは断然いいのにエンジンだけが洗練不足で惜しいというわけだ。で、ルーテシア。カップシャシーとスポールシャシーの2バージョンがあるが、カップは「Bセグメント内にいるクルマとしては、ほぼ限界に近いほどハードコアだが、その分旋回は痛快」ではあるものの、「その旋回能力を引き出すのは易しい仕事ではない」と。「それは向上心と研究心が旺盛なドライバーには楽しみのひとつになるだろう。だが一般的なドライバーには、そう容易ならぬ作業であり、またリスクもそれなりに発生する」。価格差も考慮すればルーテシアRSのスポーツシャシーという結論。筆者としてはメガーヌRSがツアラーとして乗るにはあまりにも旋回が鮮やかで、ツアラーとは割り切るには惜しいという意味の一文が印象的だった。やっぱり自分で乗るならメガーヌRSだなぁ。
多分日常でひとりで乗り回すにはトゥインゴが良いと思う
ルーテシア(=クリオ)RS
多分MiToよりも楽しいかもしれない
けどエクステリア、インテリアとも
MiToの方に筆者は萌える
だがメガーヌRSはヤバイ
文句無く欲しい
けどこの横幅じゃ家には置けない(笑)
ふたつめ。森慶太氏による1週間試乗記「乗らずに買えるかっ!」。今回はトヨタ FJクルーザー。基本的に好意的な内容だが、筆者が感心したのは乗り心地やメカニズムに関する部分ではなく、「ミラーだけ見て真っ直ぐ停められるかテスト」をやっていたところ。見た目は良いが実際に運転する場合の取り回しではそうではないという例は、むしろ昨今の複雑な曲線を持つクルマに多いと思っていたのだ。先代のプリウスなどミラーだけで真っ直ぐ停められたためしがない。筆者の腕の未熟さは置いても、室内からの見切りの良さという観点だけでは語れない、ミラーだけによる真っ直ぐ停めというのは、クルマの平常時の運転に関してかなり有効な判断ポイントではなかろうか。
実際は斜め後方視界は見た目ほど良くないらしい
みっつめ。沢村慎太郎氏による書評欄。ポルシェとVWの初期における試験車両や設計資料の話。現VWの総帥フェルディナンド・ピエヒ氏が革新的技術者だったというのを初めて知った。すみません。でもアルファロメオブランドを買い叩こうとしてるのはいかん。
Vol.97は明後日26日に発売なのだが、ちゃんと発売日に読めるのだろうか。こんな遅い雑誌レビューで申し訳ない。