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多くの方にご覧いただき、かつ現在に至るまでお付き合いのある貴重なご縁をいただきました。ありがとうございました。
当ブログのコメント欄常連にして「クルマで行きます」関東支部員、Profumo姐さんから譲り受けた1台。病気で投与されていた薬の副作用で頭が狂っていたとは言え、筆者としては大胆な買い物である。薬以外の理由には、実は筆者の息子の存在も重要である。
なぜなら当家のロードスターは息子の持ち物だからである。便宜上名義は筆者で、任意保険は家人が負担しているが、ローンは彼が支払っている。BMW Z3(の中古車)を買うべくバイトで金を稼いでいた息子としても、ゼロから優良物件を探すZ3よりも、瓢箪から駒的な超美麗NCロードスターオーナーになれるのは望外の喜びだったようだ。唯一の問題はこのエントリーを上げている現在も彼はまだ免許が取れておらず(爆笑)、我が家の玄関前に停まっているロドっちを指をくわえて見ていることしかできないということだ(教習車トヨタ コンフォートに散々乗って帰宅した夜、自宅に入る前にロドっちの運転席に座ってひたすらシフトチェンジ動作を楽しんだらしい)。まぁあとは免許センターで学科試験を受けるだけなので、免許取得は時間の問題だと信じたい。ロドっちは2021年春に、彼の就職と共に仙台を離れる予定である。
ロードスターというクルマが如何にストイックで如何に楽しいかということは、当ブログでは様々に書いてきたつもりだが、思い返すに決定的なことは書いていないように思えてきた。もっともあのクルマはわかる人には多くを語る必要がないし、わからない人は乗ってもらう、あるいは運転してもらうしかない。それでも言葉だけでロードスターを説明するなら、「蒸留水のようなクルマ」であろうか。ロードスターには「走ること以外の機能」がほとんどない。走るしか能がない。余計な不純物がない様はまさに蒸留水である。だがそのおかげで物理の法則どおりの動きに運転手は晒される。適当な運転を電子制御安全装置で庇ってくれるお節介さはない。道具としてシンプルなのだ。
電子制御云々の伝で言えば、現代のクルマは「運転の下手な人でも運転できるように造られている」ということができるだろう。マニュアルシフト操作ができない。繊細なアクセルワークができない。正しい軌道で旋回することができない。美しい制動ができない。そういう人こそが自動車販売の最大ボリュームゾーンを作っている。だから不感症の権化みたいな自動車でも、ヘタクソが事故を起こさない製品を製造販売することは、経済活動としては至極当然の帰結ではある。だがしかし、自動車運転を知的興味の昇華や、身体制御の果てにある高度な運動体足らしめたい人種にとっては、甚だ迷惑な話でもある。いやいや、世の中の歩行者や自転車乗りにとっては、そんな危険な運転手を電子制御で庇ってまで世に放つなという話ではないか。
10年オチのホンダ フィットやスバルの絶版サンバーで教習所のお手本のような美しい運転をする人も中にはいるし、完全な実用車なのに乗ると破顔一笑してしまうような傑作グルマも折々に作られてはいる。しかしそれは稀有な例だ。そんなカオスな自動車世界において、ロードスターは希有な存在だ。常にギリギリでありソリッドであり、余剰のない不便なクルマである。例えば濡れた路面でアクセルを吹かしすぎると、リアが流れ出す。電子制御がエンジン回転数を絞ったりしない。だがそういう状態を体験すれば、クルマの乱暴な運転は本来危険な行為であり、だからこそ努力してそれを制御できるようになることは楽しいのだと、理屈ではなく体感できるのだ。
筆者ももれなくそういう体験をした。今はプン太郎に乗ってもフロントガラス越しに見える景色は微妙に違う。このクルマを速く安全に走らせる最適解は何か?と自分に問いかけつつ走っているし、自分の前や後ろのクルマ、次々と現れる対向車が妙な動きをしないか気になる。これってつまり、自分の運転操作・制御を意識しての運転であり、積極的な周囲の安全確認行為そのものである。ロードスターの運転体験で、それが自然に自分の中に湧き起こるのだ。免許取得と同時にロードスターを運転できる息子は幸せ者だ。
このエントリーを2020年最後のエントリーとしたい。読者のみなさまにおかれましては、つつがなき新年を迎えられるようお祈りいたします。そして2008年から続けてきたこのブログの更新は終了とし、今後はアーカイヴとしてご活用いただきたい。このブログを続けてきたおかげで、良いご縁をたくさんいただいた。感謝多謝である。
