クルマで行きます

クルマが好きなことにかけては人後に落ちない。
東北のABARTH PUNTO EVO乗りが綴る、クルマについてのあれこれ。
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試乗記・ザガート 155T/S TI-Z
| 試乗レポート | 23:43 | comments(6) | trackbacks(0) |

ザガート155T/S TI-Zという超希少車種に試乗させていただく機会を得た。オーナーの155TI-Zさん(みんカラネーム)とは某SNSでつながっていたのだが、未だ会ったことはない。筆者のプン太郎試行錯誤日記(このブログのこと)をお読みになって「そんなに運転しにくいの?運転してみたいねー」的なコメントをSNS上でいただいた。どうせ乗っていただくなら筆者としても155を運転してみたい。ザガート155の詳細はよくわからないが、アルファロメオ155は試乗したいクルマランキングの常に上位にいる車種。かくして密会が実現した。文中クルマを意味する155と人物のハンドル名として何度も155が出てくると読みづらいと思うので、クルマの方はなるべく厳密にアルファ155とザガート155を書き分けるとして、このエントリーでは155TI-Zさんという人物をKさんと記述することをお許しいただきたい。

時は平日の午前中、密会場所は仙台市北部の「泉ヶ岳」なる山の中腹にある駐車場。ここからさらに数km登ったところにあるスキー場までのワインディングを往復してクルマを味わう算段である。先着した筆者がKさんを待っていたら、はるかかなたから野太いエグゾーストノイズが聞こえてくるではないか(笑)。早朝・深夜の起動が憚られる音質・音量である。Kさんも普通の住宅地にお住まいとお見受けするが、ご近所付き合いは大丈夫なのかいらぬ心配をしてしまう。「やぁやぁはじめまして」のご挨拶をしてさっそく概要など。
 




あまりに希少な個体なので詳細を書いて良いものか迷うのだが、ザガートが製作した数十台の限定車…というか、結局数十台しか作られなかったというか、総製造台数がナゾというか(笑)、ともかく現存する台数そのものが少なく、このザガート製の155、東北ではKさんの個体しか存在しないらしい。国内のザガート155の導入経緯や現状をまとめたデータベースサイトがある。詳細はこちらをお読みいただく方が早い。

Macci-no Maccina

基本的にこのサイトに書かれていることをベースに話を進めるが、ザガート155は95年製アルファ155をベースに内外装のモディファイを施したモデルということになる。四半世紀を超えたご高齢のクルマということになると、メインテナンス事情が気になるところだ。しかしKさんはそちらの知識も技術もある方なので、トラブルがあってもパーツを買ってきて自分で直してしまう。だからもっと古いクルマに乗りたいなんてのたまう。羨ましい。
 


エンジンカバーの結晶塗装は
ご自身の手による


ひととおり個体のレクチュアを受けて、まずは筆者が155を運転させていただくことにする。「現代のクルマと比べるとブレーキが効かないから気をつけて」とのこと。顧問の916系スパイダーでも経験したが、90年代のアルファのブレーキは00年代以降のラインナップのそれと比べると、一様に茫洋としたタッチだ。踏み増しても踏み増しても制動力はぼんやりとしか立ち上がらない。早めの操作と強めの踏力が必要だ。

ブレーキについて最初に書いてしまったが、まずは車両の全体的な話から。エクステリアの全体的な印象は「エグい155」。こういうとKさんに怒られると思うけれど(笑)。ボディの半分くらいはFRP素材に置き換えられているという。また通常の155のアウターパネルとは造形があちこち異なっており、フロントもリアもググッと張り出しているように感じられるが、全幅は1,760mmと良心的なサイズ。絞るところは絞り、出すところは出すという視覚のマジック。イタリアンデザインの華と言ってしまいたい。もっともこのFRPパーツは仕上げも取り付けもイタリアンジョブらしい(笑)。先のリンク先サイトに日本発売前後の経緯が(作者の知る限りのところで)記述されているので、詳しい話はそちらをご参照いただきたい。Kさんの個体を子細に見る限り、なるほど「チリ合わせってなんですか?」という風情。正直言って、筆者はチリ合わせとかパーツの精度については極端に頓着しない。脱落さえしなきゃいいと思っている。ただしこのFRPパーツ、素材の特性上仕方ないことなのだが、ぶつければ一巻の終わり。へこまない。割れる。これらのパーツを作っている会社はもはや存在しない。自作?ワンオフ?可能なのだろうか。とにかくそういうクルマなので、試乗っつってもねぇ(笑)。筆者側から気軽に言い出した話ではあるが、緊張しちゃうわー。
 


