クルマで行きます

クルマが好きなことにかけては人後に落ちない。
東北のABARTH PUNTO EVO乗りが綴る、クルマについてのあれこれ。
試乗記・我が家のシトロエン C3 SHINE
| 試乗レポート | 22:12 | comments(8) | trackbacks(0) |

2010年から9年間乗り続けたシトロエン DS3から、同門のC3へ家人が乗り換えることになった。紆余曲折を経て実際に家人が購入したのは(株)イデアルさんの自社登録物件で、俗に言う新古車である。購入の経緯はこちらをお読みいただきたい。

さらばシトロエン DS3

改めて我が家の一員となったC3の試乗記を書いてみる。本来は諸元を提示するのだが、それは公式サイトのそれに譲ろうと思う。

シトロエンジャポン公式サイト/C3

2019年5月6日、家人が筆者ともどもお世話になっているS店長立ち会いのもと、どきどきわくわくの納車の儀が行われた。イデアルさんはPSAとFCAのディーラーであり、扱っているクルマはヘンタイ寄りのものばかりなのだが、生粋のヘンタイたるS店長はなぜかボルボの担当である。組織マネジメントとは難しいものだ。「ボルボ車の車両説明なんか2時間くらいかかりますよ。今日はシトロエンの現オーナーさんの乗り換えですから10分もあれば…」。そう言えば筆者のプン太郎納車の儀も30分くらいで終ったもんなぁ(笑)。実際には書類の確認も含めて小1時間かかったのだが、昨今の最先端の自動車の納車は大変だ。

さて試乗記ではあるが、そもそも発売直後とC3購入時の紆余曲折の過程ですでに書いている。

【試乗記】シトロエン NewC3・これは売れますよ、という特殊な見解

DS3・FX問題に決着か「S店長、パンダの見積もりください!」

なので納車当日に行った宮城県北部の伊豆沼まで往復120km程度のツーリング+市内用足しで改めて感知できた事柄を書こうと思う。前提として大きく印象が覆ることはなかった。総論めいたことを書けば「素敵なBセグメント車両」である。家人の乗り出し価格は200万円台の半ばなのだが、昨今の国産Bセグメント車両だってオプションを無軌道に付けていけば200万円台の前半にはなろう。改めてC3のルックスとその乗り味を考えれば、少しだけ高い価格を飲み込むことは充分可能だと思う。

●運転環境
ハンドルは許容範囲として、ABペダルのオフセットは明確にある。さらにメータークラスタが左に寄っている。同門PSAのプジョー車のi-Cockpitと異なり、シトロエン車のハンドルとメータークラスタの位置関係は伝統的なもの。だからこそクラスタの左遷移がはっきりわかってしまう。

ベストドライビングポジションをまだ見つけられていないが、基本的な運転姿勢はアップライトに座る実用車然としたもの。チルトとテレスコ調整を駆使して適切なハンドル位置を見つけられれば、健康的な運転姿勢を多くの人が取れると思う。

運転席と助手席のシートの作りは上々。特に座面の柔らかさと沈んだ先のお尻の受け止め方はかなり良い。体重を均一に受け止めてくれている。一方でシート背面はホールド感は最低限ではあるものの、背筋を伸ばして肩甲骨で背面を押し付けるような姿勢を取れば、あとは姿勢のことではあれこれ悩まずに済むだろう。クルマの主張を理解しやすいシートだと思う。

反面3人掛けの後部座席は座面も背面も肉が薄く、ちょっと落ち着かない。ただガラス面積が広く、DS3で感じるような「閉じこめられ感」とは無縁。久しぶりに購入する5ドア車両だが、その恩恵を充分感じられる造りではある。もっとも音振は最低限なので、走行中にフロントシートの人と会話するには、少し声を張る必要がある。なにしろ後部座席ではウィンカーの作動音が聞こえないのだ。

クライメイトコントロール、オーディオ他、車両設定のすべてをまとめた液晶ディスプレイについては、別に章を設けることにする。

●走ると
1.2l直列3気筒+6ATは必要充分以上。この組み合わせでようやく他のBセグメント車両と対等に比較してもらえるようになった(はずだ)。そして車重はDS3とほぼ同じなのに、C3の挙動は軽やかに感じる。特に加速時にそれは顕著で、アイシンAW万歳である。ちなみにこの6AT(PSAではEAT6という)は市街地の巡航速度程度では、ギアが何段であれ概ね2,000rpm前後までしか回らない。それでいて加速に痛痒を感じないし、慣らし運転中だからむしろありがたい。PSA伝統の「スポーツモード」で不用意にAペダルを煽ると、あっという間に5,000rpmを超えて回そうとする。ただそういう鞭の入れ方をすると、足周りがキャパオーバー気味になって旋回時のロールは盛大になるし、ミシュラン プライマシー3というエコタイヤのグリップの限界が低いことも早々にわかってしまう。スポーツモードに相応しい場面がよくわからない。もっとグリップ能力の高いタイヤへ履き替えれば、万事うまくまとまるのかもしれない。

一方ノーマルモードでの話として、停止からそろりそろりと発信するような場面では、エンジンのシャクりがはっきりわかってしまう。これは別にC3に限った話ではなく、それこそプン太郎でもよく体験する。「バランサーシャフトが入ってますけど、3気筒エンジンですから音や振動はそれなりに…」とS店長も釘を刺してはいた。実際走行中でもエンジンノイズは気にならない音量レベルだから心配はいらない。ただノイズ軽減のためにエンジンマウントを緩く設えるのは、ダウンサイジング過給という手法を取る欧州車ではもはや定番のチューニングだから、シャクりは不可避と思った方が良い。エンジンを揺すらない微速発進のためには、Aペダルのコントロールに気を使う必要はある。

だからC3、本当はスポーツモードでバシッと発進して、動力性能のマージンを多めに残しながら走るのが本来の姿なのだろう。沢村慎太朗の気合いの入った試乗記では、フランス国内の高速道路事情に合わせたと思しき100-130kmでの走行が、もっともバランスが良いと評されていた。ただ前述のとおり、そうやって走るには足周りが力不足な感がある。

●曲がると
EPS(パワステ)のチューニングに気になるところはない。この旋回マナーもDS3を彷彿とさせる部分で、そう言えばプラットフォーム、おんなじなんだよなぁ、と思わずにいられない。そのマナーは左右への動き始めはスッと素直に鼻が動き、そのままオンザレールをキープしやすい安心感が持てるもの。ただコーナーへの進入速度を見誤ると、速度一定のまま旋回が深くなっていくような場面では、そのハンドル操作との親和性が少し薄まる。根本においてパワーステアリングのチューニングは素性が良いと思うので、きれいな旋回をしたければ進入速度管理だけは気をつけろ、ということになるのだろう。逆に言えば足周りとタイヤを替えれば、さらに高い速度域での美しい旋回を見せてくれるんじゃなかろうか。

●停まる時
ブレーキサーボのマスターシリンダーをエンジンコンパートメントの左に残したままらしい。これもRHDのPSA車両の伝統で、そんな伝統は今すぐ捨ててほしい。右側にあるBペダルから左側のマスターまでに余計な介在物が挟まるため、踏み込み始めのタッチが曖昧になる。これは渋滞時の微速停止の際に大きく影響する。要は同乗者の頭をぐらぐら振ってしまいやすいのだ。停止の瞬間にギアをニュートラルにするとか、全神経を右足に集中するとか、ストレスフリーなブレーキとは言い難い。ただしキャパシティは充分。速度域が高いほどまとまるようにチューニングされているのだから、ある意味でそれは当然なのだが。

●インフォテイメント
センターコンソールに巨大な液晶ディスプレイが鎮座。クライメイト、オーディオ、車両諸機能の設定はすべてここで行う。物理的なスイッチはボリューム(ミュートボタンを兼務)ノブ、フロントとリアのデフロスター、ハザードランプ、ドアロックだけである(PSA伝統のESPカットスイッチはステアリングコラム右側にひっそりといる)。最初に声を大にして言いたい。諸機能の設定方法をタッチ式ディスプレイにまとめるのは、運転手の視線を必要以上に占有するので危険だからダメ。このことについてもうクドクド言うのはイヤなので以上。操作系統以外のことについて書くと、アイドリングストップを解除してもエンジンを一度落とすとリセットされてしまうのは苦痛だ。これはせめて設定維持できるように(それこそソフトウェアアップデートで)対応してほしい。純正オーディオの音質を云々するのは野暮だが、今どきの音楽を今どきの音質で聴く分にはあまり痛痒を感じないだろう。いやむしろ低音をカットしたくなるかもしれない。最初からコンプレッサーがかかっているような、喉の奥がきゅっと絞まるような音質だ。ちなみにFM放送はきちんとスキャンしてくれるが、AM放送は全滅。ほぼまったく受信できない。これはもう少し追求するつもりだ。Apple Carplayを利用するには有線接続が必要。GoogleMap.appがセンターコンソールに表示されるのは便利この上ないが、操作には慣れが必要かもしれない。

●まさかの諸安全装備
いや、我が家のクルマにこんなにたくさんの電子アクティブセイフティ機能がやってくるとは思わなかった(笑)。普通に運転していてその存在を知ることができるのは「レーンデパーチャーウォーニング(車載カメラが常に監視していて、車線からはみ出しそうになると警告)」と「ブラインドスポットモニター(ドアミラーの死角部分に障害物があるとミラー内で警告)」。狭い道で対向車を除けるために脇にギリギリ寄せても警告する反面、明らかに障害物がないのにドアミラー内でオレンジの警告灯が点いたりする。まぁこの辺はご愛嬌である。その他キーを持っていればドアノブに触るだけでロック解除/施錠、エンジンON/OFFは便利この上ない。またバックカメラは運転手の車両把握能力を退化させるのでなるべく見ないようにしている。

●Connected CAM CitroenTM
ルームミラーにフルHD、広角120度カメラと16GBのメモリを内蔵。衝撃を受けた時には前30秒/後60秒の動画を自動的に保存する他、シャッターボタンを押すことで静止画像/動画を任意のタイミングで記録することができる。記録したデータはWi-Fi経由でスマートフォンアプリと共有でき、即座にSNSにアップすることも可能。秘かに楽しみにしていた機能なのだが、広角だからかちょっと画像が粗い。まぁ使えないこともない…というレベルだろうか。ま、SNSに流すくらいなら充分かもしれない。
 

こんなの
 

ここまではオーナーの贔屓目ではなく、これから本気で買おうと思っている方向けになるべく事実をフラットに書いてみたつもりだが、ここからは任意保険を共有するオーナーの視点で書いてみよう。DS3と比べてとにかく加速が俊敏で、少なくとも前席の静寂性も及第点。微速域のアクセルワークにコツは必要だが、速度が乗ればゴキゲンなのは保証する(DS3も同じだったなぁ)。ハンドリングのシェアさは、この1点だけを以てわざわざフランスのクルマを買う理由になる。まぁつまりは同一プラットフォームの正しい進化系なのだった。何よりキュートでポップっす。筆者がオーナーならエコ系タイヤを速攻で外し、それでもまだロール量が気になるならバネ+ダンパーを替えるだろう。トランスミッションはスポーツモードをONにさえすれば充分だ。これにエアクリ交換を加えれば、快適性と高機動性を両立した「羊の皮をかぶった狼(の子ども)」にはなれると思う。

ま、そんな「しなくて良い改造」をしなくても、C3はBセグメントにありがちな「コストも性能もギリギリっす」感が希薄なのが美しい。セイフティ機能や車載カメラなどのギミックを差し引いても車両の基礎運動能力が高い。これぞ枯れたシャシーの醍醐味、チューニング領域のキャパシティが広かったことを想像させる。スズキ スイフト以外の国産Bセグメントにため息を付いている人は、これ買ったらいいんじゃないですか?運転してニッコリ、停めてるC3を見てまたニッコリできる憎めないヤツなのだった。
 