明日2021年1月1日以降は
https://withcar.mystrikingly.com
にて引き続きお会いしたい。ありがとうございました。
2020年を当ブログが総括すると、トピックは3つある。ひとつはコロナウィルスパンデミック、もうひとつは筆者の病気罹患と入院である。3−6月に2度入院したので、日本がコロナウィルスの危機と直面せざるを得なかった時期、もっとも安全な環境に筆者は隔離されていた。だから国内が一番混乱していた時期をよく知らない。6−9月は自宅でひたすら療養(散歩をしたり家事をしたり)していたのだが、こりゃ滅多にないひとりツーリング三昧のチャンスだぜ!とほくそ笑んでいたことをここに告白しよう。だが4週間の絶食で極限まで落ちた50歳過ぎのおっさんの体力がそう簡単に戻るものではない。プン太郎の運転すら青色吐息という体たらくが解消されてきたのは、11月も過ぎてからである。元に戻すには何年かかるか……。
三つ目はマツダ ロードスターことロドっちの増車である。これは今年というよりも、人生でもマイルストーンになるようなビッグイシューである。相変わらず前口上が長くて恐縮だが、2020年の振り返りは
2020年ツーリング編
2020年スペシャルイシュー・増車体験
2020年その他のトピック
の3編にまとめてお送りしたい。まずはツーリング編。
プントエヴォで行く!新春の猪苗代湖
プントエヴォで行く!牡鹿半島を堪能した初春
プントエヴォで行く!ヘンタイ諸氏が気仙沼・大島を訪れねばならない理由を説明します
プントエヴォで行く!岩手千廐・厳美渓
38日ぶりにプン太郎を運転した日
プントエヴォで行く!・宮城県道172号線に再挑戦
プントエヴォで行く!未踏の県北県道と最強ランチの終焉
プントエヴォで行く!どこを走ってもどこかへ出る2020
ロードスターで行く!灼熱と豪雨の宇都宮2日間
プントエヴォで行く!福島市街地放浪の旅
ロードスターで行く!東松島ご近所散歩的ツーリング
プントエヴォで行く!至福の岩手県道1号線他再び!
C3で行く!山形県金山町移住計画
ロードスターで行く!第一次JR遠野駅前基礎調査
プントエヴォで行く!大和町でもみじ狩り
ロードスター・屋根を開けたいからご近所ツーリング
これだけ?と正直思う。仕方ないこととは言え、全然走りに行けていなかったんだなぁ。特に12月に1本もツーリングエントリーがないのは近年前代未聞ではないか。それを裏付けるのが2020年通年の走行距離である。
プン太郎 10,640km
ロドっち 5,774km
年間総計 16,414km
これまで年間2万kmは確実に走ってきた筆者だが、病には勝てなかったということか。2021年は心を入れ替え、様々に走りに行く所存である。
ようやくスタッドレスタイヤに履き替えたプン太郎を駆って、丸森町へ行ってきた。丸森・耕野のハチミツを買うためではあるが、往路はともかく、復路でどこか未踏破道をエンジョイ……という目論みもあった。まずは村田町を目指す。
時あたかも混雑必至な「年末の週末」だが、猛威を振るうCOVID-19の現状を考えると空いてなきゃおかしい……とも考えてしまう。つまり道路状況の予想は不可能と早々に断じて、朝7:30過ぎに自宅を出発したのが奏功したか、ファミリーマート村田小泉店までは好ペース。目的地の丸森町・八雄館は9:30開店らしい。いくら下道を低効率なコース取りで行くとは言え、仙台-丸森を2時間とはそもそも時間を多めに読みすぎ。ペースダウンを心がける。
専用設計のロードスターのロドっちと比べるのは酷なれど、プン太郎の根っこは実用車なのね、やっぱり……と思ってしまうのが運転姿勢。ビシッと背中を立て気味にして作るプン太郎の運転姿勢(とシートのホールド能力)は、どうしたって「バスの運転席」を彷彿としてしまう。それで快適なら立て気味でも寝気味でも良いのだが、ロドっち比プン太郎のシートでは横Gを強めに感じてしまう。その印象がクルマとの一体感として微妙な差になって現れる。なんてことを考えながら田舎道を進めていく。角田市内、産直販売所「あぐりっと産直広場」を南に曲がり、冬枯れの田園地帯を南下する。
手代木沼でまた一休み。時々トイレを使っていたが、実は沼そのものを見たことがない(笑)。駐車場から歩き出すと、お社があるではないか。八雲神社である。お参りしようと階段を上がっていくと、お社の脇から沼を一望できた。
ほとりにあるウッドデッキにも行ってみる。白鳥やマガンなど渡り鳥が200羽も……と、上記リンクには書かれているが、白鳥が20羽程度いただろうか。まだまだこれからどんどん飛来してくるのかもしれない。あたりは静かなので、目の前の県道を走るクルマの走行音がずいぶん聞こえる。