左側・Cピラー付け根


右側・リアバンパー


しかしこの佇まい、存在感。ただ事ならぬ雰囲気なのだ。Kさん曰くこれだけの希少車なのに日常で「これ…ザガート155じゃないっすか!!」的な声をかけられることがほとんど無いという。日常どころかあちこちのイベントでも同様らしい。希少すぎて希少かどうか理解されないというパラドックスもあるかと思うが、あまりにただ事ならぬ雰囲気に声をかけづらいだけじゃないかという気も筆者はする(笑)。もともとカッコいい155が、さらにスペチアーレな見た目になってると思ってくれて間違いない。

乗り込んでみる。LHDモデル(しかない)。シート、ハンドル、ペダルの3点に特に齟齬はない。5速のシフトがぬるぬる…というかゲート感の希薄な動き。916系スパイダーもそうだったので特段驚かないが、試乗を終えた今ならクルマの印象にマッチしたシフトだと言える。ハンドルはMOMOのものに交換されていて、リム細目で径も小さめなのだろう、ハンドルを握るだけでレーシーな気分が盛り上がる。加えて前述のエグゾーストノイズである。聞けばマフラーはザガートがフジツボに作らせた直管ものだそうで、こいつが奏でる音は適度に粗い粒立ちで、かつ低音のドスが利いた万歳三唱するような音。ブリッピングなどしたわけではないが、アイドリングしているだけで気分が高揚してしまっても仕方ない仕様。実際のところ、古くさくてイヤになっちゃうだろうなぁと思っていた155のインパネやメータークラスターやコクピット環境については、実際に着座してみればまったくそんなことはなく、むしろ気分が高揚するような不思議なポジティブさに満ちていた。とにかくクルマは実物を見てみないとわからないものだ。

動き出してみる。身構えていたのにあっさりクラッチがミート。なんなく動き出せる。初めてのクルマの動きだしがスムースに行くと自信が付きますな。で、お手並み拝見とばかりにAペダルを踏んづける。勇ましいエグゾーストノイズとは裏腹に速度計の針の進み具合はゆったりめ(笑)。おー、なんかいいなぁ。ン?なんかガソリン臭い…。Kさんは笑っておられたが先のサイトを見ると構造的に燃料臭がしても仕方ないようだ。どんな仕様だよ!まぁ窓を開けて走っているのでだんだん気にならなくなったけれど。

試乗コースはワインディング。シフトチェンジ動作がうまくできるか少々不安だったが、幸い恥をかくような場面はなかった。旋回挙動も加速動作と同様で鷹揚な感じ。Kさん曰く147なんかの方が鼻の動きはクイックだという。あおさんの147試乗時のことを必死で思い出してみるが、確かに鼻の入り方は147の方が違和感なかったような…。違和感とはプントエヴォと比べてのことだが、全体的に加速・旋回はバランスが取れており適切な速度がわかってくれば、ワインディングでも怖くないはずだ。

どうして「はずだ」と書いたかというと、あまり上手に走らせられず怖い思いをしたからだ。その理由は前述のブレーキ。MiToやプントエヴォというサーボ効きまくりの車両経験しかない筆者が、155の鷹揚なブレーキタッチを習得するには今回のワインディングは短すぎた。ベストなタイミングと踏力が最後まで体得できず、途中何度かややオーバースピードでコーナーに進入することがあった。これは155というクルマが不出来だったり性能が低いわけではなく、加速・旋回・制動がきれいにバランスするポイントを筆者が見つけられなかったという話だ。もっとのんびり走るのがきっとこのクルマには似合う。なんとかのひとつ覚えみたいに、ワインディングだから踏まなきゃ損!みたいな運転をした筆者が未熟なのだ。ちなみに試乗を終え155を駐車させる時、危うくバリケードに突っ込んでFRPフロントカウルを割るところだった。微速域でもブレーキタッチはブレずに甘い。だからつまりそういうことだ。逆にKさんがプントエヴォを運転した時の減速は効きすぎていた(笑)。Kさんによるプントエヴォ試乗の様子はエントリーを分ける。

