MiToのオーディオヘッドユニットを新調した。carrozzeria(Pioneer) DEH-970である。
MiToの購入時、筆者も人並みにナビを導入した。carrozzeria AVIC-HRZ088というパイオニアのミッドレンジの製品で、これはディーラーオプションの、いわば半純正品だった。しかし2014年2度目の車検時にこれを取り外した。ナビを使う機会は筆者の場合年に数回程度。その割に視界の端の方でチラチラとマップが映っているが鬱陶しい。ナビ使用時以外は画面をオフにしていたのだが、そうなると「そもそもこの巨大な黒いスクリーンはなんなのだ??」という気持ちになるのもムベナルカナ。
しかしナビ取り外しの最大の理由はラインアウト端子が無かったことだ。2014年の車検時に第一次オーディオ改造を実施し外部アンプを導入したのだが、そのアンプに出力できなかったのだ。「うっそだ〜。ラインアウト端子を積んでないカーオーディオユニットなんて、あるわけないじゃ〜ん」と多くの方が思うだろうが、これは本当である。厳密に言えばラインアウトはあるにはあったのだが、専用DSPユニット用のもので、流れる信号も特殊なものだった(アンプにつないでみたけど音は鳴らず)。なるべくナチュラルに信号を通すことを最優先した計画だったので「こりゃ使えん!」となったのだ。そこで急きょリリーフ役で登場したのがALPINE CDE-9871Ji。これは家人がフィアット プントに積んでいたもので、シトロエン DS3に乗り換えた際に死蔵されていたもの。
ALPINE CDE-9871Ji
CDE-9871Jiは安物だが、充分役割を果たしてくれていた。とにかくiPodをデジタル接続できてラインアウト端子が積んであればなんでもいい!のココロである。しかしこれもダメだった。EQの調整周波数が若干的外れだったことはまぁ許容できる。致命的だったのはiPodの充電ができないことだった。いわゆる「MADE for iPod」の第一世代機。まだ規格にばらつきもあったのだろう。だから馬鹿馬鹿しいことに、2〜3日に1回は車載専用iPod Touchを取り外しては家で充電していたのだ。つい先日、再生中にiPodが電池切れで沈黙し、とうとうぶち切れた次第である。
carrozzeria DEH-970
24,948円
購入はamazonから。定価よりも約1万円ほど安かった。取り付けは自分で。それでも30分くらいかかったろうか。基本的にはポン付けだから、ケーブルを外して挿しなおすだけである。気付いた点を箇条書きにする。
◎iPodに充電できる
今回の最大の目玉機能である。とほほ。エンジンをかける時に「まだバッテリー残ってるかな?」とiPod Touchの画面を確認しなくてもよくなった。めでたい。
◎ステアリングハンドルコントローラーが有効化された
ALPINEでは完全に無視されていたハンドルについているオーディオコントロールスイッチが突然有効になった。やっぱりこれは楽だし、安全運転にも若干の寄与があると思う。ただソース切り替えスイッチの隣にあるカーソルスイッチ(右手側のスイッチ)がユニットのどの機能に割り振られているのかよくわからない(笑)。
◎ディスプレイに過不足無い情報が表示される
CDE-9871Jiの表示機能は日本語対応しておらず、日本語曲だと実に味気なく「NO SUPPORT」表示されるだけだった。DEH-970は曲名・アーティスト名・アルバム名を3行で表示してくれる。若い頃聴きまくった音源では必要ないが、最近買ったCDやDL購入した音源では重宝する。
メリットはこれくらいだった。むしろ期待していたが思ったほどではなかった機能もある。
▲タイムアライメント機能
任意の点(通常は運転席のヘッドレスト)を基準として、左右前後のスピーカーの発音からマイクまで音波が到達するまでの時間差を測定して平均化してくれるこの機能、実はけっこう期待していたのだが、結論から言えば筆者には不要な機能だった。もっともこれは我がMiToのオーディオ環境特有の事情だろう。筆者のMiToはドアスピーカーをコアキシャルスピーカー(ローミッドとツイーターが一体になっているスピーカー)に換装しており、Aピラーのツイーターやリアスピーカーはすべて鳴らさないようにセッティングしている。簡単に言えば大きめのラジカセに顔をくっつけて聴いているようなもので、その意味では確かに音像のセンターはやや運転席側に寄っている。だがこの状態で音像のセンターを左(助手席側)に移しても、助手席に誰かが座るととたんにバランスが悪くなる。そんなわけで通常はオーディオユニット内では左右バランスは調整せず、心持ち右に寄った状態で聴いている。タイムアライメント機能はそのバランスを厳密に取ってくれると思っていたのだが、むしろ右に寄るという不思議な結果になり、速攻でOFFった。
左ドアスピーカーに取り付けたFOCAL 165CVX。
スピーカー中央の銀色の突起がツイーター
▲イコライザー
12バンドのグラフィックイコライザー!と聞けば心躍るが、意外や効きは大した事なかった…。「効きが大した事ない」も一長一短で、急激な変化を好まないユーザーもいるだろう。筆者はなるべくピュアな信号を聴きたいクチ、つまり「ちょっとした補正ができればいい」人なので、やいやい言う程のことでもないのだが。例によって200〜500Hzを若干カットし、80Hzよりも下と8kHz〜20kHzをブーストしてデフォルトとしてみた。こうするとスーパースプリントのエグゾーストノイズとなんとか渡り合える。
全体的な音質については可もなく不可もなく…である。ALPINE CDE-9871Jiと比べれば、DEH-970の値段は約3倍であるにも関わらず劇的な音質向上はない。そもそも1DINサイズのオーディオコントロールユニットはもはや市場では風前の灯である。そもそもモノが無いのだ。回路を単純にして、その代わり電源やD/Aコンバータなどの重要なパーツだけはきちんとしたものを使って、モバイルOSとの親和性を高くしてくれればそれで充分なのだが、そういうユニットは国内外を問わず少ない。もちろん利益率は2DINのナビの方が高いだろうことは想像がつく。となれば商品開発がそちら優先になるのもやむを得ないこともわかる。そもそもノイズまみれ、かつ吸音材の塊のような自動車内という特殊な環境で、オーディオに良質な音質を求めること自体が的外れであることもわかっている。筆者はだからせめて充分な音量と、多少の色付けがあっても良いから気分が華やぐ音質で聴きたいだけなのだ。
穿った見方かもしれないが、そもそも「車内で上質な音質を求めるユーザーが減っている」のではないか?とも疑っている。mp3に代表される種々の圧縮音源をはじめ、動画配信サイトから違法にダウンロードした動画や音源でばかり音楽を聴く若者が増えているという。しかもその粗い音を聴くデバイスは粗悪なイヤフォンだ。彼らはそもそも「良い音」を知らない。その上そういう若い年代層こそカーオーディオのメイン購入層だ。「高音質」を謳っても商品の魅力にならないのだ。つまり今後も魅力的な1DINオーディオユニットが市場に出てくる可能性はとても低い。
魅力的なオーディオユニットが無くなっていくとともに、良い音を知る人口が確実に減っていくという事実。暗澹たる気持ちである。