クルマで行きます

クルマが好きなことにかけては人後に落ちない。
東北のABARTH PUNTO EVO乗りが綴る、クルマについてのあれこれ。
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【試乗記】ルノー メガーヌR.S.「えぇ、もう、これで」
| 試乗レポート | 10:58 | comments(10) |

筆者が愛読していた自動車雑誌AUTOCAR JAPAN(日本版は現在休刊しwebのみ)の英国本国編集部は、英国フォードとルノーびいきだった。あるドイツ製スポーツカーとルノースポール(本当はずばりなメーカーと車種が書いてある)の対決評価記事で「ドイツ製スポーツカーがエクセルシートと定規から作られている印象なのに対し、ルノースポールはドライビングシューズとお尻の感覚をもとに作られている印象がある」という意味の一文があった。筆者はこういうのにシビレるタイプである。

筆者は「スポーツカー」とは「観念」の世界だと思っている。作り手の「こうあるべきだ」が存分に反映されている必要があって、その考えに共鳴できるかどうか。観念と観念のすり合わせで納得できれば買う(多額のお金が必要だが)。その意味ではルノーでもトヨタでも共鳴さえできれば良いわけだが、「ドライビングシューズとお尻の感覚をもとにチューニング」する観念には積極的に共鳴したい。特にMiTo乗りである筆者にとって、ワンランク上のセグメントに君臨するメガーヌR.S.は現行モデルがデビューした時から垂涎の的であった。

2017年8月に開催された北日本MiTo会 MiTo Meeting 2017に参加してくださった関東在住のしまのすけさん。LHDのMiTo QVからルノー メガーヌR.S.への乗り換えを実現されていた。「うわー!いーなー!!」とよだれを垂らしていたら「乗ってみていいですよ!」と勧めてくださった。これまでイデアルさんの中古車売り場に並んでいるメガーヌR.S.のコクピットには何度も座ってきたが、動かすのは初めてのことである。厚かましくも試乗させていただいた。メガーヌR.S.を今からでも買おうと思っている人は、以下読まないでいただきたい。筆者の購入時にライバルが増えて困るいやー、メガーヌ最低!こんなの乗る人の気が知れない。最悪。以上、メガーヌR.S.を買おうと思っている方、さ・よ・お・な・ら。ぶっ!
 


これが!しまのすけさんのメガーヌR.S.だっ!


以下メガーヌR.S.に興味の無い人に向けて書く。着座してドライビングポジションは調整せず、しまのすけさんのポジションのままで走りだした。やっぱり人様のポジションをあれこれ弄るのは(ちょい乗りだし)気が引ける。しかし一応着座環境についてレポートしておく。まずイスとハンドルの関係は素晴らしい。ハンドルに刻まれた黄色いセンタートリムは伊達じゃない。メジャーなどを使っての検分ではないが、少なくともこの点は問題ない。ABペダルレイアウトは、やや左に寄っていた。敢えて理想のAペダル位置を探ってみたが、タイヤハウスに盛大に邪魔されている感じもない。もうちょっと右に寄せようと思えばできたと思われるが、深遠なチューニングの結果なのか機構的制約の産物なのかは判明せず。少なくとも気に障るほどのことはない。

フロント窓外を見ると、ボンネット前端は大きく落ち込んでいてまったく目視できず。このクルマでコンビニの駐車場に前から停める人はいないと思うので、これも大きな瑕疵ではない。本当はボンネット前端が把握できなくても不安に思わない理由は別にある。後述する。目線を移すとメータークラスターやダッシュボードの位置が予想よりも高い位置に見え、ボンネット前端の件と併せて、身長170cmの筆者でもやや囲まれ感のある環境ではある。巷で言われる後方視界は、なるほど狭い(笑)。だが少し走って引き返す時、駐車場に入ってわざと白線内に後進して停めてみたのだが、意外や苦労しなかった。ドライバーの目線から、クルマの向き(どれくらいナナメになっているか、真っすぐか)が把握しやすい。フロントドアガラスのラインの切り方がうまいのかもしれない。同じフランス車でも家人のシトロエン DS3はドアガラスの下端が前から後ろに向かって上がるように傾斜しているせいか、ドアを規準にすると真っすぐ後進しづらいのだ。ドライバーの感覚って繊細かつ微妙なのね…。おまけにメガーヌR.S.、どういうわけかタイヤの位置がとても把握しやすいのである。これは数メートル走らせただけでひしひしとわかる。ボンネット前端が把握できなくても不安を感じない理由はこれだ。駐車スペースに後進で停める1回の動作でこれらのことを体感できることは稀である。つまり着座環境全体ではネガティブな気持ちは一片も生まれない。