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試乗記・アバルト124スパイダーふたたび
| 試乗レポート | 09:58 | comments(12) | trackbacks(0) |


Tazzaさんのアバルト 124スパイダーを運転させていただく機会を得た。Tazzaさんは昨年、右折レーンで信号待ち中に後続車に追突されるという事故に遭われた。身体も心配だが124もダメージを負った。詳細な検証を経て修理という選択をし、その際THREE HUNDREDのパーツを中心になにやらドーピングも行ったというその124である。筆者は124スパイダーの国内発売時に簡単な試乗は済ませている。

試乗記・ABARTH 124スパイダー あれこれ言ってもしょーがない

大掴みのところは上記試乗記と同じである。要約すると「良くできていると思うけど、イタリア車とかアバルトという言葉から期待する伊達などと言った要素はほぼ無い」ということになる。だが124スパイダーならではのファンは確かにある。最初の試乗時にそのことを体感できなかったのは筆者の未熟さゆえである。

くり返しになるのでまずは上記試乗記をお読みいただくとして、今回の試乗で気付いたこと・考えたことを中心に書く。

●ドライビングポジション
プン太郎とは正反対の寝そべる体勢を作るのにまずは一苦労。だがステアリングセンターもABCペダルとフットレストの設えも文句の付けようがない。きちんと肩甲骨の位置でシート背もたれがホールドしてくれるポジションを得られれば、124スパイダーを正しく理解できる。前回の試乗時はここを蔑ろにしていたかもしれない。愚かである。

●加速
試乗前半はノーマルモードだったこともあり、第一印象は「プン太郎よりも130kgも軽いようには思えない加速だなぁ」。Tazzaさんからも前情報として「スタート、あんまり俊敏って感じじゃないですねぇ」と聞いていたので、思い込みもあったかもしれない。しかしひとたびスポーツモードに入れれば万事解決である。この辺はプン太郎と同じだ。ちなみに諸元値における車重は124Spider(6MT)が1,130kg、プントエヴォは1,260kgである。1.4リットルマルチエアエンジンにターボ過給、圧縮比やボア×ストロークなどの条件はプン太郎と同一。最高出力と最大トルクはわずかに124スパイダーが劣るなど、細かい数値に微差はあるにはある。だが挙動として感じるもっとも大きな差はFRかFFか?ということだろう。

●旋回
鼻の入り方は痛快だ。ちゃんと研鑽を積めば、滑り出しやすいというリアにカウンターステアで対抗するなんてことができるかもしれない…、とつい思ってしまう。よく知っているFF車両の旋回挙動と比べ、この「曲がること」「クルマを前に押し出すこと」の分業は新鮮だ。またその分業は低い速度域でも充分感じることができる。

●制動
意外やこのブレーキが曲者だった。制動力をグラフにすれば見事な右肩上がりの放物線ということになろうか。立ち上がりが遅いのだ。だが「まずはエンジンブレーキ、次にフットブレーキ」というメソッドで御してやれば、Bペダルを踏んだ直後の部分をエンジンブレーキがきれいに補填してくれて、結果としてニュートラルな制動力を得ることができる。このクルマはエンジンをそれなりの回転域まで回してやっていることが重要なのだ。

●走行中
Tazzaさんは足周りをごっそりTHREE HUNDREDの社外品に替えてしまっているため、純正状態の評価はできない。その上で走行中の印象を書くと、硬いが路面からの入力を丸める最低限の仕事は行っていると言える。また入力によって揺すられても、その収束は速い。言ってみれば「爽やかに硬い」。この点について結論めいたことを書くなら、「足周り、替えちゃうのが吉」である。
 


最近Tazzaさんがしきりに
O.Z.を勧めてくると思ったら…



ああっ!こんなところまで…


硬いと言えばシフトノブ。発売時の試乗では硬いというよりも動きがぎこちなくてがっかりしたのだが、Tazzaさんの個体は適度にこなれていて、シフトチェンジが楽しくて仕方ない。乗り慣れたプン太郎の実用車チックなシフトに戻ると戸惑ってしまうほど、マツダ内製6MTの動作は正確でショートストロークだ。

もうひとつ硬いと言えばボディ剛性。今回の試乗は全行程幌を開けた状態で走ったのだが、そこそこ舗装が荒れていたにも関わらず、不安な様子は微塵もなかった。これもすごいことだ。

●2度目の試乗を終えて
低く座るドライビングポジションが体得できると、124スパイダーが語りかけてくる多くの言葉をきちんと受け止められる。イタリア車だのアバルトだのという先入観を払拭して、ニュートラルにこのクルマを味わうことができた。結果、これ欲しい(笑)。ナビを含めたマツダコネクトやトップ中央に赤線の入ったハンドルは必要ないが、青天井の下で風を感じながら6MTをゴキゴキやる楽しみには抗いがたい。alfa_manbowさんにホンダ S2000を運転させていただいた時もそう思った。楽器を運ぶ時?家人のC3を貸してもらうことにしよう。
 


ここでは伏せているが、
希望ナンバー制を行使したナンバーは
K店長に「124はこの番号じゃないとダメです」と
強制的に付けられたという…



今回の試乗は仙台市の西方の山奥、定義山の西方寺からさらに西に入る十里平方面への道行きと大倉ダム周辺の道路で敢行した。初めから狙ったわけではないのだが、走ってみればそこそこのカーブとアップダウンや直線路の配分がちょうど良かった。「久しぶりにのんびりクルマの話でもしましょう」というTazzaさんからのお誘いに感謝申し上げる。筆者行きつけのカフェ門前喫茶Norahへお誘いしたものの、店内もすごい混雑だった。Tazzaさん、世間がざわついていない時期にまた遊んでください。まずは5月25日の西蔵王公園OFF会、お待ちしております。



絵になりますなぁ
 

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試乗記・ホンダ フィット(初代)
| 試乗レポート | 19:36 | comments(8) | trackbacks(0) |

少し時間が経ってしまったが、2018年12月のプン太郎車検時にあてがわれた代車ホンダ フィット(初代)について書いてみたい。と言ってもすでに3代も前の車種についてのバイヤーズガイドもどきを書いても誰かの役に立つとも思えないし、新車時とは変質してしまった乗り心地のことをあれこれ書かれてもホンダも迷惑だろう。そこで「フィットに乗って考えたこと」を中心に書いてみたい。というのもこの初代フィットに乗って、少なからず驚くことがあったのだ。

このフィットを借り受けていた期間中、生業が最高潮に忙しかった上にいろいろあって、家人のシトロエン DS3で移動することが多かった。あれよあれよとプン太郎受け取り当日になってしまい、フィットの外観写真も車検証データもメモし忘れた。いつもの試乗記フォーマットでないことをお詫びする。今回の個体の総走行距離数は141,200kmくらいだった。

さて筆者はこれまでの人生で何台かホンダの製品に乗ったことがある。実際に所有したことは人生最初のマイカーとなったホンダ シティターボだけだが、友人Mの家グルマだったコンチェルト、アコード、MiTo整備中の代車としてイデアルさんからあてがわれたThat's、ストリーム、友人@のアコードワゴン、助手席に乗せてもらった友人Aのエアウェイブ、S店長に試乗させてもらったシビックType Rユーロ。しかも仕事で乗る社用車は初代ステップワゴンである。80年代から10年代まで、約30年に渡るホンダ車両の変遷(笑)を点描することくらいはできそうだ。

試乗記・HONDA That's これで満足できる人

【試乗記】ホンダ ストリーム(初代)・どうして楽しいの?

もっとも上掲試乗記以外の個体については、ほとんどが今ほど自動車にのめり込む前の試乗体験なので、1台ごとのあれこれを書けるほどの記憶はない。しかしそれでもそういう体験を基準として筆者のホンダ車両への印象と理解をまとめるとこうなる。


特殊モデルは素晴らしいのに、素のモデルの造りは粗い。


筆者がこれまで能動的に体験してきたホンダ車は、文才がないから様々に言葉を使って長文の試乗記を書いているが、一言で言えば「粗い」。走る・曲がる・止まるの三要素のバランスが悪い。走るけど曲がらないとか、「〜けど〜ない。」という印象ばかりである。もちろん現行アコードワゴン(「アメ車みたいなボルボ車」みたいだった)やシビックType Rユーロ(加速・旋回・制動のすべてが高次元でバランス)のような積極的に乗りたいモデルもあるにはあるのだが。しかし一般の、別にクルマなんか安けりゃ何でも良いという風情のユーザーが買うであろうモデルの出来が粗いのが残念すぎる。軽自動車やミニバンと言った中庸・王道ど真ん中モデルの出来が粗いことは、メーカーにとってもユーザーにとっても残念なことだ。

と、今回のフィットに乗るまでは思っていた。だが違った。今回運転できた初代フィットはホンダの中では両極端な世界の中間と言える乗り味だった。中庸の権化トヨタのB/Cセグメントに比べればまだ粗いとは思うが、加速・旋回・制動のバランスは正三角形に近いと言える。例え性能が低くても、その諸機能が正三角形でバランスしていれば運転手は自信を持って運転できる。そういうホンダのBセグメントモデルに初めて出会った気がする。
 


運転席のながめ


三眼式メーターのデザインは好ましい


日本車だけどペダルオフセットはある
(ハンドルとシートのセンターは合っている)


もちろん完璧ではなかった。セルフアライニングトルクの希薄なパワステは鬱陶しかったし、CVTの挙動は明らかにおかしかった。だが冒頭に書いたとおり、これは14万km以上走っている個体なのだ。むしろ14万km走ってもまだ「バランスはそれなりに良い」と思える耐久性を特筆すべきだろう。

なによりも「ホンダの中庸」であることの方が重要だ。40-100km/hの範囲で身体や神経に負担をかけないことは、ある意味で「性能が良い」と言っても良い。ちなみにドライビングポジションを決めた状態で後部座席にも座ってみたが、座面長こそ足りないが、足の置き場所、背面による背中のサポート、バックレストの高さとトヨタ カローラよりも真っ当な環境だった。実際このフィットはカローラの「34年連続通年新車売り上げ1位達成」を阻止した記念碑的モデルでもあるのだった。
 


高くてめちゃくちゃ良いか、安くてどーしよーもないのしか出せないと思っていたホンダが、こんな実直なモデルを出していたことに驚いた次第。街中でフィットを見かけると温かい目で見られるようになったと、もっぱらの評判です。

試乗記・ザガート 155T/S TI-Z
| 試乗レポート | 23:43 | comments(6) | trackbacks(0) |

ザガート155T/S TI-Zという超希少車種に試乗させていただく機会を得た。オーナーの155TI-Zさん(みんカラネーム)とは某SNSでつながっていたのだが、未だ会ったことはない。筆者のプン太郎試行錯誤日記(このブログのこと)をお読みになって「そんなに運転しにくいの?運転してみたいねー」的なコメントをSNS上でいただいた。どうせ乗っていただくなら筆者としても155を運転してみたい。ザガート155の詳細はよくわからないが、アルファロメオ155は試乗したいクルマランキングの常に上位にいる車種。かくして密会が実現した。文中クルマを意味する155と人物のハンドル名として何度も155が出てくると読みづらいと思うので、クルマの方はなるべく厳密にアルファ155とザガート155を書き分けるとして、このエントリーでは155TI-Zさんという人物をKさんと記述することをお許しいただきたい。

