筆者がプン太郎と出会ったのは2017年の暮であり、すでにスタッドレスタイヤを装着していた。来歴を訊くと仙台よりも北の土地で走ってきた個体だという。さもありなん。スタッドレスタイヤを新調しなくて済むのは幸運である(for お財布)。熟慮の末、そのスタッドレスタイヤは新しく誂える社外ホイールに履かせることとし、ほぼ新品のノーマルタイヤはアバルト純正ホイールに履かせることとした。
そんなわけで前オーナーチョイスのYOKOHAMA ice Guard iG50を履いての乗り出しとなったのだが、このice Guard、どうも筆者の好みに合わない。具体的には横方向の負荷に滅法弱いのだ。単にウェットな路面ですらグリップが怪しくなる。例えば冬の濡れた路面の交差点を右折しようとする。右折レーンに進入していくと、ラッキーなことに対向車線に直進車両はいない。ファストインファストアウト案件である。ところがその交差点の右折先は右折レーンからやや低くなっており、結果的にゆるい下り坂を右折しながら進ことになったとする。こんな場面でice Guardはあっさりアウトにずずずっと膨らむのである。
ここまで読んだ読者諸氏は「それ、もう山がすり減ってんでしょ?」、当然そう思っておられるだろう。いやしかし固体吟味の際に「おー、まだ山たっぷり残ってるねー、これ。ラッキー!」という検分をしているのである。
ま、確かに2012年製の個体ではある。6年オチ(笑)。それはそれとして、タイヤの能力に対して速度が出過ぎていると言われればそれまでだし、その辺を見切るのも安全運転の要諦ではある。筆者の能力不足を棚に上げて書き進めるが、これまで体験してきたピレリやミシュランなどの欧州ブランドスタッドレスタイヤとは明らかに挙動が異なっていて、やや戸惑っている。ヨコハマはどうもベタ雪環境の直進急制動対応に特化しているようだ。その特性は中途半端な雪国・仙台の冬の道路環境には向いているとは言える。※ 言えるのだが…。
もうちょっと突っ込んだ想像をすると、国産大手タイヤメーカーである横浜ゴムは「軽自動車を筆頭とした国産実用車の足周りはあまり横方向に踏ん張らないのだから、国内流通のスタッドレスタイヤの特性はこれでいい」と考えているのかもしれない。実際に踏ん張らないのかどうかは筆者は未体験・未検証だが(すんません)。ただ馴染みのガススタンド店員氏の「ヨコハマはーそうですねー(笑)、買った年は良いんですけどー(笑)」という証言もある。まぁとにかくそれは筆者の想像+伝聞でしかないが、プン太郎の挙動を受け止め切れないice Guardという組み合わせで「ずずずっ」を経験したことで、逆説的にプン太郎の足周りのチューニングについて思いを巡らせるようになった。
プン太郎の足周りのチューニングは、一般的には「硬い」と評されるレベルだと思う。動かない硬さではなく素早く動くことで緩衝しているが、ウェット路面ではその締め上げ具合が「突っ張る」挙動になり、タイヤが世話し切れなくなっている可能性はゼロではない。旋回時の(前後方向の)中心は太ももか膝裏あたり、つまり前よりではある。「ずずずっ」も最初に逃げるのは前だ。しかしそうなると、実はリアはけっこう粘っていると言えるのではないか。※※ 「
リアも強いFF」と言えるのではないか。内科小児科外科。
そんなプン太郎だから、タイヤも横方向の入力に強いものの方が合うように思う。MiToもそうだったけれど、どんなモデルであれアバルトのクルマでコーナーに進入する時、ドライバーの胸に去来するのは「
よっしゃ!どれだけスムースにこのコーナーを処理できるか、いざ試さん!」という思いであろう。言い換えればそのクルマのコーナリング性能を、マージンぎりぎりまで使ってみたい!という欲望である。そのマージンがタイヤの能力のせいで目減りするのは、すごく損をしている気分になる。
アシの仕立てとタイヤの性格(性能)がマッチしている状態が気持ちよいことは、感覚的に理解できる。例えばミシュランのスタッドレスタイヤのオンロード性能が高いという評価も、横方向の踏ん張りもある程度保証するあたりが、その理由なのではないかと想像する次第である。
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ビルの谷間や郊外の団地の一部などの終日日陰になる部分でもない限り、仙台でアイスバーンを体験することは少ない。だからベタ雪環境に照準を当てて開発されたタイヤにも、それはそれで一理あると思う。
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特にMiTo/プントエヴォは、FF車にしてはリアが粘る傾向が強いように思う。で、設計意図として粘る結果、グリップする/しないはタイヤ依存性が高くなるのでは?そうなるとタイヤの選択はより重要になるのかもしれない。まぁ筆者の勘違い・思い込みの可能性も高いが。