続いて走り出してどうだったのか。6MTとエンジン性能のバランスは気持ちいい。シフトノブの動きも格段にクイックではないものの、充分に「飛ばす気になる」動作。クラッチミートのタイミングもヘンなクセはなく、Cペダルのチューニングは手前側でミートするもので、MiToから乗り換えても違和感が無い。MiToと比べる視点でもうひとつ加えればシフトノブがやや短く、それだけで御の字だ。残念ながら今回のちょい乗り試乗ではエンジン(2リットル直列4気筒DOHC16バルブターボ)の真価を体感することはできなかったが、あっという間に免許に優しくない領域に突入してしまう、とだけ書いておく。

驚いたのはハンドルの重さ。電子制御パワーステアリングの抵抗感。もちろん驚くのは走り出しの一瞬のことで、速度が乗れば落ち着く。むしろコクのある動きである。しまのすけさんの個体は18インチホイールに確かミシュランパイロットを組み合わせていたが、メガーヌR.S.の純正オプションには19インチホイールもあるそうで、そんなの履かせたら一体どうなるんだ?と心配になるほどの抵抗感である。筆者が知る限りではあおさんのプジョー 206SW S16の油圧モノよりも、ヘタしたらMiToのdモードよりも重い。その分当然のことながら直進性は素晴らしく、残念ながらそれを堪能できるだけの直進路は無かったのだが、充分に想像できた。このハンドルの重さから逆説的に考えると、MiToを含めた昨今の欧州車の電制パワステが軽過ぎるのかもしれない。タイヤの位置の把握しやすさと合わせて、このハンドルの抵抗感はもしかしたらメガーヌR.S.の最大の美点かもしれない。試乗コースは羽鳥湖湖畔のザラザラとした平坦なクネクネ道。MiToのお手軽電制パワステに慣れ切った筆者では、ハンドルを切るのに「オラァ!」的な気合いがいるのだった。

しかし前述の車両情報やタイヤ位置の把握しやすさが、こういう道でものすごく生きてくる。横幅は1800mmを超えている(1,850mm)にも関わらず、初めての運転で車線のセンターを(コーナリングの最中でも)ビシッと維持できる。コクのあるハンドル操作とAペダルの微妙なコントロールと併せて、ラインはどうにでもコントロールできる感覚がある。

ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ。

なんですか?このゴキゲン具合は。

めっっっっっっちゃ楽しいんですけど!

かつてイデアルのK店長がメガーヌR.S.を評して「乗れば乗るほどボディを小さく感じる」とおっしゃっていたが、なるほどなるほど。さすがにこの試乗だけでボディを小さく感じることはできなかったが、外観を裏切る車両の把握のしやすさはビンビンにわかる。その車両感覚の感知を助けているのがボディの高剛性とセミバケットシートだ。メガーヌR.S.の剛性感は、右ドアの合わせが微妙な感じになるほどグズグズに草臥れてきた我がMiToとは比ぶべくもない異次元の硬さだ。かつてhoshinashiさんとalfa_manbowさんの年代の異なるジュリエッタで経験した剛性感ともまた違う。メガーヌR.S.と比較すれば両ジュリエッタはまだ「しなっている」。腰から下(ドアから下)はみしりとも言わないガッチリ具合。ボディだけではなく足周りの取り付けからビシッと微動だにしない感覚が味わえる。半面ドアから上、ドライバーの肩から上に関しては、変に突っ張る感じはなく、爽やかに入力が逃げていく。ワインディングを全力で駆け登ったり駆け降りたり、あるいはサーキットに持ち込んで限界走行をすれば、また印象は変わるのかもしれない。繰り返すがアップダウンのないややざらついたクネクネ道での試乗だから、まったく涼しい顔である。こういうのをキャパが広いというのだろうか。

そしてそれらの感触を余さず伝えてくるのがセミバケットシート。まさにお尻で得る情報が溢れんばかりで、もっとペースを上げても左右のホールドは微塵も揺るがないだろう。沢村慎太郎のQ&A本に「速く走りたいならホールドの良いシートに替えるのが一番の近道」と書かれていたが、これは筆者も納得の回答である。自分の身体感覚とクルマがしっかりシンクロしている実感がある。レカロに換装したalfa_manbowさんの愛車2台を試乗させていただいた時もそれを実感したが、メガーヌR.S.でさらに上書きすることになった。

OFF会会場に戻り、あおさんに感想を訊かれた。

「どうでした?」
「えぇ、もう、これで」

自分のドライビングスキルを、今よりも高いところへ押し上げたいと考えてMiToから乗り換えるなら、こういうクルマがいい。しまのすけさん、ありがとうございました。

どう見ても取り回しが悪そうなクルマ
という印象しかないので、
「タイヤの位置がとても把握しやすい」
というのはちょっと意外でした。乗って
みたいと感じる反面、私には「高嶺の花」
って感じです。
| あお | 2017/08/23 12:38 PM |