この手代木沼からさらに南下すれば、丸森町はすぐだ。ドン突きの阿武隈川でR349に合流し、町内へ入っていく。なんと八雄館はすでに開いているではないか。実は開店時間は9:00だったのだ。某GAFA企業の情報に踊らされたぜ。ともかくめでたい。さっそく入店。
ビニール袋にリンゴ詰め放題500円というのをやっていて挑戦してしまう。けっこうキツキツに詰めてレジに向かおうとしたら、お店の女性従業員……手っ取り早く言えばおばちゃんが、「あら、ビニール袋のクチは結ばなくていいんですよ(だからもっと詰めたら)」と声をかけてくれる。ありがたい話だが、こういう場面で筆者、がっつけない性分なのだ。人目気にせず……というのができない。ありがたい声がけを曖昧に受け流してハチミツを選んでレジに並んだ。すると別の女性従業員……平たく言うとおばちゃんが少し大きめのビニール袋を持って近づいてきたと思ったら、筆者の手からリンゴの袋を奪い、大きめの袋にスポッと入れて、余った部分にさらにリンゴを詰めてくれた。「ほら、はい!」と渡されて筆者反省。人の恩には素直に報いるべきである。
まるで「ハウス バーモントカレー」のCM撮影のような後部座席足元になってしまった。満足である。しかも時間は10:00。当然飲食店は開店前だし、腹も減っていない。サクッと帰ることにする。
丸森への往復でいつも気になるのは、西進すると「越河」だの「白石」だのと書いてある国土交通省の青看板である。R4側からそれらの道を走ったことはあるので、軽い山道のそれら道路が楽しいことは筆者も承知しているが、丸森側から西へ向かうと最後はR4にぶつかってしまうことが問題だ。それはあまり楽しくない。それでも白石市内への初踏破区間はこういう時に開発しておくべきである。K105と分岐するK24へ分け入ってみた。
帰宅後確認してみれば、それはK105という部分的には何度も走った県道なのだが、この日の初踏破区間も味わい深いワインディングだった。意外と人家が途切れないのも良い。里山を縫う良道である。木が生い茂って日光が当たりづらい路面には雪がまだ少し残っていたりもしたが、この日はほぼ全面的に路面はドライ。ノーマルタイヤで良かったじゃないか……と本気で思ってしまった。
里山を堪能してJR東北新幹線白石蔵王駅に出る。白石市街地に分け入るのも危険なので(さすがに混んでいる可能性がある)、不本意ながらR4へ乗る。途中R457に曲がり、先日ロドっちで通行止めを喰らったコスモスラインとの交差点へ。忌々しい工事中通行止めの看板は無くなっていたが、素直にR457をさらに遠刈田温泉まで進むのは遠回りすぎる。そこでコスモスラインを北上することにした。前走車は皆無でどうしてもペースがあがってしまう。ドライビングハイ一歩手前くらいまで行った。楽しい。
村田町へ戻ってきた。あとはあまりドラマがない。いや待てよ。元同僚が村田町の「歴史みらい館」という施設で働いている。遊びに来いと何度も言われているのに不義理をしていた(だって村田町が目的地ってこと、滅多にないんだもん)。公共施設の年末休館日は普通12月29日からだし、この最後の週末に休館しているはずもあるまい。そう考えて道の駅むらた敷地内にある「歴史みらい館」にプン太郎を乗り付けたのだが、驚いたことに休館だった。村田町やるなぁ。通用口付近に彼女のものと思われるホンダ フィットが停まっているのだが、職員通用口には呼び鈴もなく、年末に休日出勤している彼女を煩わせるのも本意ではないので、職場のアドレスに「来たけど帰るわ」とメールを一本入れて帰路についた。
帰宅してふとiPhoneの画面を確認したら、MAILER-DAEMONさんからfailure noticeが届いていた(笑)。
ヤマダ電機に寄って
プリンターのインクを購入
5時間/167km
余談:もうひとつ反省した話
上掲画像は往路、朝の8:30頃に村田町へ向かうK31で撮影したものである。どう考えても焚火や野焼きの煙じゃねーなと思いつつプン太郎を進めたら、案の定火災のようだ。火災現場はちょうど並走するE4東北自動車道の向こう側で見ることができない。が、反対側の集落内の消火栓からポンプ車に水を供給しているようで、消防ホースが数本道路を横切っている。当然ケーブルプロテクタ的な仮設のスロープがホースを保護しているのだが、このスロープの角度がキツイのだ。ヒトケタ台まで速度を落としているであろう前走車がぼよんぼよんと跳ねる。うわー、これプン太郎だとアンダースポイラーこするわーと思いつつ最低速度で進入していったものの、やはりこすった。くそー!
