クルマで行きます

クルマが好きなことにかけては人後に落ちない。
東北のABARTH PUNTO EVO乗りが綴る、クルマについてのあれこれ。
<< プン太郎で行く!下道・盛岡2018 | main | DS3に懺悔せよ >>
試乗記・異文化との能動的な交わり アルファロメオ 147
| 試乗レポート | 22:25 | comments(8) | trackbacks(0) |

かねてから不思議に思っていたことがある。アルファロメオ 147にかつて乗っていた人々のその褒めっぷりは異常ではないか。確かに大ヒットした車種ではあるが、それはいわゆるノスタルジーではないのか。愛によって目が曇っているのではないか。つい先日まで盲目的にMiToを愛していた筆者だからこそ、そんな風に思ってしまうのだ。

先日実施した「クルマで行きますオフ会#16〜西蔵王公園でまったり〜」の際に、あおさん所有の147 2.0TSに試乗させてもらうという僥倖を得た。2.0ツインスパークエンジンにセレスピードでRHDというザ・モスト・ポピュラーな組み合わせ。総走行距離は5.5万kmを超えているが、ノウハウ豊富なイデアルさんが対処アンド予防メンテを施した個体。「5.5万km?じゃあ次は○○がイカレるね!」とか「その次は▼▼(笑)!」などと外野は無責任に「147あるある」を連発するが、あおさん所有となってから数千kmをすでに走ってまったく問題なし。あおさん大満足の1台とのこと。同時期の同社のクルマ、156は筆者もそれなりに運転した経験がある。実に運転体験の濃密なクルマ。あれと比べてどうなんだという興味もある。棚からボタモチ的な試乗だが、何はともあれ147信望者の気持ちを筆者的に解き明かしたいと思う。
 


今回のオフ会、
本当に写真を撮っていないンすよ。
これがあおさんの147のエンジンルーム


ということで座ってみる。最低限のポジション調整をする。あおさんのポジションからはシートの前後を少し調整するだけですぐに決まった。ハンドルやペダル類のオフセット検分は正直忘れていた。筆者が鈍感なだけかもしれないが特に気にならなかった。レザーシートは鷹揚な造形でホールド感は高くない。ここで目の前の景色を眺めると、筆者には馴染みの「アルファロメオのコクピット」である。MiTo以降ややデザイン文法が変わってしまうわけだが、147、156、GT、加えて159、ブレラのインテリアデザインには強く強く憧れたものだ。あおさんの147の車内は相応に草臥れてはいるが、イタリア車特有のオーラはまったく色褪せていない

動き出してみる。助手席のあおさん、「とにかく(現代のクルマと比べると)走らないんで、ご注意を」。いくつかのコーナーを走り過ぎてみると、確かにボディはゆるい。挙動もある意味のんびりしている。しかし加藤店長やあおさんが愛を込めて語る「走らないですよ」は実感できない。いや全然走るし。速い遅いではなく、加速が(昨今の小排気量エンジン+ターボに比べれば)穏やかなのは確か。その意味では確かに速くはないと言える。ただそれは筆者が時々書く「必要充分の一割増し」ではないというだけで、得られる速度と旋回性能、制動性能は高い次元でバランスしていると思う。味わい深い。

それよりも相変わらずセレスピードに四苦八苦。度重なる500の試乗でフィアット版のデュアロジックは体得したと思っていたが、147のセレは、なんというか、遅い(笑)。牧歌的ですらある。試乗中セレは99%マニュアルモードで操作していたのだが、1速から2速へのシフトアップの待たされ具合は思わず「えっ?(まだ??)」と声が出る程遅い。つまりセレはコツコツとアップデートされていたのだ。この147よりもかつて試乗した159の方が、そして超初期型のリニューアル500の方が、そして最近のTwinAir500の方が確かに洗練されている。

ボディ全体のゆるさ、鷹揚なシート、牧歌的なセレの変速スピードなどが渾然一体となると、確かに現代の同格車と比べて「走らない」。しかしそれらを雑事と思わせるのがツインスパークエンジンである。こいつこそ現代の同格車が絶対に持ち得ない美点だ。そのうなりは、なるほど「官能的」と言える。3,000rpmより上に行くとテノールの雄叫びが高まっていく。こいつをもっと聴きたい!回すしかない!おりゃおりゃ!となるのは自然の摂理である。それは低燃費・低公害であることを唯一絶対解とするような昨今の風潮とは真逆のベクトルだが、自動車運転によって得られる根源的な悦び「自由自在感」や「人の能力を超えた移動速度」を濃厚に味わうことができる。147に乗ってタコメーターを見るのは、燃費優先で低回転を保っているかを気にするためではなく、エンジンの咆哮と適度な運動性能を味わうために高回転域を維持するためである。