時は平日の午前中、密会場所は仙台市北部の「泉ヶ岳」なる山の中腹にある駐車場。ここからさらに数km登ったところにあるスキー場までのワインディングを往復してクルマを味わう算段である。先着した筆者がKさんを待っていたら、はるかかなたから野太いエグゾーストノイズが聞こえてくるではないか(笑)。早朝・深夜の起動が憚られる音質・音量である。Kさんも普通の住宅地にお住まいとお見受けするが、ご近所付き合いは大丈夫なのかいらぬ心配をしてしまう。「やぁやぁはじめまして」のご挨拶をしてさっそく概要など。
 




あまりに希少な個体なので詳細を書いて良いものか迷うのだが、ザガートが製作した数十台の限定車…というか、結局数十台しか作られなかったというか、総製造台数がナゾというか(笑)、ともかく現存する台数そのものが少なく、このザガート製の155、東北ではKさんの個体しか存在しないらしい。国内のザガート155の導入経緯や現状をまとめたデータベースサイトがある。詳細はこちらをお読みいただく方が早い。

Macci-no Maccina

基本的にこのサイトに書かれていることをベースに話を進めるが、ザガート155は95年製アルファ155をベースに内外装のモディファイを施したモデルということになる。四半世紀を超えたご高齢のクルマということになると、メインテナンス事情が気になるところだ。しかしKさんはそちらの知識も技術もある方なので、トラブルがあってもパーツを買ってきて自分で直してしまう。だからもっと古いクルマに乗りたいなんてのたまう。羨ましい。
 


エンジンカバーの結晶塗装は
ご自身の手による


ひととおり個体のレクチュアを受けて、まずは筆者が155を運転させていただくことにする。「現代のクルマと比べるとブレーキが効かないから気をつけて」とのこと。顧問の916系スパイダーでも経験したが、90年代のアルファのブレーキは00年代以降のラインナップのそれと比べると、一様に茫洋としたタッチだ。踏み増しても踏み増しても制動力はぼんやりとしか立ち上がらない。早めの操作と強めの踏力が必要だ。

ブレーキについて最初に書いてしまったが、まずは車両の全体的な話から。エクステリアの全体的な印象は「エグい155」。こういうとKさんに怒られると思うけれど(笑)。ボディの半分くらいはFRP素材に置き換えられているという。また通常の155のアウターパネルとは造形があちこち異なっており、フロントもリアもググッと張り出しているように感じられるが、全幅は1,760mmと良心的なサイズ。絞るところは絞り、出すところは出すという視覚のマジック。イタリアンデザインの華と言ってしまいたい。もっともこのFRPパーツは仕上げも取り付けもイタリアンジョブらしい(笑)。先のリンク先サイトに日本発売前後の経緯が(作者の知る限りのところで)記述されているので、詳しい話はそちらをご参照いただきたい。Kさんの個体を子細に見る限り、なるほど「チリ合わせってなんですか?」という風情。正直言って、筆者はチリ合わせとかパーツの精度については極端に頓着しない。脱落さえしなきゃいいと思っている。ただしこのFRPパーツ、素材の特性上仕方ないことなのだが、ぶつければ一巻の終わり。へこまない。割れる。これらのパーツを作っている会社はもはや存在しない。自作?ワンオフ?可能なのだろうか。とにかくそういうクルマなので、試乗っつってもねぇ(笑)。筆者側から気軽に言い出した話ではあるが、緊張しちゃうわー。
 


左側・Cピラー付け根


右側・リアバンパー


しかしこの佇まい、存在感。ただ事ならぬ雰囲気なのだ。Kさん曰くこれだけの希少車なのに日常で「これ…ザガート155じゃないっすか!!」的な声をかけられることがほとんど無いという。日常どころかあちこちのイベントでも同様らしい。希少すぎて希少かどうか理解されないというパラドックスもあるかと思うが、あまりにただ事ならぬ雰囲気に声をかけづらいだけじゃないかという気も筆者はする(笑)。もともとカッコいい155が、さらにスペチアーレな見た目になってると思ってくれて間違いない。

乗り込んでみる。LHDモデル(しかない)。シート、ハンドル、ペダルの3点に特に齟齬はない。5速のシフトがぬるぬる…というかゲート感の希薄な動き。916系スパイダーもそうだったので特段驚かないが、試乗を終えた今ならクルマの印象にマッチしたシフトだと言える。ハンドルはMOMOのものに交換されていて、リム細目で径も小さめなのだろう、ハンドルを握るだけでレーシーな気分が盛り上がる。加えて前述のエグゾーストノイズである。聞けばマフラーはザガートがフジツボに作らせた直管ものだそうで、こいつが奏でる音は適度に粗い粒立ちで、かつ低音のドスが利いた万歳三唱するような音。ブリッピングなどしたわけではないが、アイドリングしているだけで気分が高揚してしまっても仕方ない仕様。実際のところ、古くさくてイヤになっちゃうだろうなぁと思っていた155のインパネやメータークラスターやコクピット環境については、実際に着座してみればまったくそんなことはなく、むしろ気分が高揚するような不思議なポジティブさに満ちていた。とにかくクルマは実物を見てみないとわからないものだ。

動き出してみる。身構えていたのにあっさりクラッチがミート。なんなく動き出せる。初めてのクルマの動きだしがスムースに行くと自信が付きますな。で、お手並み拝見とばかりにAペダルを踏んづける。勇ましいエグゾーストノイズとは裏腹に速度計の針の進み具合はゆったりめ(笑)。おー、なんかいいなぁ。ン?なんかガソリン臭い…。Kさんは笑っておられたが先のサイトを見ると構造的に燃料臭がしても仕方ないようだ。どんな仕様だよ!まぁ窓を開けて走っているのでだんだん気にならなくなったけれど。

試乗コースはワインディング。シフトチェンジ動作がうまくできるか少々不安だったが、幸い恥をかくような場面はなかった。旋回挙動も加速動作と同様で鷹揚な感じ。Kさん曰く147なんかの方が鼻の動きはクイックだという。あおさんの147試乗時のことを必死で思い出してみるが、確かに鼻の入り方は147の方が違和感なかったような…。違和感とはプントエヴォと比べてのことだが、全体的に加速・旋回はバランスが取れており適切な速度がわかってくれば、ワインディングでも怖くないはずだ。

どうして「はずだ」と書いたかというと、あまり上手に走らせられず怖い思いをしたからだ。その理由は前述のブレーキ。MiToやプントエヴォというサーボ効きまくりの車両経験しかない筆者が、155の鷹揚なブレーキタッチを習得するには今回のワインディングは短すぎた。ベストなタイミングと踏力が最後まで体得できず、途中何度かややオーバースピードでコーナーに進入することがあった。これは155というクルマが不出来だったり性能が低いわけではなく、加速・旋回・制動がきれいにバランスするポイントを筆者が見つけられなかったという話だ。もっとのんびり走るのがきっとこのクルマには似合う。なんとかのひとつ覚えみたいに、ワインディングだから踏まなきゃ損!みたいな運転をした筆者が未熟なのだ。ちなみに試乗を終え155を駐車させる時、危うくバリケードに突っ込んでFRPフロントカウルを割るところだった。微速域でもブレーキタッチはブレずに甘い。だからつまりそういうことだ。逆にKさんがプントエヴォを運転した時の減速は効きすぎていた(笑)。Kさんによるプントエヴォ試乗の様子はエントリーを分ける。

ご家族をこの155に乗せることはないというKさん。ファミリーカーとして3列シートの国産車を購入したこともSNSの投稿経由で知っている。だから155を動かすのは月に2-3回程度だという。そしてむしろこれくらいの頻度で良いのだともおっしゃる。自分の楽しみのためだけに乗る。そういうクルマとの付き合い方があってもいいなぁと素直に思った。実際プン太郎と筆者の関係もそれに近いが、どうしたって「家族も乗せられるユーティリティ」的な幻想を捨て切れないし、実際家族も乗せる。「もっと古いクルマにすればいいじゃない」とKさんはおっしゃる。古いクルマでのんびり走る方がもういいのだ、と。書き忘れていたが、Kさんと筆者は同学年(Kさんはひとつ年下の早生まれ)。身体の諸機能の衰えについてはふたりともリアリティを共有できる(笑)。確かにKさんのように小さなトラブルは全部自分で直してしまえるなら、75でもジュリアスーパーでも良いかもしれない。古いクルマにとことこ乗るという生活に憧れがないと言えばそれはウソになってしまうが、かと言って筆者の生き方を急にそういう風に切り替えることも難しい。

結局クルマ好きのクルマ選びとは、その人の人生や人生観が如実に現れる、言わば表現行為だということを改めて思った。ザガート155T/S TI-Zなんていう希少車を楽しみながら維持できる人生は、Kさんにこそふさわしいと思った次第。Kさんありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。どうか腰を大切に。

試乗記・ある意味欧州車!マツダ アテンザGG型
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満を持してプン太郎のオーディオを改造することにした。屋島西町大旅行2018を経て、予定から2,000kmも交換時期を逸していたオイル交換とともに。

改造に関してはまた別途エントリーする。このエントリーで書きたいのはプン太郎を預けている期間、イデアルさんがあてがってくれた代車の試乗記である。最近はシトロエン C3(先々代)で安定してたイデアルさんの代車だが、今回はニューフェイス、マツダ アテンザ(GG型=アテンザ初代)である。
 

マツダ アテンザLA-GG3S型(個体の車検証による)
総走行距離約9.3万km
初年度登録 平成15年(2003年)
形式 LA-GG3S
原動機の形式 L3 
排気量 2.26L(ガソリン)
車両総重量1,665kg(前軸重840kg 後軸重550kg 車両重量1,390kg)
全長 467cm
全幅 178cm
全高 144cm

※厳密に「◎◎型」と車種特定をしたいのでプラットフォームの形式から「GG型」と記述するが、本当に正しいのかよくわからない。正しい形式名(表記ルール)をご存知の方がいたら教えていただきたい。

マーケティングよりもエンジニアリングで勝負をかけてくる(と思われている)マツダのことを、「広島のアルファロメオ」と呼ぶらしい。奇しくも今回の代車GG型アテンザを「和製156」と評しているテキストを読んだこともある。GJ型アテンザ(2012年〜)の素晴らしさは、しげさんの個体を運転させていただいて一度しっかり味わっているが、その先代たる「和製156」は以前から気になっていたので、偶然とは言え実に嬉しい配車となった。結論を書くと00年代初頭に発表された国産車の中にこれほど欧州車のような味わいのクルマがあったとは!と驚くことになった。嬉しい驚きである。ただし両手を上げて万歳ではなく、仕上げの迷走とも言うべき瑕疵もはっきりあった。

●素晴らしい運転姿勢作り
まず運転席環境から。ハンドルとシートのセンターは一致しており、Bペダルはほとんど直下だが足掛け代は少し右にあり問題ない。Aペダルは足を自然に延ばした先に待機している。というわけでハンドルとペダルとシートの関係はほぼ満点(A/Bペダルがあと数センチ右にあれば満点)。ファブリックのシートはガチガチに身体をホールドするものではないが、セダンという形態を考えれば必要充分な性能。座面が短かったりヘッドレストが明後日の角度を向いたりもしていない。変にアンコが薄かったりもしない。テレスコピック調整機能を持たないことはマツダの伝統らしいが、やはりこのクルマにも搭載されておらず、ハンドルはチルト調整しかできない。とりあえず筆者のセオリーで座面を最低高に合わせてみた。ずいぶん低く潜る感じで、ドアのショルダーラインが文字通り筆者の肩の高さに来る。残念ながらこのセッティングではハンドルをうまくホールドできない。そこで座面を徐々に高くしていく。さてどこで合わせれば良いのか…と探りながらリフトしていくと、その基準がすぐわかった。メーターパネルの傾斜だ。メーターパネルと正対する角度を得られるまで座面を上げて行くと、ヘッドレスト、ハンドル、メーターパネル視認がきれいに揃うポイントがある。設計者はきちんと意図を持って設えたことがわかる(この体験のおかげで家人のシトロエン DS3を運転する時のポジションも改善することができた)。ポジションを合わせてから頭上のスペースも確認してみたが、スポーツカーライクな外見とは裏腹に室内の屋根の高さはしっかり確保されており、身長171cmの筆者でも頭上にはきちんとスペースがある。