で、帰路。再びK31を北上していたら、まだホース渡してるじゃーん!もちろんあのスロープも同様である。その脇に警察官と消防署員が数名誘導に立っている。「スロープなんてこんなもんでいいだろ」的仕事に筆者ちょっと腹が立ってしまい、アプローチする前に一時停止し、窓を開けて「あのさー、このスロープ、もっと角度の緩いやつにしてほしいんだけど」とブー垂れた。まさかブー垂れられると思ってもいなかったのであろう現場の人たちは「あぁ、あははは」と力なく笑うばかりである。誘導してくれた年配の警察官がプン太郎の鼻先を見てようやく理解したようで、「あー!ゆっくり!ゆっくり!」と誘導し始めた。アプローチを始めても「ゆっくり! ゆっくり!」と何度も言うので、窓を開けたまま「わかってるっつーの!ゆっくりやるわ!」と言い返してしまった。ま、その警察官、まったく動じることなくさらに「ゆっくり! ゆっくり!」と誘導してくれたのだが。
帰宅して筆者再び大反省。年末の冷えこむ早朝から火事の消火と道路で交通誘導である。あの現場にいる人たちに対して、筆者はまず何を置いても「お疲れ様です!」と言うべきだったのだ。スロープの角度がキツイことなど些事ではないか(もっと角度が緩やかなものに速やかに買い替えて欲しいが)。修行が足りない。すみませんでした。
JUGEMテーマ:ABARTH
病気のせいで体力も筋力も落ちてしまった筆者にとって、ラックに置いてある17インチのホイール+タイヤを上げ下ろしするのがもっともキツイ。その次にキツイのがタイヤを組み付ける工程である。要は重いのだ。こんなのが四隅のダンパーの下でバタバタ暴れるのを制御するのって、すごい技術だと思う。
タイヤ交換が遅れたのは、自分で作業することにこだわってしまったから。ホイールスペーサーを改めて組付けようと企んだせいだ。12月初旬にお願いした車検作業時に一緒に頼むという選択肢もあったのだが、純正状態こそ是とする正規ディーラー(株)イデアルさんに頼むには、ちと気が引けた。少々負担だが自分でやろうと決めていたのだ。しかしまさか、12月14日に積雪するとは思わなかった。
ヘロヘロになりつつようやく作業終了。なんと1時間近くかかってしまった。段取りがめちゃくちゃ、酷いもんだ。1本だけ極端に空気圧が減っているタイヤがあり、スローパンクチャーが疑われる。要経過観察ではあるが、一晩明けても問題なかったので多分大丈夫だろう。
お待たせプン太郎。次の休みはどこかへ走りに行こう。
総走行距離
プン太郎 77,633km(先月比+379km)
ロドっち 39,231km(先月比+631km)
筆者当月走行距離 1,010km
今月の2台
いやー、しくじった。プン太郎、いまだノーマルタイヤのままなのだ。なぜそんなことになったかというと、車検にノーマルタイヤのまま出して、12月14日の納車日が仙台の今シーズン初の積雪日だったのだ。夕方這う這うの体でなんとか帰着。そのままブランチ(賃貸駐車場)で冬眠……というわけでプン太郎、驚愕の379kmという月間低走行距離数を達成。こんなの走ってないのといっしょじゃん!
一方中古でもスタッドレスタイヤに交換したロドっちが、代わりの足として大活躍。当初はコーナーのたびにリアを振り回していたが、最近ではようやく圧雪路でもしずしずと走れるようになってきた。FR車両の所有が初めてのうえに、冬季の、しかも圧雪路を走るなんて……。人間、いくつになっても初めての体験ができるもんですね。
さてFRのロドっちで冬の仙台を走ってみると、世の中はFF車両だらけだと思わずにいられない。その中に生活4駆という滑った時だけ動力を流す簡易全輪駆動車が混じっていて、ジムニーだのスバル車だのゥラングラーだのは、実はそんなにいない。たまにいるFR車はロードスターと86/BR-Zくらいなものだ。NDや86がそれなりのスピードで圧雪路を走っているのを見ると、オレも負けられない!と思う。
この心境の変化はなんだろう。多分来春訪れる状況変化が呼び水になったようだ。2021年春の息子の就職を機にロドっちはいなくなり、1台体制に逆戻りする。同時に大排気量FR車に乗りたい欲望が沸々と筆者の中に湧き上がっている。順当に考えればロドっち不在の穴をアメリカン大排気量自然吸気FRで埋めるわけだが、そもそもダウンサイジングターボの正反対とはなにか?を考えた結果が「アメリカンマッスルV8いいじゃん!」なわけで、当初それは1台体制前提のプン太郎リプレイス案だった。だがこれまで筆者がツーリングなどで楽しんできた行き先や経路を改めて思い返してみると、プン太郎(あるいはMiTo)のサイズだからこそ楽しめる道行きだったと気づいたのだ。だって極端な話、田舎の農道を横幅1,800mm代のV8グルマでゆっくりと走って楽しいか?という話である。生き生きと走って楽しめる道路や状況が違いすぎる。マッスルカー乗ったことないけどさ。となると、マスタングでもチャージャーでもいいけど、大排気量V8を主力戦闘機にリプレイスしてしまったら、「戸締まりしっかり、どろぼうがっかり」の看板付近とか、七北田ダム北側の荒れた舗装のワインディングとか、そういう狭くてくねくねした道はあきらめろ、ということになる。
それは現在の自動車人生をリセットするようなものではないか。ちなみに以前にもリセット案件があって、それはプジョー 307SWにノックアウトされて、輸入車ライフを始めた時である。あの時ほどのインパクトが再びオレの身に起こるのか……!