◇あお様
私も意外でした。でもあの短時間の試乗では「ずいぶんボディの前の方に座ってるなぁ」という印象もありました。後ろが長い感じ。もっと走れば変わると思いますけど。「高嶺の花」は私も同じです(笑)。
| acatsuki-studio | 2017/08/23 1:07 PM |

メガーヌRS 日本で扱ってるのはサーキット仕様の脚周りだと聞いてたので、てっきりホンダのタイプR系の乗り心地ガン無視タイプかと(笑

3年前ぐらいに早朝の高速でメガーヌRSと追いかけっこ(〇80km/h以上)したことありますが、カーブを速度落とさず挙動に乱れが無いままに曲がって行っちゃうんですよね、コッチはギリギリだったってのに…

基礎が大衆車なMitoと比べる時点で間違ってるとは思いますが、フィーリングを売りにするメーカーとガチのレースメーカーとの差を感じました
アレで電子制御はほぼ無しってのが凄いですよね
| ヴェスペ | 2017/08/23 4:32 PM |

◇ヴェスペ様
シャシーカップとトロフィーカップでしたっけ?←てきとー

ちなみに乗り心地はダウンサスを仕込んだMiToよりも数段良かったです(泣笑)。あれ、いいですよ。純正を維持してるだけでめっちゃいいはず。
| acatsuki-studio | 2017/08/23 10:00 PM |

メガーヌRS いいなぁと思ってましたが車幅1850mmがネックで家の駐車場には入庫不可確定(汗)
教えていただき有り難きお言葉(笑)
嫁のフォレスターが1795mmなのでギリ1830mmが限界っす!
| トーマス | 2017/08/23 11:42 PM |

◇トーマス様
わが家も1850は入庫はできても降りられないので、リアハッチから出入りすることにします。
| acatsuki-studio | 2017/08/24 8:28 AM |

1850mmはちょっと広いですね
普段通る道がそんなに広くない所なので、1800mmが限界

最近 嫁さんがルノー/トゥインゴに興味を示しているので、ついでにメガーヌにも試乗してみたいと思います
| ヴェスペ | 2017/08/24 11:37 PM |

◇ヴェスペ様
現行メガーヌR.S.、ファイナルエディションってヴァージョンですが、もはや予約で売り切れ(かそれに近い状態)と聞きました。そんな状態で試乗車、少なくともルノー仙台では用意されてないと思いますが(笑)、そんなことよりトィンゴですよ!あっちの方に興味がありますね。RR。
| acatsuki-studio | 2017/08/25 7:50 AM |

いやはや、お会いしたことに満足してすっかりコメント忘れてました(笑)

先日はありがとうございました&#8252;

評価する能力のない私にかわり解説ありがとうございます。

こないだ最終モデルのメガーヌに乗りましたがオーリンズのダンパーついてて全てにおいてバージョンアップされてましたよ。
| しまの助 | 2017/08/27 2:39 PM |

◇しまの助様
改めて先日はありがとうございました。厚かましく試乗させていただき本当に感謝です。まだ書き落としている要素もあると思います。特にどうしてタイヤ位置が把握しやすいのか、あの短時間では感じることができませんでした。あまりの乗りやすさに夢中になってしまいました。

オーリンズですか、そうですか、よさそうですね、そうですね。
| acatsuki-studio | 2017/08/27 9:20 PM |










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■プン太郎■
筆者の愛車ABARTH PUNTO EVOのこと。
ブログ本文に「プントエヴォ」と
フルネームで書くと煩わしいので命名。

■R、K■
R=国道(Route **)
K=県道(Kendo **)
のこと

■S店長■
筆者のMiTo購入時の担当営業さん。
現在VOLVO仙台泉店の店長。
筆者のクルマ人生を変えた人。
一言で言えばカーガイ。

■K店長■
クライスラー・ジープ・ダッジ仙台の店長。
TCT版リリースを機に滑り込みで
MiTo1.4TSportを購入したカーガイ。
カーオーディオ地獄サバイバー。

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筆者の友人太郎君のこと。
エンスージアストにしてドラマー。
いろんな意味で筆者の指南役にして
このブログの技術顧問(と勝手に思っている)

■朝練&夜活■
早朝に走りに行くのが朝練。
夜に走りに行くのが夜活(やかつ)。
夜の走行活動の略。
どちらもひとりであてもなく走る。
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■EDO■
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親友2名と行うツーリング企画の名。
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