正直驚いた。マツダの運転席環境が秀逸なのは前述のGJアテンザ、アバルト 124スパイダーの試乗で理解していたが、それはSKYACTIV世代だからだと思っていた。この頃のアテンザでもすでにうるわしい運転席環境が実現できていたとは。ボンゴフレンディーの罰ゲームのような運転席と助手席を知る身としては、昨今マツダが喧伝する「人馬一体」を素直に賞賛しかねる気持ち(えー?そんなこと言ってるけど、前は相当酷かったじゃん!的な)を持っていたのだが、2002年にこの運転環境を実現していたとは恐れ入った。明らかに同時期の欧州車RHDモデルの環境を凌駕している。

●運転席からの眺め
センターコンソールの設えはさすがに古く、プラスティック感満載のチープな作り。しかしクライメートコントロール、オーディオ、ハザードなど必要な物理スイッチが過不足なく整理されて並んでいる。質感はともかく操作に迷うことはない。液晶表示も20cm定規のような小さなものがあるだけだ。そこに表示される情報で、なんら運転に困ることはない。これに比べれば昨今蔓延するタッチパネル式のコントローラーなど、むしろ退化していると言いたくなる。
 



ナビは隠すこともできる。
この個体はcarrozzeriaのナビが
インストールされていた



●旋回マナーの不可思議
着座しての環境がここまで良いのに、動かしてみると残念な面がないわけではない。その前にパワーステアリング。このアシスト機構はおそらく油圧だろう。昨今のECU制御パワーステアリングに比べればその抵抗はどっしりと重く非常に好ましい。この動きと抵抗、油圧式というそれだけで加点要素になってしまう昨今のパワステチューニングはホントに酷い。GG型アテンザの場合、ハンドル操作時の抵抗そのものには文句はないが、残念ながら切った量と曲がる量が速度域で相当違う。これは前輪のキャスター角度などの足周りチューニング領域の問題だと思う。微速域ではセルフアライニングトルク(ハンドルが自然に直進に戻ろうとする力)が足りず、運転手がよっこいしょと戻してやらねばならない反面、巡航速度域ではクイックになりすぎ、例えば5-60km/hくらいでコーナリング、舵角で約90度以上あてると、オーバーステアの一歩手前くらいの振るまいをする。もっと上の速度域ではさらに小さい舵角でもその症状が出る。筆者の勘違いを疑って様々な速度域で試してみたが、速ければ速いほど舵角は小さくなり鼻先の挙動は神経質になる。コーナリングの途中で自車位置修正のために微調整する(そういうことがないようにがんばってますけど)ような場面では、わかっていてもおっかない。この豹変ぶりを意識して運転しないと簡単にオーバーステアを招いて危険だ。中立付近の遊びがやや気になるほどはっきりあるのは、高速域での過敏な反応と辻褄を合わせるためではないだろうか。直進時、低速域での挙動が大変好ましいものなのに、この豹変ぶりは残念だ。

●加速マナー作り込みの不手際
Dセグメントのセダンだから、基本的にはぶっ飛ばしてどうこう言うクルマではない。だがこのGG型アテンザ、加速の調律も極端なのだ。今回の代車はトルコンAT(恐らく4速)なのだが、停止状態、あるいは微速域からある程度以上の速さでAペダルを踏み込むと、まるで何かに弾かれたようにグワッと加速するのだ。シグナルグランプリ向けか?と苦笑いするレベルである。Aペダルを踏み込む量ではなく、速度を監視することでコントロールしているようだが、運転手としてはオーバーシュート(過剰な加速)する動作(ペダルを踏み込む速度)を探りながら加速管理することになってしまう。正直そんなところに神経を使いたくない。

●「スポーティーたれ」という呪縛
ステアリング時の挙動といい加速の過剰な演出といい、GG型アテンザは極端な二面性を持っている。微速域から40km/hくらいまでのどっしりとした落ち着いた挙動と、仮面を脱いだかのようなかっ飛び加速とその時のクイック過ぎるハンドリング。

この二面性をどう判断すればよいのか非常に悩む。当時のマツダとしては長年看板商品だったカペラからのフルモデルチェンジだったり、経営再建でフォードのヒモ付きだった環境からようやく脱出できたりで気合いも入っていただろう。「マツダ=スポーティー」というイメージも商品のキャラ立ちに利用できると踏んだはずだ。その結果「安楽に走る快適性と、いざと言う時は必要充分以上に加速できるスポーティネスを両立したセダン」というゴール設定だったと思われる。気持ちはわかる。だがその変化は連続性がない。「段」が付いている。これは興醒めだし危険だ。微速域の安寧と鞭を入れた時の瞬発力はシームレスに繋がっていて初めてニンマリできるのだ。惜しい。

そういう極端な二面性を理解した上で加速動作を作ってやりハンドル操作に集中すれば、なるほど「和製156」という評はうまいこと言うなぁと感じる。筆者の乏しいクルマ経験から印象の似たモデルを敢えて探すと、156よりはプジョー 406ではないかと思う。それも2.0自然吸気エンジンと悪名高いAL4との組み合わせの方。406は微速域はじれったく、ハンドリングも期待するほどシェアではなかった。GG型アテンザはその乗り心地や操縦性において、実に欧州車らしい味わいを持っており、部分的には欧州車の下位グレードを凌駕しているモデルと言える。

●その他
その他に気付いたことをランダムに書く。車体の見切れがやや曖昧だ。鼻先や左前輪が今どこにあるかを把握するには慣れが必要だ。同時に車幅1,780mm以上に左側2輪が外側にあるように感じる。つまり初めて乗ってすぐOKではない。プン太郎比車幅も軸距も長いボディに筆者が慣れていない可能性も高いが、乗り始めてから7日経っても自信が持てないということは、パッケージの煮詰めが足りない疑惑もある。

もうひとつ車内の制音について。おそらくエアロパーツなどが原因と思われる風切り音のボリュームが大きい。ドアミラー付近の風切り音なら音源の特定ができそうなものだが、腰より下から全体的に聞こえてくる。ロードノイズよりもそちらが目立つのだ。幸い癇に障る音域ではない。

●まとめ
改めて思い出せば、次世代機GJ型でもやはり二面性はあると思うが、その間はシームレスになるよう巧みに繋がれていた。もしかしたらマイナーチェンジ後GG型では解決しているのかもしれない。今から中古車で購入するならその辺をよくチェックして、マイナーチェンジ後のモデルをお勧めしたい。

よくよく考えてみると、ここまで書いてきたインプレッションは、プン太郎と比較してしまうからそう思うのかもしれない。プン太郎自慢になってしまうが、プン太郎の微速域と高負荷時のシームレスだが鮮やかな変貌っぷりには改めてホレボレだ。とは言えGG型アテンザ、束の間の代車としては申し分ない。4枚ドアのセダンという、最もオーソドクスな自動車を無邪気に楽しんでいる。

試乗記・異文化との能動的な交わり アルファロメオ 147
| 試乗レポート | 22:25 | comments(8) | trackbacks(0) |

かねてから不思議に思っていたことがある。アルファロメオ 147にかつて乗っていた人々のその褒めっぷりは異常ではないか。確かに大ヒットした車種ではあるが、それはいわゆるノスタルジーではないのか。愛によって目が曇っているのではないか。つい先日まで盲目的にMiToを愛していた筆者だからこそ、そんな風に思ってしまうのだ。

先日実施した「クルマで行きますオフ会#16〜西蔵王公園でまったり〜」の際に、あおさん所有の147 2.0TSに試乗させてもらうという僥倖を得た。2.0ツインスパークエンジンにセレスピードでRHDというザ・モスト・ポピュラーな組み合わせ。総走行距離は5.5万kmを超えているが、ノウハウ豊富なイデアルさんが対処アンド予防メンテを施した個体。「5.5万km?じゃあ次は○○がイカレるね!」とか「その次は▼▼(笑)!」などと外野は無責任に「147あるある」を連発するが、あおさん所有となってから数千kmをすでに走ってまったく問題なし。あおさん大満足の1台とのこと。同時期の同社のクルマ、156は筆者もそれなりに運転した経験がある。実に運転体験の濃密なクルマ。あれと比べてどうなんだという興味もある。棚からボタモチ的な試乗だが、何はともあれ147信望者の気持ちを筆者的に解き明かしたいと思う。
 


今回のオフ会、
本当に写真を撮っていないンすよ。
これがあおさんの147のエンジンルーム


ということで座ってみる。最低限のポジション調整をする。あおさんのポジションからはシートの前後を少し調整するだけですぐに決まった。ハンドルやペダル類のオフセット検分は正直忘れていた。筆者が鈍感なだけかもしれないが特に気にならなかった。レザーシートは鷹揚な造形でホールド感は高くない。ここで目の前の景色を眺めると、筆者には馴染みの「アルファロメオのコクピット」である。MiTo以降ややデザイン文法が変わってしまうわけだが、147、156、GT、加えて159、ブレラのインテリアデザインには強く強く憧れたものだ。あおさんの147の車内は相応に草臥れてはいるが、イタリア車特有のオーラはまったく色褪せていない

動き出してみる。助手席のあおさん、「とにかく(現代のクルマと比べると)走らないんで、ご注意を」。いくつかのコーナーを走り過ぎてみると、確かにボディはゆるい。挙動もある意味のんびりしている。しかし加藤店長やあおさんが愛を込めて語る「走らないですよ」は実感できない。いや全然走るし。速い遅いではなく、加速が(昨今の小排気量エンジン+ターボに比べれば)穏やかなのは確か。その意味では確かに速くはないと言える。ただそれは筆者が時々書く「必要充分の一割増し」ではないというだけで、得られる速度と旋回性能、制動性能は高い次元でバランスしていると思う。味わい深い。

それよりも相変わらずセレスピードに四苦八苦。度重なる500の試乗でフィアット版のデュアロジックは体得したと思っていたが、147のセレは、なんというか、遅い(笑)。牧歌的ですらある。試乗中セレは99%マニュアルモードで操作していたのだが、1速から2速へのシフトアップの待たされ具合は思わず「えっ?(まだ??)」と声が出る程遅い。つまりセレはコツコツとアップデートされていたのだ。この147よりもかつて試乗した159の方が、そして超初期型のリニューアル500の方が、そして最近のTwinAir500の方が確かに洗練されている。

ボディ全体のゆるさ、鷹揚なシート、牧歌的なセレの変速スピードなどが渾然一体となると、確かに現代の同格車と比べて「走らない」。しかしそれらを雑事と思わせるのがツインスパークエンジンである。こいつこそ現代の同格車が絶対に持ち得ない美点だ。そのうなりは、なるほど「官能的」と言える。3,000rpmより上に行くとテノールの雄叫びが高まっていく。こいつをもっと聴きたい!回すしかない!おりゃおりゃ!となるのは自然の摂理である。それは低燃費・低公害であることを唯一絶対解とするような昨今の風潮とは真逆のベクトルだが、自動車運転によって得られる根源的な悦び「自由自在感」や「人の能力を超えた移動速度」を濃厚に味わうことができる。147に乗ってタコメーターを見るのは、燃費優先で低回転を保っているかを気にするためではなく、エンジンの咆哮と適度な運動性能を味わうために高回転域を維持するためである。