走り出してから気がつくのだが、速度と回転、ニ眼メーターの針の動きが精密感に溢れ大変好ましい。「このメーターの針の動き、いいね!」と言ったら、あおさんにもalfa_manbowさんにも「そこ??」と突っ込まれた。しかしもはやVW ゴルフですら液晶画面にメーターの絵を映すご時世である。メーターは物理的に針が動いていてほしいし、その動きは濃厚精緻でいてほしい。

反面シフトパドルは気になった。147はのシフトパドルはステアリング一体型。筆者はこれが少し苦手だ。ハンドルを回しているうちにどっちがどっちだかわからなくなってしまうのだ。大きめのパドルがコラム固定式で備わっていてほしい。

結局セレには手間取ったが楽しい試乗だった。そして旧オーナーのベタ褒めの理由も垣間見えた。147が楽しい理由はふたつある。「能動的運転体験」と「異文化との濃厚な接触」だ。

「能動的運転体験」と言ったって運転はふつう能動的なものじゃないか!と思われる方が多いだろう。あおさんがおっしゃったように、147は現代のクルマと比べると走らないし曲がらないし止まらない。そこを運転手が補ってやる必要はある。つまり漫然と運転させてはもらえない。その点だけで比較すれば筆者の老母が乗るトヨタ パッソ(の1リッターの方)と変わらない。しかし147は補って走るとその努力に相応しいリターンがある。そのリターンが想定一割増しなのだ(笑)。「え?ちゃんと走らせるとこんなに楽しいの?」なのだ。動き出す、加速する、曲がるために速度を落とす、そして曲がる、旋回途中の正しいタイミングで再び加速させる、旋回を終えて直進に戻る、あるいは次の旋回に備える、適切に停車する。147が147らしく動作するには147が求めるように操ってやる必要がある。その許容幅は狭い。しかしその狭いスイートスポットにハマった時の挙動は痛快だし、機械という無機物と心が通いあう快感が確実に得られる。

もうひとつの「異文化との濃厚な接触」も重要だ。インテリア検分で書いた、静止状態・着座しただけで感じるオーラ。そして「能動的運転」を求めてくる機動。これらは大方の国産車とはまったく正反対のベクトルだ。視認性・操作性よりも収納ばかりに執心する設え、操作の安楽さと低燃費であることだけを追求し、可もなく不可もない機動。そういう自動車のオーナーが147を操ってみれば、五感のすべてで「こりゃ文化が違う」と思わずにいられないだろう。何を優先し何を切り捨てるのかという基準が、国産車のそれと(下手をしたら昨今の輸入車とも)まったく異なっている。せっかく輸入車に乗るのなら、異文化をなるべく強く意識したいと筆者は考える。その点147は百点満点だ。

プン太郎も漫然とは運転させてもらえないクルマではある。だがそれはもっとヒリヒリした世界というか、気軽にすごいところまで行けるが、しっかり運転しないと命の危険がありますよという緊張感が背景にしっかりある。幸か不幸か147はそういう緊張感はない。オーナーはきっとそういうところまで含めて惚れてしまうのだろう。あおさんありがとうございました。


直後にalfa_manbowさんのジュリエッタ QV(MY2015_TCT)を再び運転させていただいた。「時代が違う!(by 同乗されたあおさん談)」これに尽きる。TCTのシフトチェンジを間違ってホイールスピンさせてしまいました。すんません。

大変興味深く読ませていただきました。
私はニブチンで
何が良いか分からないケド楽しいよ!!
としか言えないのでとても参考になります。
私も156と147にダメ出しされて運転を覚えたなあと懐かしく思います。それまではクルマに合わせた操作とか考えてもいませんでしたね(^^ゞ

あ、当時はV6があったからツインスパークのエンジン音はそれほど……とか言いましたけど、156セレで高めの回転でシフトダウンしたときに回転合わせでフォンってあおりが入るときの音は好きでした。あの音を聞くために無駄にシフトダウンしたりしてましたね(笑
| alfa_manbow | 2018/06/01 11:22 PM |

◇alfa_manbow様
不遜な言い方ですが、プン太郎を体験して「速く走ろうと思えば、MiToよりも少ない労力で速く走れちゃうんだな、オレ」と思ったんです。それくらいプン太郎がそっち方面にフォーカスされているってことなんですけど、「あ、オレやれるわ」って思ったら、もう加速命!な車歴はこれで終わりでもいいかなと。だってこれ以上加速の良いクルマって思ったら、金額帯も相当上に行かざるを得ないですし。

それなら(プン太郎よりも遅くてもいいから)運転体験が濃密なクルマがいいなと思うんです。147はその典型例ですね。
| acatsuki-studio | 2018/06/01 11:59 PM |