ご家族をこの155に乗せることはないというKさん。ファミリーカーとして3列シートの国産車を購入したこともSNSの投稿経由で知っている。だから155を動かすのは月に2-3回程度だという。そしてむしろこれくらいの頻度で良いのだともおっしゃる。自分の楽しみのためだけに乗る。そういうクルマとの付き合い方があってもいいなぁと素直に思った。実際プン太郎と筆者の関係もそれに近いが、どうしたって「家族も乗せられるユーティリティ」的な幻想を捨て切れないし、実際家族も乗せる。「もっと古いクルマにすればいいじゃない」とKさんはおっしゃる。古いクルマでのんびり走る方がもういいのだ、と。書き忘れていたが、Kさんと筆者は同学年(Kさんはひとつ年下の早生まれ)。身体の諸機能の衰えについてはふたりともリアリティを共有できる(笑)。確かにKさんのように小さなトラブルは全部自分で直してしまえるなら、75でもジュリアスーパーでも良いかもしれない。古いクルマにとことこ乗るという生活に憧れがないと言えばそれはウソになってしまうが、かと言って筆者の生き方を急にそういう風に切り替えることも難しい。

結局クルマ好きのクルマ選びとは、その人の人生や人生観が如実に現れる、言わば表現行為だということを改めて思った。ザガート155T/S TI-Zなんていう希少車を楽しみながら維持できる人生は、Kさんにこそふさわしいと思った次第。Kさんありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。どうか腰を大切に。

アユパークで写真パシャパシャ撮ってきたあれかな?
四角いクルマにブリフェンてカッコいいよねえ(*´ω`*)

リンク先もなかなか読み応えがありました。感謝です。
ザガートがこんなにイタリアンだとは知りませんでした(笑

>自作?ワンオフ?可能なのだろうか。
一応、可能です。
FRPの材料自体はホムセンに普通に売ってます。
でも1/1の模型を作れる技量と工具と時間が必要になるので規模によっては実質無理と言っていいレベル。
小物を作るとか、割れたFRPを修復する、程度なら現実的かな?
修復の場合、強度を出すために厚さが元の倍以上になると思われるのでそのスペースが確保できれば、だけど。
| alfa_manbow | 2018/09/17 10:57 AM |

◇alfa_manbow様
とは言えこいつは「あのザガートが作ったパーツ」という部分に多大な価値があるわけで。つくづく試乗コースの選定って難しいですね。クルマの性格を知らないと頓珍漢な道を走ることになってしまう…。

でも155、楽しかったです。2.0TS 5MTの個体があるなら所有してみたいです。プン太郎はそのままで(笑)。
| acatsuki-studio | 2018/09/17 1:18 PM |

>>acatsuki-studioさま
>プン太郎はそのままで(笑)。
YES!!(笑
いや、冗談抜きでオススメです。
普段使いの1台があれば、2台目以降はヤヴァイの選んでも安心ですよ!(笑
| alfa_manbow | 2018/09/17 3:11 PM |

◇alfa_manbow様
確かに155はヤヴァイですね。でも75とか勧められましたよ(笑)。メカニズムが単純だから壊れないし壊れてもすぐ直せるって。オレはGTVとかもいいと思います。
| acatsuki-studio | 2018/09/17 11:59 PM |

75!良いですね!
ジュリアがFRで復活するまではアルファロメオ最後の後輪駆動車でしたし、FIATに呑み込まれる前のアルファロメオ単独での最後の作品とも言えますしね。
私もES30とか憧れます。アレもザガートの作品ですね。

ところで、GTVって2000GTV?アルフェッタGTV?GTV6?
それとも、156の頃のクーペのGTV?
伝統の名なので候補がイロイロ(^_^;)
どれもこれも名車ですけどね!
| alfa_manbow | 2018/09/18 12:44 PM |

◇alfa_manbow様
あ、916系GTVってことです。スパイダーの屋根付き版。逆か(笑)。ES30?SZ??怖い(笑)。

| acatsuki-studio | 2018/09/18 2:13 PM |










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