走り出してから気がつくのだが、速度と回転、ニ眼メーターの針の動きが精密感に溢れ大変好ましい。「このメーターの針の動き、いいね!」と言ったら、あおさんにもalfa_manbowさんにも「そこ??」と突っ込まれた。しかしもはやVW ゴルフですら液晶画面にメーターの絵を映すご時世である。メーターは物理的に針が動いていてほしいし、その動きは濃厚精緻でいてほしい。

反面シフトパドルは気になった。147はのシフトパドルはステアリング一体型。筆者はこれが少し苦手だ。ハンドルを回しているうちにどっちがどっちだかわからなくなってしまうのだ。大きめのパドルがコラム固定式で備わっていてほしい。

結局セレには手間取ったが楽しい試乗だった。そして旧オーナーのベタ褒めの理由も垣間見えた。147が楽しい理由はふたつある。「能動的運転体験」と「異文化との濃厚な接触」だ。

「能動的運転体験」と言ったって運転はふつう能動的なものじゃないか!と思われる方が多いだろう。あおさんがおっしゃったように、147は現代のクルマと比べると走らないし曲がらないし止まらない。そこを運転手が補ってやる必要はある。つまり漫然と運転させてはもらえない。その点だけで比較すれば筆者の老母が乗るトヨタ パッソ(の1リッターの方)と変わらない。しかし147は補って走るとその努力に相応しいリターンがある。そのリターンが想定一割増しなのだ(笑)。「え?ちゃんと走らせるとこんなに楽しいの?」なのだ。動き出す、加速する、曲がるために速度を落とす、そして曲がる、旋回途中の正しいタイミングで再び加速させる、旋回を終えて直進に戻る、あるいは次の旋回に備える、適切に停車する。147が147らしく動作するには147が求めるように操ってやる必要がある。その許容幅は狭い。しかしその狭いスイートスポットにハマった時の挙動は痛快だし、機械という無機物と心が通いあう快感が確実に得られる。

もうひとつの「異文化との濃厚な接触」も重要だ。インテリア検分で書いた、静止状態・着座しただけで感じるオーラ。そして「能動的運転」を求めてくる機動。これらは大方の国産車とはまったく正反対のベクトルだ。視認性・操作性よりも収納ばかりに執心する設え、操作の安楽さと低燃費であることだけを追求し、可もなく不可もない機動。そういう自動車のオーナーが147を操ってみれば、五感のすべてで「こりゃ文化が違う」と思わずにいられないだろう。何を優先し何を切り捨てるのかという基準が、国産車のそれと(下手をしたら昨今の輸入車とも)まったく異なっている。せっかく輸入車に乗るのなら、異文化をなるべく強く意識したいと筆者は考える。その点147は百点満点だ。

プン太郎も漫然とは運転させてもらえないクルマではある。だがそれはもっとヒリヒリした世界というか、気軽にすごいところまで行けるが、しっかり運転しないと命の危険がありますよという緊張感が背景にしっかりある。幸か不幸か147はそういう緊張感はない。オーナーはきっとそういうところまで含めて惚れてしまうのだろう。あおさんありがとうございました。


直後にalfa_manbowさんのジュリエッタ QV(MY2015_TCT)を再び運転させていただいた。「時代が違う!(by 同乗されたあおさん談)」これに尽きる。TCTのシフトチェンジを間違ってホイールスピンさせてしまいました。すんません。

【試乗記】アルファロメオ ジュリア スーパー
| 試乗レポート | 21:29 | comments(4) | trackbacks(0) |
カタログの表紙


アルファロメオ ジュリア スーパーに試乗した。アルファロメオ仙台泉にて。アルファロメオというブランドが今後向かいたいと思っている方向がよくわかり、「とは言うけれど、現状では順風満帆ではない事実」も見えてくる試乗体験だった。向かいたい方向とは「高級車化」である。ジュリア、ステルヴィオの投入や、新CIに基づく地方ディーラー店舗の改装など、アルファロメオの意思表示はこれまでも折々に発せられていたが、とにかくジュリアを見て、乗れば、高級化への転身意欲は身体で納得できる。「スポーティネスはそのままに、高級車路線に舵を切った」という、ある意味転換点に立ち会っているという感慨があった。同時に高級車ブランドとして認知されたいなら、まだ成すべき仕事はあるとも思う。


今回の主役


なにはともあれ、2017年11月時点でのジュリア・スーパーのスペックを書いておこう。

全国メーカー希望小売価格(消費税含)543万円
ハンドル位置    右
ドア数    4
全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm)
4,645 × 1,865 × 1,435
ホイールベース(mm)    2,820
トレッド 前/後(mm)    1,555 / 1,625
車両重量(kg)    1,590
乗車定員(名)    5
エンジン型式    55273835
エンジン種類    直列4気筒 マルチエア 16バルブ インタークーラー付ツインスクロールターボ
総排気量(cc)    1,995
最高出力〈kW(ps)/rpm〉[ECE]    147 (200)/4,500
最大トルク〈Nm(kgm)/rpm〉[ECE]    330 (33.7)/1,750
燃料供給装置    直接噴射式 電子制御燃料噴射
燃料タンク容量/使用燃料    58リッター/無鉛プレミアムガソリン
ラゲッジルーム容量    480リッター
駆動方式    後輪駆動
トランスミッション形式    電子制御式8速オートマチック
変速比    1速    5.000 2速    3.200 3速    2.143 4速    1.720 5速    1.314 6速    1.000 7速    0.822 8速    0.640
ステアリング形式    ラック&ピニオン(電動パワーアシスト付)
サスペンション    前    ダブルウィッシュボーン (スタビライザー付)
後    マルチリンク (スタビライザー付)
主ブレーキ    前    ベンチレーテッドディスク
後    ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ    前    225/45R18 後255/40R18
最小回転半径(m)    5.4


項目と数値はすべて http://www.alfaromeo-jp.com/models/giulia/super/spec#start より転載しているが、項目などは筆者が一部取捨選択している。

<静的観察>
実車を見るのは実は初めてではない。卸町イデアルさんの敷地ですでに何度かしげしげと見ている。なるほど、写真で見るよりも実車は数段かっこ良い。つまりアルファのクルマとしてはすでに合格点と言える。かっこいいという、ただそれだけで。格好良いだけでなく、BMWやメルセデス諸モデルともきちんと差別化できている。これも重要なことだと思う。全幅1,865mmなのにずいぶんすっきり見える。ソリッドホワイトの塗装色のせいだけでなく、外観の目に付くところの要所要所が絞られているからだろうか。ともあれ大きさばかりは自宅の駐車場に置いてみないと、その大きさを実感できない(笑)。
 


こちらは卸町、展示用ヴェローチェ。
なるほど、こっちはでかい…と感じる


乗り込んでみる。ぐっ…乗りにくい…。なんとMiToよりも全高が低い。試乗後に後席にも座ってみたが、かなり乗りにくく降りにくかった。こういうところはアルファである(笑)。前席に座っての最初の印象も基本的にはタイトである。それなのにカップルディスタンスはMiToとは比べ物にならないほど遠く、つまりドライバーの目の前の造形がぎゅっと凝縮されているように見えるデザインなのだ。筆者としては好ましい。インパネに誂えられたウッドパネルがサルーンムードを高めている。いくつかのスイッチ類を操作してみたが、クリック感や反力はやや強め。意外やこういう部分でも「高級感」は演出可能なのだな、と感心する。
 


例の、「ドライバーオリエンテッド」的な

 


運転席に座ると目の前には
こんな風景

 

昨今の潮流どおり、大型液晶ディスプレイがセンターコンソールに鎮座。Apple CarPlay、Google Andoroid Autoに対応しているためナビ機能はない。オーディオ、電話、車両情報確認、諸設定確認ができる。タッチセンス式ではなく、コマンドセレクトダイヤルといくつかのスイッチで操作できる。アルファよ、おまえもか…!!一方デュアルゾーンオートエアコンは物理スイッチ+ダイヤルがあるので、こちらは従来通り「ドライバーの視点を必要以上に占有することなく」操作できる。

ドライビングポジションの自由度は高い。ステアリングコラムはテレスコ/チルト調整が可能で、その調整代は大きい。電動シートの座り心地は硬めで、取り立ててホールドが良いわけではない…というか、むしろかなり鷹揚な設え。こういう印象からも「グランドツアラー的な性格なんじゃないか…」という予想がより裏付けられたような気になってくる。にしては着座高は低い。埋もれる印象ではないが。そして残念なことにRHD環境は満点ではない。相変わらずステアリングセンターは若干(多分10mmくらい?)右にズレている。オルガン式Aペダルは逆にもう少し右に寄ってくれると嬉しいのだが。そしてフットレストもない。写真でしか比較していないが、ヴェローチェ(LHD)にはフットレストがあるようだ。

冒頭に書いた「高級車ブランドとして認知されたいなら、まだ成すべき仕事はある」という部分について。筆者が気がついたところでは、シート下部やセンタートンネル上のプラスティック樹脂部分はB、Cセグメントそのもの。その部分だけ唐突に「あ!MiToとおんなじ!」なのだ。筆者は別に気にならないが、BMWやメルセデスと両天秤にかけようという(アルファにとっては)新規顧客予備軍にとって、これは興醒めであろう。
 


プラスティック樹脂の感じはペコペコ系なれど、
後席環境は優良


Dセグメントで本体価格が税込543万円だから、電子制御も最新のものが多数。同乗してくれた営業担当のHさんがひととおり操作を説明してくれるが、運転に直結なのはギアシフトセレクターくらいだろうか。そもそもシフトセレクター自体がスティック状のスイッチでしかない。いよいよ出発である。

<動的観察>
試乗コースは仙台市北部の住宅地が中心なので、路面はきれいだし曲がりにくいコーナーもない。当然バカみたいに飛ばすこともできない。エンジン音は静かだし、8段トルコンATが常に最適なギアを選び続けるので角度のきつい上り坂でもまっっっっったく痛痒を感じない。Hさんの勧めでd.n.a.システムのダイナミックモードも体験したが、Aペダルの付きが良くなる感じがする程度。加えてシフトチェンジの際にショックが大きくなるようだ(ナチュラルモードでは変速ショックはほぼゼロ)。この変速ショックはおそらく演出なのだろう。dモードだからと言って、昨今のプジョー車のようにメーターが真っ赤になるとか、そういう大げさな演出もない(わずかにインフォメーションスクリーンの中に赤いラインが入る程度)。

8段トルコンATは過不足なし(どこの商品なのだろうか)。しかしなぜアルファいち押しのTCTを搭載しなかったのだろうか。ちなみにTCTを搭載したジュリエッタ ヴェローチェの最大トルクは、ダイナミックモードで34.7kgmだから、ジュリアの2リッター直4の最大トルク33.7kgmを受け止めきれないということもないだろう。しかしこのトルコンATは、ツアラー的キャラクターのジュリア スーパーにとてもよく合っている

履いているタイヤはピレリ チントゥラートP7で、スペックを見て気付いたが、18インチであるがサイズは前後で異なる。改めて確認するとこのタイヤはランフラットタイヤ。むしろ硬い味が「スポーティネス」的味わいに貢献しているとさえ思った。高速道路走行や荒れた路面を走ってみないと最終的な判断はできないのだが、普通に走っている分には乗って気になるところはなかった。ランフラット前提のチューニングが施されているのだろう。

他に気付いたことと言えば、ターンシグナル(ウィンカー)レバーも電子スイッチでしかなく、上げても下げてもラッチされないのは違和感があった。シグナルを発する時は大きめのクリック感が応えるのだが、都度「え?レバー戻っちゃうよ」と気になる。もっともフェラーリの最近のモデルなど、件のスイッチはもはやステアリングハンドル内に内蔵されているくらいだから、レバー状のスイッチにしてくれただけでもまだ良い方なのかもしれない。

