少し時間が経ってしまったが、2018年12月のプン太郎車検時にあてがわれた代車ホンダ フィット(初代)について書いてみたい。と言ってもすでに3代も前の車種についてのバイヤーズガイドもどきを書いても誰かの役に立つとも思えないし、新車時とは変質してしまった乗り心地のことをあれこれ書かれてもホンダも迷惑だろう。そこで「フィットに乗って考えたこと」を中心に書いてみたい。というのもこの初代フィットに乗って、少なからず驚くことがあったのだ。
このフィットを借り受けていた期間中、生業が最高潮に忙しかった上にいろいろあって、家人のシトロエン DS3で移動することが多かった。あれよあれよとプン太郎受け取り当日になってしまい、フィットの外観写真も車検証データもメモし忘れた。いつもの試乗記フォーマットでないことをお詫びする。今回の個体の総走行距離数は141,200kmくらいだった。
さて筆者はこれまでの人生で何台かホンダの製品に乗ったことがある。実際に所有したことは人生最初のマイカーとなったホンダ シティターボだけだが、友人Mの家グルマだったコンチェルト、アコード、MiTo整備中の代車としてイデアルさんからあてがわれたThat's、ストリーム、友人@のアコードワゴン、助手席に乗せてもらった友人Aのエアウェイブ、S店長に試乗させてもらったシビックType Rユーロ。しかも仕事で乗る社用車は初代ステップワゴンである。80年代から10年代まで、約30年に渡るホンダ車両の変遷(笑)を点描することくらいはできそうだ。
試乗記・HONDA That's これで満足できる人
【試乗記】ホンダ ストリーム(初代)・どうして楽しいの?
もっとも上掲試乗記以外の個体については、ほとんどが今ほど自動車にのめり込む前の試乗体験なので、1台ごとのあれこれを書けるほどの記憶はない。しかしそれでもそういう体験を基準として筆者のホンダ車両への印象と理解をまとめるとこうなる。
特殊モデルは素晴らしいのに、素のモデルの造りは粗い。
筆者がこれまで能動的に体験してきたホンダ車は、文才がないから様々に言葉を使って長文の試乗記を書いているが、一言で言えば「粗い」。走る・曲がる・止まるの三要素のバランスが悪い。走るけど曲がらないとか、「〜けど〜ない。」という印象ばかりである。もちろん現行アコードワゴン(「アメ車みたいなボルボ車」みたいだった)やシビックType Rユーロ(加速・旋回・制動のすべてが高次元でバランス)のような積極的に乗りたいモデルもあるにはあるのだが。しかし一般の、別にクルマなんか安けりゃ何でも良いという風情のユーザーが買うであろうモデルの出来が粗いのが残念すぎる。軽自動車やミニバンと言った中庸・王道ど真ん中モデルの出来が粗いことは、メーカーにとってもユーザーにとっても残念なことだ。
と、今回のフィットに乗るまでは思っていた。だが違った。今回運転できた初代フィットはホンダの中では両極端な世界の中間と言える乗り味だった。中庸の権化トヨタのB/Cセグメントに比べればまだ粗いとは思うが、加速・旋回・制動のバランスは正三角形に近いと言える。例え性能が低くても、その諸機能が正三角形でバランスしていれば運転手は自信を持って運転できる。そういうホンダのBセグメントモデルに初めて出会った気がする。
運転席のながめ
三眼式メーターのデザインは好ましい
日本車だけどペダルオフセットはある
(ハンドルとシートのセンターは合っている)
もちろん完璧ではなかった。セルフアライニングトルクの希薄なパワステは鬱陶しかったし、CVTの挙動は明らかにおかしかった。だが冒頭に書いたとおり、これは14万km以上走っている個体なのだ。むしろ14万km走ってもまだ「バランスはそれなりに良い」と思える耐久性を特筆すべきだろう。
なによりも「ホンダの中庸」であることの方が重要だ。40-100km/hの範囲で身体や神経に負担をかけないことは、ある意味で「性能が良い」と言っても良い。ちなみにドライビングポジションを決めた状態で後部座席にも座ってみたが、座面長こそ足りないが、足の置き場所、背面による背中のサポート、バックレストの高さとトヨタ カローラよりも真っ当な環境だった。実際このフィットはカローラの「34年連続通年新車売り上げ1位達成」を阻止した記念碑的モデルでもあるのだった。
高くてめちゃくちゃ良いか、安くてどーしよーもないのしか出せないと思っていたホンダが、こんな実直なモデルを出していたことに驚いた次第。街中でフィットを見かけると温かい目で見られるようになったと、もっぱらの評判です。