いやいやちょっと待て。単純にプン太郎は保有したままにすればいいんじゃないか。そもそも当家の狭い駐車スペースにアメリカンマッスルカーなど置いたら、まずドアを開けられない。降りられないし乗れない。そうだ!プン太郎と共存してもらおうじゃないか。
そう考えると、もっと労わりつつというか、もっと大事にというか、端的に言ってもっと長持ちするようにプン太郎と接しなければ、と思うようになった。2020年4回目の車検で20万円だったら、2022年には30万円、40万円も視野に入ってくる。だがそこでめげてはいられない。そうなったら日々のメインテナンスでなんとかしようじゃあないか。いわゆる分散支払い型である。
まぁ程度の良いV8エンジンを搭載したクルマとなると、中走行車で600万円なんてのもザラで、役付きモデルだとあっという間にイッセンマンエンなんてことになる。それ、家をリフォームするかV8を買うかみたいな2択ですから。こりゃあ無理ですかね。
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プントエヴォ車検(4回目)
総走行距離77,608km
24ヶ月点検 技術料 34,000円
保安確認検査料金 8,000円
下廻りスチーム洗浄 技術料 6,600円
下廻り錆止めシャシ塗装 技術料 8,000円
ブレーキオイル交換+エア抜き 技術料 3,300円
オイルフィルター 73500049 1,770円
以上の技術料とフィルター代はイデアルサービスクーポンにて無料化
エンジンオイル交換 SELENIA ABARTH 5W-40 51029976 8,100円(@2,700*3.0)
TRANS BELT SPK1150 55232450 3,900円
上記技術料 6,000円
SPARK PLUG 55249868 7,360円(@1,840円*4.0)
上記技術料 4,800円
ウィンカーバルブ12V21Wアンバー V91191432 700円(@350円*2)
上記技術料 2,400円
発煙筒 22222 1,050円
ショートパーツ 2,000円
消費税 4,046円
値引きなどあり、車検費用は
91,856円
これにイデアルクーポンの代金を足す
106,000円
合計 197,856円
恐怖の見積もり編に書いたとおり、サービスフロントSさんの暗躍によって20万円の絶対防衛圏は死守された。ふー、危なかったぜ。本当はエアクリそのものを交換してしまうプランも一瞬頭をよぎったのだが(alfa_manbowさんには見透かされていたようだ)、とにかく今回は車検を通過することだけを重視した。今後にご期待いただきたい。
今回の車検は終わってみれば(内容としては)平穏無事だった。むしろ波乱があったのはイデアルさんのスタッフのみなさんで、K店長の秋田出向とか、Tさんが鎖骨を痛めたとか、驚いたり眉を顰めたり。まぁK店長はSさん経由で筆者のある相談に乗ってくれたり、Tさんは笑いながら話してくれはしたのだけど。お二方とも、1秒でも早い帰還、快癒をお祈りするものなり。
実はこの回収日は仙台でもはっきりと積雪があった日で、ホイールスペーサーを装着したい一心でタイヤ交換を先送りし続けてきたプン太郎はなんとノーマルタイヤ。本当ならエンジンオイルとフィルターを交換した効果を体感すべく、エンジンをぶん回しつつ帰途に就くところだが、大渋滞の幹線道路を静々と帰るしかなかった。そして寒波がいったん和らぐまでは、acatsuki-studio駐車部門スペシャルブランチ(賃貸駐車場のこと)でお休みいただくことになる。やむを得ぬ仕儀ではある。早くプン太郎でお出かけしたいものだ。おかえり!プン太郎!そしてごめん!プン太郎!
余談
イデアルさんから帰る間際、Sさんから「実は当店のユーザーさんで……」とお話しをいただく。その方は当ブログの読者様で、たまたまの来店時、入院中のプン太郎を目ざとく見つけ、「ありゃあacatsuki-studioのプン太郎じゃねーのか?」とお気づきになったらしい。わざわざSさん経由でそんなお話をいただくのも嬉しいことだ。LのYに乗っておられるという。お声がけありがとうございます。いつかお会いできたらゆっくりお話ししましょう。しかし同時に、プン太郎が「走る個人情報」であることが(またもや)実証されてしまった。
JUGEMテーマ:ABARTH
筆者の愛車アバルト プントエヴォことプン太郎が車検を受ける。現車検の満了日が2020年12月11日。もっぱら筆者の支払いの都合から満了日ぎりぎりまで受検を引っ張り、入庫は12月7日だった。お願いするのはこれまでどおり(株)イデアルさんである。2011年の国内初登録以来4度目の、筆者が2018年1月に購入して以来2度目の車検である。
さて事前に予約を入れていたので、入庫日当日、サービスフロントのSさんが粗見積もりを作ってくれていた。それによると約15万円である。なんとか12万で収まるといいなぁと思っていたが、最低限の検査だけで12万、それにフロアのスチーム洗浄とコーティング、オイルとフィルター交換という不可避メニューを乗せただけで14万3千円とかになってしまうのだな、これが。