制動性能は必要にして充分。試乗車は460kmほどすでに走破しているが、ホイールはほんのりブレーキダストで汚れていた。効くブレーキの証として、むしろ歓迎すべきである。本当に小気味よく水平に停まる。FF車歴の筆者は、つんのめる制動に慣れ切っているので、この制動・停止動作は新鮮だった。ちなみにdモードとnモードでは制動制御も異なるようだが、残念ながらそれを確認できるようなコースではなかった。
 


FRと言えば素直な旋回性能だが、前述の通り試乗コースは住宅地中心。すっきり爽やかなコーナリングマナーを味わうまでには至らなかった。1ヵ所だけHさんが「ここで旋回性能を味わってください」というコーナーがあったのだが、気合いを入れ過ぎたかギクシャクした旋回になってしまい恥をかいた。電子制御によるパワーステアリング(EPS)は特に気になる動作はなく、全体的にニュートラルと感じた。が、繰り返すが住宅地メインの試乗なので、全貌はよくわからない。

<なんとなくまとめ>
同乗してくださったHさんとは初対面なのだが、なかなかに面白い人物。「ジュリアを買ったらどこを走るのが一番気持ちよいと思いますか?」と訊いてみたところ、「今までのアルファのイメージで考えると、ちょっと違うと思うんです」と。要はサーキットや峠でタイヤをギャン泣きさせるような乗り方はジュリアには似合わない、と。高速道路をマイペースで走るのが似合っているというわけだ。実はもっと面白い返答だったけど、ここに書けないので意訳していることはご承知おきいただきたい(笑)。ご本人も運転を楽しむタイプのようだから、セールスもいろいろとご苦労があるものと推測する(笑)。増してや筆者は、明らかに客じゃない(笑)。

ジュリア スーパーは大人のセダンたるべく設えられたはずだ。スポーツカー的キャラクターはヴェローチェやクアドリフォリオ(もはやヴェルデは付かない)に、より色濃く反映されていると思われる。余談だがクアドリの試乗でレースモードを試した顧客が事故を起こした例が全国で数例あるらしい。おかげでFCAJから「試乗時のレースモードは禁止!」とお達しが出ているそうな(笑)。実際筆者も久しぶりに「安全運転を心掛ける」「事故を興したら実費弁償」の誓約書を書かせられた。並行輸入でいち早くクアドリを購入した人がいつの間にかこれまた並行輸入のステルヴィオに乗り換えていて、「どどどどうして?」との問いに「ジュリアクアドリ、ありゃ速過ぎて危険!」と答えたという噂話も聞いた。おそらくジュリアはモデルレンジの中で味付けがかなり極端に異なるのだろうか。

ともあれ、より上位になればなるほどスポーティー風味は強まるようだから、スーパーの立ち位置は語弊を恐れずに言えば「ダンナ車」である。クラウンで言えばロイヤルサルーン。だからFRのすっきり爽やか系セダンをのんびり走らせたい…となると、R17ホイールを履く受注生産の「素」のジュリアこそが実はベストジュリアという可能性はある。事実、素ジュリアの受注はじわじわ増えているのだという。ヘンタイのみなさんはわかっておられる(笑)。

本国仕様ですらヴェローチェに6MT仕様がない以上、筆者が購入するならクアドリフォリオのLHD/6MTモデルを並行輸入するしかない。もちろんそんな金はない。さようならジュリア。縁無き衆生が好き勝手書いてすみませんでした。よい人と結ばれますように。

ジュリアと関係ない余談その1
Hさんに「2020年以降は、アルファロメオ全車両のメインテナンスは正規ディーラーでしか請け負わない(フィアット/アバルト店舗ではメンテナンスは受注すらできない)」という話は本当ですか?と訊いてみた。「一部のメディアでそういうことが書かれていることは知っているが、FCAJからは何も通達は来ていない」とのこと。同時に「『一部メディアで○○の報道がありますが、方針はまだ決まっておりません』などのプレスリリースを出した後に、やっぱりそのとおりになるなんてことがよくあるブランドですから」と笑っておられた。「火のないところに煙は立たない」系の話かもしれない。

ジュリアと関係ない余談その2
Hさんはアルファロメオ仙台泉のベテラン営業さん。この日、試乗の後卸町イデアルさんにも顔を出してきたのだが、「Hさんの同乗でジュリアに乗ってきましたよ」とTさんに言ったら、「Hですか(大笑)」という反応だったので、実はHさんはかなりの逸材かもしれない。オフィシャルスタッフブログのHさんのエントリーを読んでからジュリアの試乗に同乗してもらうと、より味わい深いかもしれない。



その後県民の森をちんたら走ってきた

JUGEMテーマ:ALFA ROMEO

【試乗記】ホンダ ストリーム(初代)・どうして楽しいの?
| 試乗レポート | 00:15 | comments(7) | trackbacks(0) |

既報のとおり、MiToのシフトワイヤーが切れてしまい数日入院していたわけだが、その間(株)イデアルさんの御厚意で代車を出していただいた。それはホンダ ストリーム(初代)だった。



外観の画像を撮り忘れ


ホンダ ストリームLA-RN1型(個体の車検証による)
総走行距離約10万km
初年度登録 平成13年(2001年)
形式 LA-RN1
原動機の形式 D17A 
排気量 1.66L(ガソリン)
車両総重量1,715kg(前軸重750kg 後軸重580kg 車両重量1,330kg)
全長 455cm
全幅 169cm
全高 159cm

手配してくれたサービスフロントのTさんは万事心得ておられる方で、代車にこの手の車をアサインした時は「ほんとにすみません…」と申し訳なさそうにされる(笑)。この際贅沢を言っている場合じゃないので、ありがたく受け取って走り出したのだが、早々に驚いた。先日福島県天栄村で試乗したトヨタ カローラフィールダーよりも運転していて楽しいのである。片や現役のレンタカー、片や16年オチ/10万km走行物件。条件的にはフィールダーの圧勝だと思われるのに。これは地味に衝撃だった。考え込まざるを得ない。

ストップアンドゴーを繰り返すうちになんとなくその理由がわかってきた。要は「加速がわかりやすい」のである。具体的に言うとこのストリーム、動き出しはわざとらしく派手に加速し、ドライバーが加速したことを体感する頃にはその出力は徐々に細くなっていく。グラフにすると放物線。だが徐々に細くなっていっても頭に加速感があるので、街中での運転ならまぁ許せる気がしてしまうのだ。

同じことが旋回にも当てはまる。もっとも加速で得られる感覚とは逆だ。ストリームのステアリング反応は、ミニバンらしくハンドル操作のゲインの立ち上がりは遅い。だがその直後にググッと急増する領域があって、その差分が体感できれば曲がることは文字で説明している状況から想像するほど苦痛ではない。「はいはい、ちょっと早めに切り始めればいいんでしょ」が体得できてしまえば、それなりに曲がることは曲がるからだ。実際きれいに曲がるには常にハンドルの回転量を意識しつつコントロールする必要があり、(好意的に見れば)そのことが「自分が運転してる感」を助長する。初代のステップワゴンもこういうステアリングチューニングだが、あちらはもっとゲインの立ち上がりが遅い。さすがにあそこまで遅いと慣れる慣れない以前に常時曲がらない感覚がつきまとう。ストリームでは是正したということだろう。

先日のフィールダーの加速・旋回に関する反応が、徹頭徹尾無表情に遂行されるのを体験してしまうと、ストリームの挙動を好意的に感じるのもそう不思議なことではないと思う。考えてみると、よくできたスポーツカーへの賛辞としての「リニアリティ」とは、機械的なそれではなく、あくまでも運転手の生理にきちんと沿っている、という意味のはず。そういう意味ではストリームの挙動はリニアではなく、不足分を補完するための加色と言える。しかし「まだこっちの方がマシ」なのだ。リニアリティはないがコントロールしている感覚は味わえるのだから。

いやいや寝言言うなよ、と思われる読者も多かろう。わかってますって。実際乗る順番が逆ならむしろフィールダーに好意的な印象を抱いたかもしれない。要素要素で見ていけば残念ながらストリームに勝ち目はない。フィールダーと比べるまでもなく、このストリームのエクステリアもインテリアも、良く言えばシンプルだが、要は加工工数がえらく少ない感じが強烈にする。「この頃のホンダ、本当に金が無かったんだろうなぁ」と思わずにいられない。現在の宇宙船ライクなホンダ車のインテリアと比べると、別会社の別レンジの製品かと思っても無理はない。
 


でも最近の線と段差の多いデザインよりも
こっちの方が好きだけどなぁ





なんか、こういうの、なつかしいですね


そうではあるけれど、ストリームは挙動のその先が予想しやすい。加速にしても旋回にしても、運転手はかなり自発的にその操作に関わらざるを得ない。コントロールしている感覚はそれなりにあるのだ。片やフィールダーはすべての挙動が平滑に、無表情に実行されるのでその限界が、いつ破綻するのかが予想しにくい。深さ2mと聞かされているが底が見えないプールのようなもので、「あと2〜30センチ潜ればつま先が底に着くはずだけど…ほんとかなー」という疑念が常につきまとう。ストリームが「ドライバーの生理にリニア」とは口が裂けても書けないが、少なくともドライバーの生理を巧みに利用してその動的性能を演出してはいる。「機械動作的なリニア」に徹するフィールダーとはそこが違う。以前書いた「予想の一割増し」などという嬉しいものではないが、多少感覚とのズレがあってもストリームの挙動は先が読める分、怖くない。

もちろんドライバーズカーなどではない。代車としてほんの3-40km程度だが運転してわかったのは、ストリームは60km/hで走るようにできている。いや、本当なのだ。なにも考えずに動いていると、いつの間にか60kmで巡航しているのだ。それより速度が低いと遅く感じ、それより速度を出そうと思うととたんにエンジン音がけたたましくなって加速する気が失せる。ハンドルの直進性も60km/hが一番しっくりくるし、意外やその際のステアリング反力はMiToのd.モード並みで手応えもある。しかしやはり日本の道路交通法規の内側だけで破綻しないようにまとめた「だけ」のものに過ぎず、味わいや情緒とは無縁である

ストリームを運転しても、我々がホンダに対してなんとなく思い浮かべるスポーティーなイメージにはまったくつながらない。自動車としてまとまりが良いのは圧倒的にフィールダーである。しかし短時間・短距離だが走ってみて楽しかったのは16年オチ/10万km走ったストリームだった。ドライバーの生理を巧みに利用して運転感覚を演出する。ホンダにできて、一時は世界で一番自動車を売ったトヨタにそれができないのは不思議で仕方がない。

500を3台乗り比べ!「500 TwinAir そんだけ弄ったらどうなるの?」OFF会
| 試乗レポート | 00:22 | comments(29) | trackbacks(0) |


本ブログではこれまでに何度もフィアット 500の試乗記を上梓してきた。2007年の発売当初からごく最近のものまで、それなりの数になっているはずだが、筆者が本当の意味でこの"ヌオーバヌオーバ"500の真価を理解したのは、とどのつまりデュアロジック(セミオートマティックトランスミッション。アルファロメオで言うところのセレスピード)を理解できた時からと言える。理屈を踏まえて自分の運転をアジャストすれば、デュアロジックは運転好きのイタリア人が作ったなかなかの機構であることがよく理解できる。そこを理解できない頃の筆者の試乗記には歯に物が挟まったような記述が散見される。申し訳ないがそれはもう忘れてほしい。今や筆者は500+デュアロジックを所有してもいいと思うほど宗旨替えをしてしまった。ということで、改めて読者諸兄に本ブログから500に関する試乗記をご紹介するとしたら、それは以下のエントリーであろう。

