輸入車に乗っている贔屓目なのかもしれないが、国産車にデザインで「おお!」と感動させられるものが少ないと感じる。筆者が想像するにデザイナーの力量不足というよりも、デザイン案にGOサインを出すまでの組織形態の違いが大きいのではないか。国産車メーカーではハンコを押す人が多過ぎるんじゃないだろうか。揚げ句の果てにアンケートをエクステリアデザインの決め手にするなど、「誰も責任を取らないデザイン」が立派に量産されていたりするのだから何をか言わんや、である。マーケティングを無視してクルマを作ってもうまくいかないと思うが、マーケティングだけでクルマを作られても困る。
衝突安全基準や純粋に走りのためのメカニズムのためならまだしも、会社の都合や組織というシステムの不合理などからデザインに妥協せざるを得ないデザイナーは数知れずだと思う。
屋根の上に注目
上の画像のクルマはトヨタ ハリアーである。屋根にアンテナが付いている。が、センターより随分右に寄っている。これは恐らく実際にアングルを調整する時に、これだけ車高が高いクルマの「どセンター」に設置されていたら手が届かないからという配慮だと推測する。だったらアングルを付けなくても良いアンテナにすればいいじゃん、と筆者は思う。しかもアンテナそのものは下位車種と共用だ。エクステリアカラーが何であれ、黒いプラスティックの棒っきれみたいなアンテナがギョインと立つのである。興醒めだがデザイナーを責める気にはなれない。コスト削減のために「アンテナなんざあれでいいだろ」という上司がいたのだろう。
エクステリアを邪魔しないアンテナはやっぱり値段の高いクルマに付いている。代表的なのだとBMWのアンテナはあまりデザインを邪魔しないと思う。受信能力はよくわからないが(余談だがあのアンテナを見るたびに業務用ワイヤレスマイクのレシーバーを思い出してしまう)。
3シリーズのセダン
前述のハリアーはプレミアムSUVということでヒットした記憶がある。なのに細部に目を向ければこうだ。実際ハリアーがレクサスブランドにアップグレード(?)し、RXという商品になってからはアンテナも上質なデザインになっている。
ほとんど目立たないアンテナ
しつこいが、これがハリアーじゃなければそんなに目くじらを立てる話ではない。筆者としてはプレミアムでしょ?と言い張っているハリアーとボトムエンドのパッソのアンテナが同じもの(かどうかは厳密にはわからないが、パッと見同じに見える)なのが腹立たしいのだ。見えないところのコストカットも白けるが、あまりにもモロじゃないか。
などと言っている筆者のアルファロメオ MiToのアンテナはさぞかし素晴しいんだろうな、と凄みたくなる気持ちはわかるが、アルファのボトムレンジたるMiToのアンテナも大したものが付いているわけではない(しかも見えないところのコストカットも恐らく盛大だ)。そもそも買ったまんまだとアングルを付ける事すらできない。これはMiToに限らずプジョーだろうがシトロエンだろうが300万円以下の欧州車なんてだいたいこんなもんである。イタリアにはタワー式駐車場など無いのだろう。インポーターの配慮なのか、一応純正オプションに「アンテナアングルスペーサー」というものが存在する。
だがこのスペーサーを付けてアンテナを寝かしても、実はリアゲートと干渉するのだ。ええ!?純正オプションなのに??そうなのだ。
アングルスペーサーを装着して一番寝かせた状態
ゲートを開けるときっちり干渉してアンテナが持ち上がる
これ、ほとんど「最も立てた状態」に近い
リアゲートを開けて荷物を下ろし、上向いてしまったアンテナに気付かずタワー式駐車場にバックから駐車した方の悲劇を聞いた事がある。ま、言って見ればデザイン云々ということよりも単純にチグハグなのだ(笑)。デザインした本国じゃアングルを付ける必要性が理解されないので、輸入した先の国情に合わせてオプションを設定してもこんなことになる。だったらやっぱり最初からBMWアンテナにしてくれ。