さらにSさんから提案が(イデアルさんのサービスフロントはイニシャルSさんが複数人いて紛らわしいのだがやむを得ぬ)。イデアルさん独自のサービスクーポンを同時に購入すれば、さっそく今回の車検から適用でき、さらにはこの先のオイル交換も数回無料になったりして大変お得ですよ、ときたもんだ。同行してくれた家人も「あたしは買うね」と断言。プン太郎購入時もやはりそのクーポンは大活躍だった。筆者もそのありがたみはよくわかっている。しかし今回の支払いはさらに3万円程度上乗せになってしまう。車検の工賃はクーポンで賄えるのだが、クーポン本体の価格というものがあるのでそうなってしまう。
約18万円かぁ。
当初想定(というか勝手な希望)から6万オーバーである。うーむ、どうしたもんか。
考え方を変えてみよう。9年オチ/約8万km走ったイタリア車の車検が18万円。ま、故障しないことで有名なガンマプラットフォーム(GM開発)のクルマとしては中庸な値段と言えるかもしれない。それにあーだこーだ言ったところで、現状のメンテ内容はどれも今やらなきゃまずいものばかりである。こりゃ覚悟を決めるしかない。
続く
このjugem.jp上の12年間のエントリーは、アーカイブとしてこのまま置いておこうと思います。お時間のある時に新装版を閲覧いただき、早いうちに違和感を解消していただければと思います。ただし読者のみなさまからのブーイングが想定以上に多い場合は……。ちょっと考えます(笑)。
完全移行は2021年1月1日を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
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病後体力が著しく落ちている筆者だが、なんとかやり終えた。もっとも家人に手伝ってもらったから完遂できたのだが、今回のことでわかったことがある。タイヤ交換で一番体力を食うのはタイヤをラックから降ろすこと、載せること。そして二番目に体力を食うのはボルト締め作業である。それを家人に任せたらなんとかできた。
C3のスタッドレスタイヤはコンチネンタル コンチバイキングコンタクト6。予算の都合で16→15インチへダウンしているのだが、足さばきには良い影響しかない。温和な足の正確がさらにマイルドになり、乗り心地はむしろ良くなる。だがEPSは16インチで調整されているようで、15インチのスタッドレスタイヤを履かせた後ではハンドルがやたらスカスカ動く。それだけが惜しい。
第二章
運転席側のパワーウィンドウが開ききったまま不動になってしまった我が家のロドっち。仙台市指定ごみ袋をテープで張り付けただけの養生策で駐車場に放置されてしまったのだった。
数日放置していたのだが(ヒドイ)、ある朝起きると空がどんより曇っているではないか!がっつり降られるとごみ袋養生だけでは心もとない。いろいろやり繰りして慌ててケンオートさんを再訪した。今度は無事に診断してもらえたのだが、前回冒頭の診断結果のとおり、スイッチ類の通電は問題なかったのだが、窓を動かすモーターが臨終していた。こうなると部品交換となるが、NC(=3代目)のモーターは在庫がないらしく、取り寄せに数日かかるという。「お値段はいくらくらいですか?」社長「うーん、NCのこういう交換はあんまりやったことがないんだけど、NA/NBよりも安かったはずなんですよね。たぶん3万円くらいじゃないかなぁと」。それなら工賃を加算しても5-6万円ではなかろうか。「お願いします。進めてください」ということで、その日は代車を出してもらい(スズキ ワゴンR)、帰宅した。
このワゴンRの試乗記をいつもならしたためるところだが、もうホントに乗るのも書くのも気が滅入るシロモノだったので、パスします。
預けて翌々日にはケンオートさんから修理完了の電話をいただく。間の悪いことに現場仕事が続いており時間を作れない。お知らせを受けたついでにエンジンオイル交換もお願いし、訪れたのはさらに二日後であった。
パワーウィンドウモーター交換
入庫時走行距離 38,711km
P/Wモーター交換 14,300円
上記工賃 6,000円
P/Wレギュレーターオーバーホール
上記工賃 9,000円
Moty'sケンオートオイル 5W40 ×4.3 6,450円(@1,200円)
エンジンオイルエレメント交換 1,200円
上記工賃 1,000円
消費税3,795円
合計41,745円
プジョー 307SW、アルファロメオ MiTo、アバルト プントエヴォ3台のメインテナンスを正規ディーラーにお願いし続けてきた筆者には、驚愕のリーズナブルさである。クレジットカードで支払ったのでさらに手数料が乗り、最終的には4万2千なにがしだったのだが、それでも。
名にし負うケンオートさんの現状では、
・ウチはとにかくNAの修理が多い
・ぼちぼちNBが入庫し始めている
・NCの修理経験はまだあまりない
だそうだ。プロショップ過ぎてNAオーナーの救世主になっている模様。逆に言えばNBがぼちぼちって、どれくらい耐久性が高いんだ!と呆れてしまう。今後どれくらいお世話になれるかわからないが、今回はお願いして大正解だった。敷地内にゴロゴロ停まっていた魔改造NAとか乗ってみたいものだ。