【試乗記その1】FIAT 500こそファミリーカーの決定版である。以上!!
【試乗記その2】FIAT 500 1.2POP 足るを知る
【試乗記】フィアット 500 TwinAir・「必要充分」の一割増し

500のチューンナップ版たるアバルトブランドのモデルも大絶賛である。まぁこれらはMTモデルなのだが。
試乗記・ABARTH 500、ぷりっぷりのもぎたてフルーツ
試乗記・ABARTH 595Competizione。「過剰」ではなく高次元で高バランス

これら試乗記を丹念に読み返していただく必要は今はないが、要約すると「フィアット 500は良いクルマである」というシンプルな一言となる。下駄グルマとして実際に自分が所有できるとしたら、笑顔笑顔で運転すると確信している。

しかし、だ。500と言ってもずいぶんとバリエーションがある。特に筆者が激賞するTwinAirエンジン搭載のモデルやアバルトの諸モデルまで考慮に入れると、同じものをベースにしているが別物と言っていい。実際乗り比べたらどのように印象が違うのか、ヘンタイ諸氏ならかなり興味を惹かれるのではないだろうか。

ひょんなことからその乗り比べが実現した。山形在住のエンスージアストしげさんはマツダ アテンザに惚れ抜いて購入し、奥様のためのもう1台としてフィアット 500TwinAirを増車。もうこの状態でかなり羨ましい状態であるが、手を入れずにいられなかったらしい(笑)。順当にあれこれ手を加え始めてしまった。冒頭に紹介した「【試乗記】フィアット 500 TwinAir・「必要充分」の一割増し」は、エアクリーナーを導入した直後の試乗記で、日本導入直後に筆者がディーラーで試乗した時よりも好印象は3割増だった。しかししげさんの改造欲はエアクリーナーに留まらず、マフラーレースチップインチアップしたホイールとタイヤダウンサス…。
 






箍(たが)が外れたようなしげさんの改造日記は、SNSでイヤでも目に付く。それらの改造を「ふーん、そうですか、ま、ほどほどに」などとやり過ごせるほど筆者は枯れていない。折々に「今度運転させてくださいよ」としげさんにお願いしていたところ、とうとう叶うことになり、ちょっとした思いつきから500に縁のある方々もお誘いしてみた。
 


ユキノッティも参加


alfa_manbowさん。弟さん所有の「素の」TwinAirでご参加。Tazzaさん。MiToから乗り換えたアバルト 500でご参加。あおさん。500とは縁は薄いが(笑)、本ブログのOFF会発起人として強制参加。つまり

素の500TwinAir
あれこれ手を入れた500TwinAir
メーカーコンプリートカー的なアバルト 500

を一気に乗り比べである。これは地味ながらすごい企画ではないか。自動車メディアでもせいぜいTipoがやるかやらないかの企画(笑)と言える。500は中古の弾数も多いため、今まさに500を購入しようと貯金通帳や財布と相談している方も多かろう。ヘンタイ知識欲を満足させるとともに、真剣に購入を検討している方々への貴重な情報となるよう書いてみたい。試乗会場は当ブログ5月のオフ会の定番となりつつある山形県山形市、西蔵王公園。アップダウンを含めたワインディングロードを擁する絶好のロケーションで、同車種のレンジテストである。今回は通常のOFF会ではなく勉強会、すなわち「クルマで行きますワークショップ」とでも言おうか。題して「500 TwinAir そんだけ弄ったらどうなるの?」(原案しげさん)。はじまりはじまり〜。←イントロが長い



さて各車の違いをあれこれ書き連ねる前に、今回の乗り比べで筆者が重視したポイントを書いておく。

1.主に加速域での動力性能
2.コーナリングの限界値
3.「走る・曲がる・止まる」の要素バランス


どれも「走って楽しいかどうか」に大いに関わる部分である。エクステリア・インテリアの差異やそもそもの出来については今回は考えない。そこはもういいでしょう(笑)。そもそも見た目だけで買っても損しないクルマなのだから。ともあれ早速乗り比べの印象を書いていこう。

素の500TwinAir POP
まずは原点をきちんと確認。alfa-manbowさん弟君の個体をご提供いただいた。冒頭にこんなことを書いて恐縮だが、乗り終えた後は「これで全然いいじゃないか」と思う。踏めば応えてくれるエンジンではあるが、西蔵王公園の上り坂では確かに全開にせざるを得ない。だがトップエンドに至るまでの加速やトルクの出方は決して頼りないものではなく、むしろ「1リットル無いのにこんなに力強いの??」と毎回ニンマリしてしまう。当日は「使い切ってる感」という造語が生まれ、これは500TwinAirに対するかなり的を射ている賛辞だと思う。余談だが素の1.2POPもこの「使い切ってる感」は強い。が、TwinAirに比べると特に加速域のトルクの盛り上がりにやや線が細い印象があり、運転の楽しさにおいてはTwinAirの方が上と断じてかまわないだろう。

alfa_manbowさんは、コーナリング時の挙動について「けっこうロールする。そこにビビって踏みきれない。しかし今日のテストで、ロールした先できちっと踏ん張ってくれることが納得できたら踏めるようになった。リミッターは自分の心にかかっていた」という意味のことをおっしゃっていた。特に下りのコーナリングで実感できるそのロール具合を、筆者はアトラクションのように楽しめた。でも「この辺でやめておこう」というリミッターにはなりますね、確かに(笑)。

結局「平地をひらひら走ってる分にはTwinAir素モデルで充分」というのが現場の一致した感想であった。

メーカーコンプリートカー的なアバルト 500
改造したしげさんのTwinAirに直接乗り換えることも考えたのだが、ちょっと待てよと。各要素を後から追加していった改造後のTwinAirの前に、メーカーコンプリートモデルとも言えるアバルト 500の実力を先に体感しておく方が、しげさんの改造結果をより中立的な視点で感じられるのではないか?と考えた。そこでTazzaさんのアバルト 500のキーを借り受ける。現行アバルトのラインナップに500の名前ではもはや存在しない。だが今回のこのTazzaさんの個体は「アバルト 500」の素の状態。エッセエッセキットを搭載しているので「素」は大げさかもしれないが、いずれにしてもアバルトの名の下に施されたフィアット純正チューニングが、ピュアな状態で維持されているわけだ。その意味でも大変貴重な個体であり、今回唯一のMTモデルでもある。

実際に走り出してみると、素のTwinAirに対してふたつの余裕を感じることができる。ひとつはエンジン。ま、そりゃそうだ。てか比較すんなよ、という感じだ。だって1.4リッター直4DOHC16バルブターボにエッセエッセキットで160psに対してTwinAirはインタークーラーターボで85ps。比べてすみません。比べちゃいけない理由は後述する。とにかくアバルト 500、滑らかであり凶暴でもあり。あれよあれよと回転数が上がる。もうひとつは足。サスのストロークの余裕綽々っぷりはどうだ。単純な印象としてはバネレートが高い感じで、ストロークは(通常の500比)もちろん短いのだろうが、滅多なことでは底付きなんかしませんよ、という声が聞こえてきそうだ。これらが合算されることで、アバルト 500(エッセエッセキット付き)は速いべらぼうに速い。500ベースの着座位置はスポーツカーと言うには高目であり、その結果「バカッ速感」は緩和されているはずだが、これで目線があと50mm低かったら、感じる「速さ」はもっと増すだろう。でも恐怖は感じない。ひたすらシェアなハンドリングとペダルレスポンスがどの領域でも感じられ、「うーむ」と感心しつつもニヤケてしまう。MTのシフトゲートがやや曖昧なのが玉に瑕だが、ま、そんなことは些細なことですよ。

あれこれ手を入れた500TwinAir
さてこの日の本命である。素のTwinAirを「平地をひらひら走ってる分には充分」とまとめてはみたが、それは裏返せば、平地以外をひらひらじゃなく走るにはやや力不足な部分があるということでもある。しげさん改造のこの個体の魅力は「加速」と「足の踏ん張り」である。吸排気経路を整え、レースチップを組み込むことで低回転域のトルクが増したのだろう。明らかにAペダルのレスポンスが向上している。それも「うわ!下品!」と思う手前で踏みとどまる絶妙さ(レースチップのチューニングはこの試乗直前に"最強モード"に変更されたが、下品ではない)。またダウンサスと17インチにアップされた幅広タイヤ(ATR Sportだぜ!)のおかげで、ロール量は減少し、足が横に逃げる感覚がずいぶん緩和された。だ・か・ら!西蔵王公園のワインディングのコーナーで「おっと」とAペダルを戻すこともない。改造後のしげさんは「コーナーへの進入速度が20km/hくらい上がった」とおっしゃるが、これは筆者も体感した。そしてコーナー脱出のための再加速を加えるポイントも、より手前から踏んでいけるようになる。アバルト 500とはまた違う意味で、これも「速い」。あっちが「余裕」ならこっちは「発奮」である。どっちを好ましく思うかはドライバーの人生観による。

しげさんの個体、重箱の隅をつつけば、あとホンの少しステアリングをクイックにしてもらえると、より「速く」感じられると思う。また「こうなるとシートが物足りなくて…」ともおっしゃっていた。ステアリングもシートのホールド性も、加速とコーナリング性能の体感に密接に関わるチューニング領域なのだろう。そして残念ながら、5月に筆者が指摘した吸気の瑕疵はまだ解決されなかった。エアクリーナーの交換取り付け精度が高くなかったのか、「過呼吸」的症状が見られるのだ。それもちょうど3,000〜4,000rpm付近の「もっともおいしい」回転域の話。過吸気による不完全燃焼らしいが、こいつが本当に惜しい。これにはしげさんも手を焼いているようで、どうしたもんか的な会話が繰り広げられた。



ここですかねぇ


そういう小さな不完全さはあるものの、低回転域のトルクアップもコーナリングでの足の踏ん張りも、どちらも素のTwinAirに長く乗っていると「あとちょっと、こうだったらいいのにな」と感じずにはいられない部分であることは、オーナーではない自分にも容易に想像できる。そこをクリアしたのがしげさんの改造TwinAirと言える。しかもしげさんはちょくちょくこの試乗コースを走っている。このコースで感じる不満をクリアしたのだから、もはやこの個体は「西蔵王公園スペシャル」と言ってもいいのではないか(笑)。



喧々諤々ですよ


まとめ
貴重な体験だった。こうやって3台を乗り比べた後に500というクルマの楽しさの根源を考えていくと、TwinAirというエンジンの偉大さに突き当たる。TwinAirには「最小のものが最大の効果を上げる」瞬間を実体験できる快感がある。その快感が、素のままでも改造しても大きく変わることが無いのは正直驚いた。今だから書くが、この実験の結果は「素」<「改造」<「アバルト」だと想像していた。だが前述の通りアバルト改の直4ユニットマルチエア(※追記あり)とTwinAirはそもそも立脚点が違う。だから直接の比較にはならなかった。そして同じTwinAirでも「素」には「素」の、「改造」には「改造」の楽しみが確かにあった。しげさんの個体は「最小のものが最大の効果を…」の「最大値」を引き上げたもの。しかし要素改造なのでややアンバランスな部分もある。もっともこの個体はしげさんの、言わば「セミオーダースーツ」のようなものだから、そのアンバランスなところも含めて愛着を生む要素になるだろう。

500というクルマは、一見ファンションアイテムっぽいナリをしているが、「楽しく走る」ことにかけてはずば抜けて素晴らしい。その素晴らしさは全方位的な性能の良さではない。一部の人にデュアロジックは今でも鬼門だろうし、TwinAirのエンジン音と振動は「トラックみたい」と言われても仕方ない。しかしクルマへの愛着、性能の物差しは決して全方位的なものでも平均値的なものでもない。何を得て何を捨てるのか。作り手のその判断とオーナーの人生観が共鳴することがもっとも重要だと思う。500は得るものと失うものの区別がはっきりしているが故に、共鳴の幅は狭いかもしれない(そもそも日本に於けるイタリア車という段階で、すでに幅が狭められている)。しかしオーナーと共鳴すればその福音はとても大きなものになる。それを「アバタもエクボ」と言うことは簡単だが、どこにも引っ掛かりの無い車に無表情で乗るよりも、「あれもこれもしょぼいけど、とにかく乗ると楽しい!」と日々笑顔で乗るクルマの方が100万倍良いではないか。そんな500TwinAirの新車が車両本体230万円で買えることがそもそも素晴らしい(4気筒のPOPなら200万円を切っている)。普通の人が普通に買える価格帯にこんな楽しいクルマがあることを、多くの人に知って欲しい。

改めて今回お集まりいただき、愛車をご提供いただいたみなさまに感謝いたします。本文内、間違っている情報や筆者が突っ込めてないポイントなどあれば、ぜひご指摘いただきたい。めっちゃ楽しかった!



