プン太郎、運転席の座面高を上げたら世界が変わった。プン太郎との一体感が数割増しになった。
筆者のスポーツカーへの憧憬は強い(笑)。そしてスポーツカーの座面はめっちゃ低くあるべきだと信じて疑わない。ところが前愛車のMiToも現主力戦闘機のプン太郎も、元を正せば実用車であるフィアット グランデプントである。スポーツカー的な低着座位置など夢のまた夢なのだった。それでもせめてもの意地というか、歴代の所有車の運転席座面高は最低位置がデフォルトだった。座面高調整機構を使ったことがなかった。※
洋の東西を問わず、多くのクルマの座面高調整は座面前部を基点として後部(お尻側)だけが上下する。MiTo比ホールド性が高いプン太郎のシートは、お尻の高さを最低高にすると、腰はもちろん膝裏付近のホールドも強い。シートのホールド性の高さは、プン太郎を買ってニンマリしたいくつかのポイントのうちのひとつなのだが、そういった「スポーツカードライビングポジション幻想」や「MiToよりもイイぜ、ウシシ」みたいなものを取り払い、座面高を最低に合わせて座った状態は、必要以上に高いシート前部を膝で乗り越えていると言える。つまり結果的に、お尻側の1点で体重を支え、膝裏はシート最前部に引っかかっているような状態なのだ。
さて何度も書いて恐縮だが、例の長距離ツーリング時に発生する右膝痛は結局解決していない。
筆者の場合一回のツーリングで400km以上走ったら長距離である。件の右膝痛は300kmくらいで感じることもあるし、場合によっては200km程度でも気配を感じることがある。それなりに自家用車を乗り継いできたが、クルマ運転の楽しさに覚醒し、ひとりで400kmも走るようになれたのはひとえにMiToの楽しさゆえである。だから右膝痛はMiToに乗るようになってから自覚し、MiToの運転席周りの構造由来だと思っていた。なぜかと言うと、RHDのMiTo 1.4T Sportはハンドルとペダルのオフセットがそれなりにあり、運転中は常に下半身を捩って運転しているようなものだからだ。心ならずMiToから降りることになった時、次期愛車の導入条件としてLHDを最優先に掲げたのは、ストレスのない運転姿勢を体験したかったからであり、右膝痛解消を目論んでのことだった。
にも関わらず、LHDプン太郎の運転席環境を以てしても筆者の右膝痛は現れた。MiToのRHD環境のせいではなかったのだ。謂れ無き誹謗中傷を繰り返して、MiToと今もMiToを愛する多くのオーナーたちに申し訳ない。すみません、筆者の勘違いでした。それにしてもだ。とにかく痛みとして発現する以上、現実的に膝への負荷があるとしか思えない。プン太郎のペダル配置に問題がない以上、違う理由があるはずだ。
ということで冒頭に戻る。考えられる対策は一応全て試してみるか…と、ある日あまり期待もせず座面高を上げてみた。シート形状による血流の阻害が原因かもしれないと考えたのだ。
驚いた。プン太郎から得られる情報が俄然増えたのだ。お尻部分が上げられたことで、お尻から太もも、膝裏の全面がシートに均等に乗ることになった。ホールド性に優れていると思っていたプン太郎のシートだったが、底部の圧が均等にかかるようになった結果、お尻から太もも脇、膝脇までにかけての左右サポートがさらに強く効くようになった。Cペダルを踏み切ることも楽になった。するとシフトノブの操作も左足につられて軽快になったように感じられる。
同時に得心したのはシート背面のランバーサポートである。座面調整の前は寝かせぎみにしたり立てぎみにしたりと、背面もなかなかピタリとした角度を割り出せなかった。ランバーサポートの位置がやや高いことと、効きがやや強く、しっくり来なかった。ところが座面高を上げたことでランバーサポート位置がぴたりと決まり、サポート箇所が決まると実はサポート量も適切なことが体感できた。しかも一体型ヘッドレストとの距離も付かず離れつの絶妙な距離へ。
つまり単に筆者の運転姿勢の作り方がヘタクソなだけだった。
この運転姿勢を見つけてからまだ長距離を走れていない。唯一のサンプルが先日の喜多方朝ラーツアー350km。確かにいつもの膝痛は起こらなかったが、この時の障害はむしろ眠気だったので、きちんとした検証になっていたのかどうかアヤシイ。膝痛が解消されればそれに越したことはないが、この一体感向上だけで充分お釣りがくる。たかだか数センチの座面高調整なのだが、実に奥が深い…。
※座面高調整機構を使ったことがなかった
筆者が乗っていたMiToは、座面高を上げてもいつの間にか元に戻っているという不思議な機能が付いていた。なので座面高を上げること自体を諦めていた(笑)。