筆者周辺の数少ないMiToオーナーだったトーマスさんが、とうとうアルファロメオ MiTo QVを降りることになった。乗り換え先はなんとBMW M235i xDrive グラン クーペである。筆者は先日友人の135iクーペを試乗させてもらったばかり。その機動性、剛性感、基礎能力の高さなどにすっかり参ってしまった。エントリーのタイトルに「良すぎて欲しくない」とまで書いたほどだ。友人によると135iクーペの直接の後継は2シリーズクーペなのだという。その中のM GmbH謹製M235i xDrive グラン クーペ(以下M235i)である。そりゃ当然興味津々である。「ファーストインプレッションミーティング、やりませんか?」とお誘いしてみると「ぜひ」という嬉しいお返事。あお師匠とalfa_manbowさんにもご参加いただき、晩秋の試乗会が行われた。
快晴の11月下旬のある日、集合場所となった某洋菓子店駐車場に怪しいクルマが三々五々集まってくる。アルファロメオ 147(あお師匠)、155(alfa_manbowさん)、屋根開けっぱなしの筆者のロドっち。そんな90-00年代のヴィンテージ集団の中でM235iは異次元の存在感を示す。青なのか緑なのか、日光のあたり方で微妙な色味変化を見せる「スナッパー・ロック・ブルー(多分)」の塗色。複雑玄妙なカーブを見せる外皮のプレスと組み立て精度。一時期から一転して巨大化しはじめたキドニーグリルを擁するフロントマスク。とびぬけたクオリティの工業製品は見ただけでそれが伝わってくるものだが、M235iはまさにそれだ。ぽっかり空いたエアダクトや巨大で美しいブレーキキャリパーなどがその印象をさらに加速させる。我々の邂逅第一声は「うーん。こりゃすげえ」であった。
とりあえず座ったり眺めたりした後、トーマスさんを囲んでヒアリング。オーナーのファーストインプレッションを要約すると「乗せられてる感じ」なのだそうだ。『駆けぬける歓び』を社是とするBMW製品の印象としては、どうにも腑に落ちないインプレッションである。もうこりゃ走ってみないとわからない!ということで、まずはオーナーの運転で七ヶ浜町内を縦横に走り回ってみる。余談だが宮城県の海沿いの町七ヶ浜の道路は、アップダウンと適度なコーナーの連続で、あお師匠は「貸切にして走行イベントをやればきっと面白い」とおっしゃっていた。慧眼である。ちなみに納車から日が浅く、トーマスさんのM235iは実走行距離がわずか800kmほど。BMWは馴らし運転距離を2,000kmとしているそうで、この日はエンジン回転数上限3,000rpmという条件がついていた。公道でもあり「そっか、仕方ないな」というムードが参加者の中になかったわけではないが、その後走り出してみれば、上限3,000rpmでむしろ良かったと思えるほどの俊足ぶりをM235iは見せつけた。
この後の展開を時間軸で書いていくと、ただでさえ冗長な当ブログがさらに冗長になるので、同乗試乗も含めて筆者が得たもの・感じたことを、項目を立てて箇条書きにしたい。
1.全体的に高品質
2.動的性能の高みに悶絶
3.座り心地最高のイス(前も後ろも)
4.不思議なEPS(パワステ)
5.二面性のあるブレーキ
6.BMWなのに……なペダル配置
7.後部座席の罠
1.全体的に高品質
冒頭に外装の第一印象を書いたが、もちろん内装も組付け精度の高さは相変わらずで、アルファロメオ ジュリアの内装組付け工程管理者はBMWの担当者の爪の垢をエスプレッソに混ぜて飲むと良いと思う。イタリアの自動車に乗っている筆者からすると「なんというか、ここまでやらないとダメなんですか?」という気はする。Tシャツに短パンでは乗れないムードではある。
2.動的性能の高みに悶絶
筆者レベルではM235iの内外装を眺めただけで居住まいを正してしまう。だから加速・旋回・制動の高みについてをや。もう、今さら言わせんな、の世界である。三要素の性能が尖っているのではなく、加速中と言わず旋回中と言わず、常に姿勢はおそろしく安定している。その結果意外なほど安楽なのだ。これだけの高性能車に乗っているのに……と、ギャップに戸惑うくらいだ。高速道路で片道400km/往復800kmなんて楽勝だろうと思う。
3.座り心地最高のイス(前も後ろも)
その安楽加減をさらに加速させているのがこの「M スポーツ・シート」である。はっきりと硬く、身体が沈み込むマージンすらほとんどないのだが、反応の速い足回り(この足回りだけでエントリーが1本書けそうなくらい興味深い)と組み合わされると、不快ではまったくない。シートそのもののホールド感はガチガチではなく、腰周辺をソフトに固定してくれるGT的性格ではある。ちなみにオプションの「パーフォレーテッド・ダコタ・レザー」を装着。色はマグマ・レッドという赤ともオレンジとも言えぬ絶妙のウォームカラーだった。
ということで最新のBMWの、それもヤンチャ系モデルの出来栄えにはしゃいでいた我々だが、助手席や後部座席に座り、短距離でもステアリングを握らせていただくに至り、気になる点も見えてきた。
4.不思議なEPS(パワステ)