147ってひと言で感想を述べると、「エキゾ」ですよね。
マーティン・デニーのヴァイブラフォンと同じ位エキゾ
チックだと思います。でも、マーティン・デニーはある
意味インチキですので、ルキノ・ヴィスコンティの映画
位エキゾチックにしておこうと思います。
私は飛行機が大キライなので、死ぬまで海外旅行に行く
ことはありませんが、147に乗り込んだとたん海外旅行
しているような錯覚をおぼえます。車としての出来は大
した事が無いけど、サイズ性能等がちょうど良いんだと
思います。
 このブログ最初に読んだのが、イデアル仙台の店舗内
でして、直前K店長様と147談義をしておりました(笑)。
| あお | 2018/06/02 10:11 PM |

◇あお様
ヴィスコンティの映画くらいエキゾティックかどうかは未見のためなんとも言えませんが、「シートに座れば海外旅行」というのは深く同意するものであります。そして、どうせ乗るならそういうクルマがいいなぁと強く思うものであります。

K店長にオーディオ取り付けのスケジューリングしなきゃ…。
| acatsuki-studio | 2018/06/02 11:22 PM |

ご指摘のような観点から、私の知人はより新世代のアルファから156に乗り替えて、「やっぱりこれだよ」と得心したようでした。
昔は良かった話になってしまうと厄介ですが、わからなくもないところが痛し痒しです。私の場合は、そういう観点だと前車だった405になりますね。濃厚な香り、と言いますか、饐えたような匂いがたまりませんでした(笑)
| little red sherbet | 2018/06/03 9:54 PM |

◇little red sherbet様
>>饐えたような匂いがたまりませんでした(笑)
論点がずれているような気がしますが、わかってしまうような(笑)。でも156もやっぱりわかりますよ。オレ、止めませんよ、友人が乗るって言っても。あ、でも年齢や経験にもよるかな。免許取った!156欲しい!という人は止めるかも(笑)。

405、505はもはや異次元です、自分には(笑)。406ならわかる。
| acatsuki-studio | 2018/06/04 5:59 PM |

うちの弟が306に乗ってましたが、あれも、おフランスの雰囲気が濃厚だったように記憶しています。
あの世代かその次の世代あたりが分水嶺で、フランスやイタリアのクルマからヨーロッパ(ドイツ?)のクルマに変わっていってしまっているように感じます。まだそれぞれの個性が失われているわけではありませんが、ちと寂しいですね。
| alfa_manbow | 2018/06/05 12:24 PM |

◇alfa_manbow様
307SWからヘンタイに入道したわたくしとしては、その分水嶺を見逃した感満載なのです。一種のコンプレックスです。で、ご指摘の傾向、わたしもそう思います。

●グローバル化が行き渡りすぎて商品の魅力が減じ、地域色を色濃くした方向に舵を切り直す(50年後か100年後かわかりませんが)。

●電気自動車や自動運転など、極端なコモディティ化がどんどん進み、そもそも自動車に趣味の情念を注ぎ込む余地がなくなる。

のどちらかだと思うのですが、少なくとも我々が生きている間は内燃機関は滅びない…と楽観しています。
| acatsuki-studio | 2018/06/05 12:44 PM |










http://withcar.jugem.jp/trackback/1532
+ PROFILE
+ accesses since Dec.2009
+ RECENT COMMENTS
+ 「クルマで行きます」用語集
■プン太郎■
筆者の愛車ABARTH PUNTO EVOのこと。
ブログ本文に「プントエヴォ」と
フルネームで書くと煩わしいので命名。

■顧問■
筆者の友人太郎君のこと。
エンスージアストにしてドラマー。
いろんな意味で筆者の指南役にして
このブログの技術顧問(と勝手に思っている)

■朝練&夜活■
早朝に走りに行くのが朝練。
夜に走りに行くのが夜活(やかつ)。
夜の走行活動の略。
どちらもひとりであてもなく走る。
つまりひたすらクルマとの対話を楽しむ。

■S店長■
筆者のMiTo購入時の担当営業さん。
現在VOLVO仙台泉店の店長。
筆者のクルマ人生を変えた人。
一言で言えばカーガイ。

■EDO■
Eat and Drink Organizationの略。
親友2名と行うツーリング企画の名。
「移動に有料道路は使わない」
「同乗者無しでひとり1台」
「うまいものを食べ、飲む」が掟。

■K店長■
クライスラー・ジープ・ダッジ仙台の店長。
TCT版リリースを機に滑り込みで
MiTo1.4TSportを購入したカーガイ。
カーオーディオ地獄サバイバー。
+ CATEGORIES
+ LINKS
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< June 2018 >>
+ SELECTED ENTRIES
+ RECENT TRACKBACK
+ ARCHIVES
+ MOBILE
qrcode
+ OTHERS
このページの先頭へ