しげさんの奥さんと下の娘さんも合流して
恒例の竜山でそば



6〜9月の期間限定商品
「だしそば」!!
うめえ

 
※余談ですが、このワークショップの帰り道にMiToのシフトワイヤーが切れました。ちゃんちゃん。
※追記
アバルト 500のエンジンはマルチエアじゃありません。すみません。
【試乗記】ルノー メガーヌR.S.「えぇ、もう、これで」
| 試乗レポート | 10:58 | comments(10) | trackbacks(0) |

筆者が愛読していた自動車雑誌AUTOCAR JAPAN(日本版は現在休刊しwebのみ)の英国本国編集部は、英国フォードとルノーびいきだった。あるドイツ製スポーツカーとルノースポール(本当はずばりなメーカーと車種が書いてある)の対決評価記事で「ドイツ製スポーツカーがエクセルシートと定規から作られている印象なのに対し、ルノースポールはドライビングシューズとお尻の感覚をもとに作られている印象がある」という意味の一文があった。筆者はこういうのにシビレるタイプである。

筆者は「スポーツカー」とは「観念」の世界だと思っている。作り手の「こうあるべきだ」が存分に反映されている必要があって、その考えに共鳴できるかどうか。観念と観念のすり合わせで納得できれば買う(多額のお金が必要だが)。その意味ではルノーでもトヨタでも共鳴さえできれば良いわけだが、「ドライビングシューズとお尻の感覚をもとにチューニング」する観念には積極的に共鳴したい。特にMiTo乗りである筆者にとって、ワンランク上のセグメントに君臨するメガーヌR.S.は現行モデルがデビューした時から垂涎の的であった。

2017年8月に開催された北日本MiTo会 MiTo Meeting 2017に参加してくださった関東在住のしまのすけさん。LHDのMiTo QVからルノー メガーヌR.S.への乗り換えを実現されていた。「うわー!いーなー!!」とよだれを垂らしていたら「乗ってみていいですよ!」と勧めてくださった。これまでイデアルさんの中古車売り場に並んでいるメガーヌR.S.のコクピットには何度も座ってきたが、動かすのは初めてのことである。厚かましくも試乗させていただいた。メガーヌR.S.を今からでも買おうと思っている人は、以下読まないでいただきたい。筆者の購入時にライバルが増えて困るいやー、メガーヌ最低!こんなの乗る人の気が知れない。最悪。以上、メガーヌR.S.を買おうと思っている方、さ・よ・お・な・ら。ぶっ!
 


これが!しまのすけさんのメガーヌR.S.だっ!


以下メガーヌR.S.に興味の無い人に向けて書く。着座してドライビングポジションは調整せず、しまのすけさんのポジションのままで走りだした。やっぱり人様のポジションをあれこれ弄るのは(ちょい乗りだし)気が引ける。しかし一応着座環境についてレポートしておく。まずイスとハンドルの関係は素晴らしい。ハンドルに刻まれた黄色いセンタートリムは伊達じゃない。メジャーなどを使っての検分ではないが、少なくともこの点は問題ない。ABペダルレイアウトは、やや左に寄っていた。敢えて理想のAペダル位置を探ってみたが、タイヤハウスに盛大に邪魔されている感じもない。もうちょっと右に寄せようと思えばできたと思われるが、深遠なチューニングの結果なのか機構的制約の産物なのかは判明せず。少なくとも気に障るほどのことはない。

フロント窓外を見ると、ボンネット前端は大きく落ち込んでいてまったく目視できず。このクルマでコンビニの駐車場に前から停める人はいないと思うので、これも大きな瑕疵ではない。本当はボンネット前端が把握できなくても不安に思わない理由は別にある。後述する。目線を移すとメータークラスターやダッシュボードの位置が予想よりも高い位置に見え、ボンネット前端の件と併せて、身長170cmの筆者でもやや囲まれ感のある環境ではある。巷で言われる後方視界は、なるほど狭い(笑)。だが少し走って引き返す時、駐車場に入ってわざと白線内に後進して停めてみたのだが、意外や苦労しなかった。ドライバーの目線から、クルマの向き(どれくらいナナメになっているか、真っすぐか)が把握しやすい。フロントドアガラスのラインの切り方がうまいのかもしれない。同じフランス車でも家人のシトロエン DS3はドアガラスの下端が前から後ろに向かって上がるように傾斜しているせいか、ドアを規準にすると真っすぐ後進しづらいのだ。ドライバーの感覚って繊細かつ微妙なのね…。おまけにメガーヌR.S.、どういうわけかタイヤの位置がとても把握しやすいのである。これは数メートル走らせただけでひしひしとわかる。ボンネット前端が把握できなくても不安を感じない理由はこれだ。駐車スペースに後進で停める1回の動作でこれらのことを体感できることは稀である。つまり着座環境全体ではネガティブな気持ちは一片も生まれない。

続いて走り出してどうだったのか。6MTとエンジン性能のバランスは気持ちいい。シフトノブの動きも格段にクイックではないものの、充分に「飛ばす気になる」動作。クラッチミートのタイミングもヘンなクセはなく、Cペダルのチューニングは手前側でミートするもので、MiToから乗り換えても違和感が無い。MiToと比べる視点でもうひとつ加えればシフトノブがやや短く、それだけで御の字だ。残念ながら今回のちょい乗り試乗ではエンジン(2リットル直列4気筒DOHC16バルブターボ)の真価を体感することはできなかったが、あっという間に免許に優しくない領域に突入してしまう、とだけ書いておく。

驚いたのはハンドルの重さ。電子制御パワーステアリングの抵抗感。もちろん驚くのは走り出しの一瞬のことで、速度が乗れば落ち着く。むしろコクのある動きである。しまのすけさんの個体は18インチホイールに確かミシュランパイロットを組み合わせていたが、メガーヌR.S.の純正オプションには19インチホイールもあるそうで、そんなの履かせたら一体どうなるんだ?と心配になるほどの抵抗感である。筆者が知る限りではあおさんのプジョー 206SW S16の油圧モノよりも、ヘタしたらMiToのdモードよりも重い。その分当然のことながら直進性は素晴らしく、残念ながらそれを堪能できるだけの直進路は無かったのだが、充分に想像できた。このハンドルの重さから逆説的に考えると、MiToを含めた昨今の欧州車の電制パワステが軽過ぎるのかもしれない。タイヤの位置の把握しやすさと合わせて、このハンドルの抵抗感はもしかしたらメガーヌR.S.の最大の美点かもしれない。試乗コースは羽鳥湖湖畔のザラザラとした平坦なクネクネ道。MiToのお手軽電制パワステに慣れ切った筆者では、ハンドルを切るのに「オラァ!」的な気合いがいるのだった。

しかし前述の車両情報やタイヤ位置の把握しやすさが、こういう道でものすごく生きてくる。横幅は1800mmを超えている(1,850mm)にも関わらず、初めての運転で車線のセンターを(コーナリングの最中でも)ビシッと維持できる。コクのあるハンドル操作とAペダルの微妙なコントロールと併せて、ラインはどうにでもコントロールできる感覚がある。

ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ。

なんですか?このゴキゲン具合は。

めっっっっっっちゃ楽しいんですけど!

かつてイデアルのK店長がメガーヌR.S.を評して「乗れば乗るほどボディを小さく感じる」とおっしゃっていたが、なるほどなるほど。さすがにこの試乗だけでボディを小さく感じることはできなかったが、外観を裏切る車両の把握のしやすさはビンビンにわかる。その車両感覚の感知を助けているのがボディの高剛性とセミバケットシートだ。メガーヌR.S.の剛性感は、右ドアの合わせが微妙な感じになるほどグズグズに草臥れてきた我がMiToとは比ぶべくもない異次元の硬さだ。かつてhoshinashiさんとalfa_manbowさんの年代の異なるジュリエッタで経験した剛性感ともまた違う。メガーヌR.S.と比較すれば両ジュリエッタはまだ「しなっている」。腰から下(ドアから下)はみしりとも言わないガッチリ具合。ボディだけではなく足周りの取り付けからビシッと微動だにしない感覚が味わえる。半面ドアから上、ドライバーの肩から上に関しては、変に突っ張る感じはなく、爽やかに入力が逃げていく。ワインディングを全力で駆け登ったり駆け降りたり、あるいはサーキットに持ち込んで限界走行をすれば、また印象は変わるのかもしれない。繰り返すがアップダウンのないややざらついたクネクネ道での試乗だから、まったく涼しい顔である。こういうのをキャパが広いというのだろうか。

そしてそれらの感触を余さず伝えてくるのがセミバケットシート。まさにお尻で得る情報が溢れんばかりで、もっとペースを上げても左右のホールドは微塵も揺るがないだろう。沢村慎太郎のQ&A本に「速く走りたいならホールドの良いシートに替えるのが一番の近道」と書かれていたが、これは筆者も納得の回答である。自分の身体感覚とクルマがしっかりシンクロしている実感がある。レカロに換装したalfa_manbowさんの愛車2台を試乗させていただいた時もそれを実感したが、メガーヌR.S.でさらに上書きすることになった。

OFF会会場に戻り、あおさんに感想を訊かれた。

「どうでした?」
「えぇ、もう、これで」

自分のドライビングスキルを、今よりも高いところへ押し上げたいと考えてMiToから乗り換えるなら、こういうクルマがいい。しまのすけさん、ありがとうございました。

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■プン太郎■
筆者の愛車ABARTH PUNTO EVOのこと。
ブログ本文に「プントエヴォ」と
フルネームで書くと煩わしいので命名。

■R、K■
R=国道(Route **)
K=県道(Kendo **)
のこと

■S店長■
筆者のMiTo購入時の担当営業さん。
現在VOLVO仙台泉店の店長。
筆者のクルマ人生を変えた人。
一言で言えばカーガイ。

■K店長■
クライスラー・ジープ・ダッジ仙台の店長。
TCT版リリースを機に滑り込みで
MiTo1.4TSportを購入したカーガイ。
カーオーディオ地獄サバイバー。

■顧問■
筆者の友人太郎君のこと。
エンスージアストにしてドラマー。
いろんな意味で筆者の指南役にして
このブログの技術顧問(と勝手に思っている)

■朝練&夜活■
早朝に走りに行くのが朝練。
夜に走りに行くのが夜活(やかつ)。
夜の走行活動の略。
どちらもひとりであてもなく走る。
つまりひたすらクルマとの対話を楽しむ。

■EDO■
Eat and Drink Organizationの略。
親友2名と行うツーリング企画の名。
「移動に有料道路は使わない」
「同乗者無しでひとり1台」
「うまいものを食べ、飲む」が掟。
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