端的に言ってダイレクト感がわずかに薄い。コンフォートやスポーツの名で制御パターンが変わる。どのモードであっても中立からの切り始めに余計なフリクションはないし、手応えという意味では非常に好ましい反応をするEPSではある。いや重い軽いの話ではなく、どこかよそよそしいと言えば良いだろうか。よくよくそこに集中してみると、前輪の動きとステアリング操作の結果返ってくる情報に、紙1枚挟まっているようなもどかしさがある。これはあれだ、オンライン会議と同質のもどかしさである。可変ギアレシオ機構の為せる業なのだろうか。今回はその効能を実感できる高負荷な場面は無かった。だがこの違和感は先日の135iクーペの油圧アシストステアリングの甘美な印象との比較が原因ではないと思う。
5.二面性のあるブレーキ
ブレーキの効きそのものは強力なのだが、リニアリティという面では少々惜しかった。問題は踏み込み時ではなく、停止位置を決めるための操作である「抜く時」である。今さらこんなことを書くのは文字数を徒に増やすだけのような気もするが、クルマを停止させるために運転手が取る行動(運転操作)は2段階に、細かく言えば3段階に分かれている。停止する場面を思い浮かべていただきたい。まずBペダルを踏む。望む分だけ減速する。同時に減速し続けるに従って踏力を減らしていく。この段階が「ペダルを抜いていく動作」である。この時のペダルを通して足の裏が受け取る情報描写が甘い。踏み込み時の反応が鮮やかなだけに、この抜く時のふにゃっとした甘さがもったいない。
6.BMWなのに……なペダル配置
完璧だったあの135iと比べると、わずかではあるがA,Bペダルとも左に寄っている。2ペダル(8速スポーツAT)なので致命的ではないし、筆者の過剰な思い込みである可能性もある。世の中の自動車全体を見回してもM235iのペダル位置は正しいのだが、あのBMWで?とこっちも厳しくなってしまう。
7. 後部座席の罠
グランクーペである。流麗なスタイリングなのである。後部座席、シートの設えは破綻がないが、背面にきちんと背中を付けて背筋を伸ばすと、身長171cmの筆者ですらなだらかに下る屋根に頭がこすれる。
あまりにすごいクルマなのでつい粗探しをしてしまったが、2020年に購入する新車というカテゴリーでは間違いなくトップリーグにいる。加速・旋回・制動の各要素は高バランスで、当然高機能である。クルマの根源的な魅力はそれだけで充分担保できているのに、電子制御のオプションがこれでもかと付いてくる。細かくは味わえなかったが、エンジン、シャシー、エグゾーストサウンドまで個別に調整できる各モードや(今回は体験できず)、直前の軌跡を完全に再現してくれる機能(何を言っているかわからないと思うが、リバース・アシスト/後退時ステアリング・アシスト機能とはつまり、限定的な自動運転だ)など、電子制御で武装した先にある「自動運転の世界」がリアルに感じられる体験でもあった。
自動運転と言えば、我々クルマヘンタイには縁のない機能、縁を持ちたくない機能の筆頭ではあるが、M235iで垣間見たBMWのそれは、如何に人間を主役に据えようかという試行錯誤が感じられるものでもあった。実際に筆者も家人のシトロエン C3で高速道路走行時のクルーズコントロールには世話になっているわけで、そのありがたみを理解した上で、様々な電子制御技術を重畳するM235iでBMWが『駆けぬける歓び』を獲得しようと努力した痕跡はちゃんとわかる。とにかくあれだけの高性能を取っ散らかさずに、運転手とコミュニケーションが取れるものに仕上げようと努力し、なおかつ「安楽」にすら走れるように調律したことはさすがとしか言いようがない。
もっとも当然のことながら「安楽なだけの旦那グルマ」などではなく、おそらくちゃんとあたりが付けばワインディングへ持ち込んでも相当攻めることができるだろう。xDrive=FF由来AWDの強みは実はそういうステージでこそ発揮されるのかもしれない。つまりコンフォートとアグレッシブの両方を、高い次元で共存させたのがM235iだと言える。
一方で電子制御を重畳してなお人間を運転行為の中心に据えようと努力するのならば、EPSやブレーキなど、まだ煮詰められる部分があるとも思う。筆者個人としてはせめてパワステは電子制御ではなく油圧アシストにしてほしい。M235iはBMWの中でもその看板となる正統派セダンモデル3、5シリーズとは違う。そもそもBMWを選択するオーナーはかなりの割合で「運転そのものに興味があり、その高性能と対峙しよう」と考えている人々だろう。だとするといくつかの機能をあきらめることになっても、135i由来の油圧アシストステアリングを採用することで、M235iの運転体験は一層濃密になるはずだ。『駆けぬける歓び』の本懐はそこではないのか。
しかし。このことも声を大にして言いたい。そんな外野の野次を気にせぬ現状のままでも、M235iは多くの運転手の運転免許証の寿命を縮めることになるだろう。M235i xDrive グラン クーペに乗るということは、愉悦と背中合わせの危険、「停」ではなく「取」がすぐ目の前に迫る日々となるはずである。同時に運転に真摯に向き合おうとする人なら、「電子制御クエスト」としても楽しめるクルマである。トーマスさん、ありがとうございました。